○鑑定コラム


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ

553)鳥羽の相差の宿は遠かった

 2009年6月の下旬、三重県の鳥羽市に行って来た。

 しめ縄で結ばれた夫婦岩を、小学校6年生の修学旅行以来、50数年ぶりで見た。

 50数年前の記憶をたどっても、しめ縄で結ばれた夫婦岩を覚えているが、その他の風景は全く覚えていない。

 初めて海というものを見、砂浜に打ち寄せる波の海水を手ですくい、口にした。
 海の水はしょっぱいということは、本で読んで知っていたが、実際に口にしたことは無く、実体験として海の水はしょっぱいということを知った遠い少年の自分の姿を想い出す。

 鳥羽へ行ったのは、昨年(2008年)7月熱海で開かれたと同じ50年前に卒業した中学3年D組のクラスの同窓会が、今度は鳥羽で開かれたので行ったのである。

 日曜日の夜一泊し、月曜日に帰るという同窓会の日程であった。

 私は、当初は参加に躊躇した。
 出欠のハガキを出さず悩んでいた。

 というのは、月曜日の午後は、桐蔭横浜大学法学部で不動産鑑定評価の講義を持っており、その講義を行わなければならない。

 講義を同窓会出席のために休講にする訳には行かない。

 日曜日夜の同窓会の宴たけなわの途中で抜け出し、東京に帰ろうかとも思った。

 鳥羽から名古屋、名古屋から新幹線で東京、東京から自宅へと、最終電車を調べてみた。
 その場合、午後8時に鳥羽駅を出なければならない。

 しかし果たして友たちが、私の途中帰宅を許してくれるかどうか。

 もう一つ、鳥羽から伊勢湾対岸にあるセントレア空港へのホーバークラフト定期船を利用して、セントレア空港から羽田空港へのフライトルートを検討したが、セントレア空港発羽田空港行きの夜の遅い便は無いとわかり、これも駄目と分かった。

 それらを考えると同窓会出席を止めようかと思いつつ、出欠のハガキの幹事への投函を、〆切りギリギリまで見合わせていた。

 すると、名古屋の同窓会の幹事より、強烈な言葉の電話が入った。

 「タクジ!
 同窓会の出欠のハガキが未だ来ないが、欠席するつもりなのか・・・。」

 「・・・・・・今、迷っている処だ。」
と私は答えた。

 同窓会の名古屋の幹事は、電話の向こうで、名古屋弁でまくし立てた。

 「迷っている?
 何をたわけたことを言う。
 去年わしたちは、お前に会うために熱海までわざわざ行ったのだぞ!
 それが、お前は、名古屋の方にこれんとは何事よ。
 これんかったら承知せんで。
 同窓会に絶対出ろ! 」
と。

 中学時代の、イガグリ頭のガキの頃に戻ったのではなかろうかと錯覚するごとくのやりとりである。半端脅しである。しかし腹は立たない。憎めない。

 東京にいる同窓生も、
 「タクジ、出ようよ。
 人生は、あとそう長くないよ。
 会える時に会っておこうよ。後悔が残るよ。」
と誘いがかかる。

 宿泊先の旅館への人数の最終報告日も迫ってきた。

 最後の策として、月曜日の朝早く相差(おうさつ)の旅館をたち、鳥羽駅より近鉄特急に乗って名古屋駅に行く。名古屋駅で新幹線の「のぞみ」に乗り、新横浜駅で下車する。

 新横浜で横浜市営地下鉄に乗り、あざみ野駅に行く。
 あざみ野駅で東急の田園都市線に乗り換え「青葉台」で降りる。

 そしてバスで桐蔭横浜大学に行き、午後の講義に間に合う方策を考え、中学同窓会に出ると、〆切りギリギリに幹事に報告した。

 二日酔いの状態で大学の講義をする訳にはゆかないことから、同窓会宴席のアルコールはセーブしておこうと決めた。

 日曜日当日は、旅館差し回しのマイクロバスに乗って旅館に向かった。

 鳥羽市中心より、野越え、山越え随分と田舎へと向かう。
 挙げ句の果て、途中でマイクロバスを、より小さいマイクロマイクロバスに乗り換えることになった。
 道が狭いから大型マイクロバスは入れないからと云う。

 一体どんな山奥に連れて行かれるものかと、いささか心配になってきた。

 というのは、私は、翌朝、旅館からタクシーで鳥羽駅に向かう予定である。
 この調子だと、タクシー代はかなりの金額になりそうだと思ってしまった。

 鳥羽の相差の旅館に着いた。

 相差(おうさつ)は、鳥羽市市街地から随分と遠い所であった。

 的矢湾に臨む相差は、魚の美味しい漁師の町で、海女の多く居る地区だった。

 翌日の月曜日の朝早く、相差の旅館をタクシーで鳥羽駅に向かった。
 旅館の人は、朝食を食べない私のために、おにぎり弁当を作って下さった。

 同窓生は寝ていると思っていたが、皆起きてきて、私を見送ってくれた。
 私はこっそりと帰るつもりであったが。

 女性の同窓生は殆どの人が出て来た。それも洋服に着替えちゃんと化粧して、旅館のロビーまできた。

 迎えのタクシーを待つ間に、浴衣姿の男の同窓生の一人が、
 「俺も今度途中で帰ろ。
 こんなに女性の人が見送ってくれるなら。」
と冗談を云ったのには、苦笑いをせざるを得なかった。

 私のわがままを許し、朝早く起きて、わざわざ私を見送ってくれた同窓生達に感謝いたします。

 大学の講義は間に合った。

 当日の講義内容は、「不動産の種類」について話した。

 不動産の種類とは?
 不動産の種別とは?
 不動産の類型とは?

 不動産鑑定評価が、難しいと感じる内容が、この「不動産の種類」のあたりからである。

 不動産の種別と、類型がゴチャ混ぜになって、分からなくなってくるのである。

 宅地の類型は、更地、建付地、借地権、底地、区分地上権に分かれる。

 区分地上権の説明については、地先権のほか、つい最近にJR東海が、5.1兆円の工事費をかけて、東京〜名古屋を40分で結ぶリニア中央新幹線の構想をぶち挙げた話に関連する話をした。

 リニア中央新幹線は、恐らく大深度法(「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」 平成十二年五月二十六日法律第八十七号)を使用して、深度40m以深を走ることになり、対価を大部分支払わない区分地上権になるのでは無かろうかと。

 講義を終えて、自宅に帰ったのは午後7時頃であった。
 鳥羽の相差は遠かった。


  鑑定コラム447)「50年前へのタイムスリップ」

  鑑定コラム554)「真珠養殖産業の壊滅」

  鑑定コラム969)「蒲郡での同窓会」


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ