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607)ブランド名「サーパス」のマンション業者が倒産した

 このおよそ15年間であろうか。平成バブルの崩壊で、多くのマンション業者が倒産した後に、急速に業績を伸ばし、一時は業界随一のマンション分譲戸数を誇った穴吹工務店が、経営に行き詰まった。
 ブランド名「サーパス」というマンションを売っていたマンション業者である。
 穴吹工務店は、今迄に日本全国で75,000戸という大変な数のマンションを分譲販売してきた。

 その穴吹工務店は、2009年11月24日、東京地裁に会社更生法の適用申請を行った。
 同日、東京地裁は申立申請を受理し、財産等の保全管理命令を出した。

 会社更生法適用申請の理由大意は、同社のホームページによると、下記のごとくである。

 @ 平成19年夏以降の米国サブプライムローン問題による金融混乱とそれによる景気後退。
 A 平成20年9月のリーマンショックによる金融収縮とより一層の景気後退。

の2つによって、分譲マンション事業の利益率は大きく低下した。

 組織・人員の適正化を図ったが、資金繰りが急速に悪化した。
 自力による事業継続は困難となった。
 そのため会社事業再建するため、会社更生法の適用申請を行ったと大意述べる。

 負債総額は、

   株式会社穴吹工務店           1403億円
   株式会社エイシィカンパニーグルーブ    65億円
   株式会社ハートレイ            40億円
 
という。

 最近の業績(連結)は、下記の通りである。単位 100万円。

   決算期            売上高    営業利益  当期純収益
  平成19年3月期   180,894         8,569         2,605
  平成20年3月期   178,689         4,712       ▲2,476
  平成21年3月期   176,081       ▲3,656      ▲13,834

 不動産業及び不動産価格は、平成19年夏をピークにして、その後売上高減、土地価格の下落に入った。

 穴吹工務店の会社更生法適用申請理由にも、その事実を認めた発言をしている。

 今では、不動産業及び不動産価格は、平成19年夏をピークにして、その後売上高減、土地価格の下落に入ったことは、殆どの人が認めているが、その当時に土地価格は上がりすぎであるとか、ピークであり危険ゾーンであると、私はこの鑑定コラムで何回も発言し、忠告したが、そのことに対して聞く耳を持つ人は極めて少なかった。

 地価公示価格の評価を行う不動産鑑定士にも地価は下落しているから、その認識を持つようにと云ったが、それを聞いた不動産鑑定士は、

 「地価が下落しているということを言っている不動産鑑定士は、地価公示の分科会の中で誰も言っている人はいません。
 そんなことを言う人は、田原さん一人です。
 初耳です。
 本当に土地価格は下落しているのですか?。
 一応分科会で云ってみますが・・・・。」

という。

 中には、

 「地価は下がっていない。
 まだまだ上がる。
 土地価格が下がって居ると云う田原不動産鑑定士は、とんでもない不動産鑑定士だ。」

と批判し反論してくる不動産鑑定士もいた。

 但し、不動産仲介業を兼務する信託銀行や大手不動産会社に勤務する一部の不動産鑑定士は、私の主張に理解を示してくれた。

 不動産が、今迄は売れた価格にもかかわらず、価格を下げても売れなくなっている状態を肌で感じていた為である。

 多くの人が地価は上がっている。まだまだ上がると信じ、言っている時に、

 「土地価格は天井だ。
値下がりしている。」

と発言することは、大変勇気のいることである。
 そのプレッシャーというものは、それを現実に云い、その発言に対する反発・批判を経験した人で無いと分からない。

 その後倒産した不動産会社、リート会社、不動産ファンド会社の経営者が、このマイナーな鑑定コラムを読んで、先行きの経営判断の材料の一つにしてくれておれば、倒産という地獄を味わうことは避けられたのにと、甚だ我田引水であるが残念である。穴吹工務店もしかりである。

 不動産会社、マンション会社は、自分の自己資金で事業をやっていない。
 殆どが他人資本、即ち銀行からの借入金である。
 穴吹工務店が経営に行き詰まったのも、資金繰りに困った上での会社更生法の適用である。
 穴吹工務店に融資していた銀行は、地方銀行の融資が多いと聞く。これら融資額は確実に焦げ付くことになる。
 焦げ付きの額次第では、頭取の首が飛ぶ事態もあり得るかもしれない。平成19年夏から土地価格は暴落したのである。何故、もっと早く手を打たなかったのかと悔やまれる。
 50億円焦げ付いたとなった場合、その代償はあまりにも大きい。


 鑑定コラム291)「バブル時に迫る銀行の不動産業への新規貸出額」

 鑑定コラム316)「不動産ファンドへの貸出規制」

 鑑定コラム388)「日本は不動産業国家ではない」

 鑑定コラム372)「「都心地価下落始まる」AERA 2007年9月3日号を」

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