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国内銀行の不動産業への新規貸出額が依然として高い水準が続く。
日本銀行発表による国内銀行の設備投資の新規貸出額を見ると、全産業に対する新規貸出額のうち不動産業への貸出額が甚だ高い割合を占める。
その金額を下記に記す。単位は億円である。
全産業 不動産業
2006年1〜3月 133,308 29,378
2006年4〜6月 91,838 16,132
2006年7〜9月 101,943 22,450
2006年10〜12月 91,954 19,830
計 419,043 87,790
2007年1〜3月 121,673 28,917
2007年4〜6月 91,793 21,848
直近1年間(2006年7月〜2007年6月)の新規貸出額は、
全産業 407,363億円
不動産業 93,045億円
である。
2006年1月〜12月と直近1年間の数値を比較すると、全産業は、
407,363億円÷419,043億円=0.972
で、マイナス2.8%である。
不動産業は、
93,045億円÷87,790億円≒1.06
で、プラス6.0%である。
全産業の新規貸出額が2.8%減少しているのに、不動産業は逆に6.0%増加しているのである。
全産業の新規貸出額に占める不動産業の割合は、平成18年の1年間では、
87,790億円÷419,043億円=0.2095≒0.21
である。
直近1年間では、
93,045億円÷407,363億円=0.2284≒0.228
である。
国内銀行の設備投資新規貸出額のうち、不動産業の全産業に占める割合が、平成18年1月〜12月の1年間よりも、直近1年間の方が増加し、しかもその割合が20%を超え、21%、22.8%と増加している。
3.5兆円、15%を超えたら地価上昇を引く起こす危険信号の域である。
それを遙かに超えている状態が続き、直近はなお占める割合が増えつつある。その割合が20%を超える状態は、異常な金融状態といえる。
これでは日本は不動産業を主産業とした国家と考えられてしまう。
日本は不動産業が主産業の国家ではない。
不動産業への年間新規融資額が10兆円に及び、かつ、融資額の占める割合が20%を超えている状態は、まさに20年前に味わった平成バブル経済と同じ状況である。地価の狂乱的馬鹿高を引き起こし、多くの大企業・中小企業の倒産をつくり、銀行をつぶしたバブル経済崩壊の苦い思いと教訓を忘れて、再び平成バブル経済の二の舞を演じようとしている。
現在のいびつな融資状態を、土地価格行政を行う行政者、金融政策を行う行政者、銀行経営者は深く考えるべきでは無いのか。
(追記) 2007年11月25日
上記鑑定コラム388)は2007年11月12日に発表したが、このコラム内容に若干関連した内容の記事を日経が書いている。日経の方が取材範囲は広く、詳しいのは当然であるが。
平成19年(2007年)11月25日の日経3面、金融経済面のトップに「ノンリコース融資不動産開発向け 大手行拡大」の見出し記事が掲載された。
内容の要旨は、ノンリコースを含む不動産融資の2007年9月末残高は54兆円であり、大手銀行グループのノンリコース融資残高が初めて6兆円を超えた。それは都心部の不動産開発によるものであるという。
ノンリコースが増えた理由は、大手企業の貸出金利が通常は年1%台なのに対して、ノンリコースの場合は、年2〜3%であるためと言う。
中央三井信託銀行の社長のコメント、三井住友銀行等の幹部のコメントも記されている。
それら銀行のコメントは、ノンリコース融資に今後慎重な姿勢、融資を控える動きを述べている。
加えて日経は、金融庁の姿勢について、
「金融庁は加熱する融資競争を警戒して、銀行側にリスク管理の徹底を求めている」
と報じる。
不動産貸出額と地価の関係について述べた記事は、下記の鑑定コラムにも有ります。
鑑定コラム407)「2007年不動産業への国内銀行新規貸出額10兆円」
鑑定コラム291)「バブル時に迫る銀行の不動産業への新規貸出額」
鑑定コラム316)「不動産ファンドへの貸出規制」
鑑定コラム352)「地価摩擦係数」
鑑定コラム956)「直近年間不動産業への新規貸出額8兆円」
鑑定コラム1049) 「不動産業への新規融資8.2兆円 要注意だ」
鑑定コラム1082)「不動産業新規融資前年同期比16.1%アップ(2013年1〜3月)」
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