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716) 筑波大学の渡辺信教授の執念

 筑波大学に渡辺信という教授がおられる。
 私が渡辺信教授の名前を知ったのは10年程前であったろうか。

 教授は筑波大学の近くの土浦の霞ヶ浦に繁茂している藻から、ガソリンを作り出せないのかという研究に取り組んでいると聞いて、その存在を知った。そして教授が取り組んでいる研究が実を結んでくれと密かに応援し望んでいた。

 光合成で重油とほぼ同じ性質の炭化水素をつくり出す藻類に「ボトリオコッカス」というのがあり、その藻類より重油量産の技術を目指していると知った。

 失敗と挫折を繰り返し、多くの研究者が研究を止めて去っていったのにも係わらず、「藻からガソリンを安く作ることが出来る。日本を石油輸出国にしてみせる」と信じ込み研究に取り組んで来られた。

 時々新聞とか雑誌に取り上げられて話題になったが、採算が合わないと云って、すぐ忘れ去られる状態であった。

 政府(通産省)も1990年から10年間、120億円余を投じて研究したが、よい結果が得られず研究を断念した。

 民間の出光興産も1980年〜1990年にかけて、ボトリオコッカスからのバイオ燃料の研究に取り組んだが、コスト高で採算会わないと云って研究を断念した。

 数年前には、渡辺教授は大量生産に踏み切れば、他の雑菌が入るリスクがあるが、1リットル155円の値段で作られるところまでこぎ着けた。
 そこが限界と思われていた。

 ところが平成22年(2010年)12月15日の日本経済新聞は、びっくりするニュースを伝える。

 渡辺信教授と彼谷邦光特任教授らが、沖縄の海の「オーランチオキトリウム」という藻類から、生産効率が10倍以上も高い石油が作られることを発見したという。
 生産コストは1リットル50円程度になるという。

 大発見である。
 生産コストは1リットル50円程度になれば、実用化は充分可能である。
 実用化に着手しない方が愚かである。
 研究費が無く、細々と研究を続けていた渡辺教授の研究の執念が実った。

 1ヘクタール当り年間120トンの炭化水素を作り出せるという。
 生産効率を上げれば、培養用地25万haあれば、日本の年間原油輸入量2億1200万キロリットルを生産することは可能という。

 現在の日本の農地の未耕作地は約60万haという。
 未耕作地を全てオーランチオキトリウムの藻類培養地に転換すれば、日本は石油輸出国になりうる。

 渡辺信教授の「日本を石油輸出国にしてみせる」という初志の思いは、夢で無く現実化になりつつある。

 政府は強いリーダーシップを出して、この事業の実用化、産業化に金を惜しまず出して成功させて欲しい。

 海外の企業のシェルも、既に利権獲得に動いているという。

 来年か再来年の文化勲章は、渡辺信教授だ。


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