数年前宮古島に行った。
遊びでは無い。不動産鑑定の仕事である。
宮古島空港でレンタカーを借りて、対象地、土地取引事例地、役所関係部署を車であちこち回った。
宮古島は平坦な島であり、サトウキビ畑がやたらに目につく。サトウキビ畑ばかりと云っても良いくらいである。
車を止めた。
車を降りて、サトウキビ畑で働いている人に近づき、
「景気はどう?」
と聞けば、
「良くない。」
と云う返事が返って来た。
「若い人を余り見かけないが?」
と問えば、
「若い人は島に愛想を尽かして、みんな東京に行ってしまっているょ。」
という。
「サトウキビでは生活出来ないのですか?」
と問えば、
「昔は生活出来たが、今はダメだ。
サトウキビだけでは生活出来ない。
爺さん、婆さんの二人で細々と作っているだけょ。」
と云う返事が返って来た。
「本州では、米の反当り収穫量は8俵程度ですが、サトウキビの反当り収穫量はどれぐらいですか。」
「サトウキビは収穫に1年半かかる。1年での収穫ではない。
夏植えと春植えがある。
夏植えと春植えでも収穫が違う。
夏植えで1年半で反当り6トンくらいかな。」
「とすると、1年で反当り4トン程度ですか。」
「ウン。そんな程度かな。春植えの株出の収穫もある。」
「株出の収穫はどの位ですか。」
「1年で2トンくらいかな。」
「とすると夏植えで4トン、春植えの株出の分が2トンで、合わせて年間換算6トンと云うことですか。」
「そうなるのかな。」
「ところで、サトウキビは、トンいくらぐらいで買い上げられるのですか。」
と聞けば、
「糖度に依って値段が異なり、一概にはいえないょ。」
「と言うと?」
「糖度が11度のものと、15度のものとで買い上げの価格が違うんだ。」
「そうなんですか。
とすると、サトウキビを刈り取って何処か知りませんが、精糖工場に持ち込んで見ないと値段は分からないということですか。」
「まあそんなものょ。」
「でも大体今年の出来は良いか悪いか分かるでしょう。」
「ウン、おおよそ出来不出来はわかり、いくらぐらいになるか分かるょ。」
「平均的に云って、どの位の収入になるのですか。」
「サトウキビを精糖工場に持ち込んで行っても、何だかんだと云って、いろいろな手数料等が取られて、トン当り2万円あれば良い方だな。」
「トン2万円として10反の畑として、10反だから収穫は60トンとなる。
2×60 = 120
120万円の収入ですか。」
「その位なのかな。
しかし、あなた妙な事をえらく詳しく聞くな。」
サトウキビの収穫収入も、何だか本州の零細規模の米作農地の状況に良く似ている状況である。
レンタカーを返却する為に、ガソリンを満タンにして返さなければならない。空港の近くのガソリンスタンドに寄った。
給油するスタンドの中に、上に「E3」という表示の立て看板がついているものがあった。
給油所の所員に、
「あのE3というのはなんですか。」
と聞いた。
「あれですか。
エコ3%のガソリンという印です。」
「エコ3%?
それは何ですか。」
「今、宮古島では試験的に行っています。」
「試験的にと云って何の試験的ですか。」
「宮古島ではサトウキビがとれますので、そのサトウキビからエタノールをつくり、それをガソリンに混ぜて使おうとしています。E3の3は、エタノールが3%入っているガソリンと云うことです。」
「エコガソリンですか。売れ行きはどうですか。」
「さっぱりです。一部の人が入れてくれますが。」
「バイオのガソリンですから、原油を全部輸入に頼っている日本に取って、少しでもそれを減らせる自前のバイオエネルギー利用は大変良いことではないですか。地元産ですから輸送費もかからないし、大いに普及するべきと思いますが。」
「そうなんですが。 エタノール入りのガソリンは、本当かどうか知りませんが、エンジン部分をさび付かせて自動車の寿命を縮めるとか何とか云って、石油連盟や自動車会社の人が反対しているのです。」
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