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1052)旅館の客室稼働率は35%

 全国の各都道府県(以下「地域」と呼ぶ)の旅館等の客室稼働率は、どれ程であろうか。

 観光庁が発表している宿泊施設の客室稼働率から分析してみる。

 データは、観光庁発表の平成23年の宿泊施設の客室稼働率のデータによる。

 観光庁は、宿泊施設を5つの類型に分けている。

 「旅館、リゾートホテル、ビジネスホテル、シティホテル、会社・団体の宿泊所」

である。

 全国と東京の宿泊施設全体の客室稼働率、類型別客室稼働率は、下記である。

                             全国%      東京% 

   客室稼働率       51.8      68.0    旅館          34.7      30.3    リゾートホテル     46.8      54.7    ビジネスホテル     62.3      70.9    シティホテル      67.1      69.6    会社・団体の宿泊所   31.6      54.4

 宿泊施設全体の客室稼働率の評点を100として、各類型の客室稼働率を評点化すると下記である。

                             全国        東京 

   客室稼働率      100.0       100.0    旅館          67.0       44.6    リゾートホテル     90.3       80.4    ビジネスホテル    120.3       104.3    シティホテル     129.5       102.4    会社・団体の宿泊所   61.0       80.0

 東京の場合、東京の宿泊施設全体の客室稼働率が分かれば、それに旅館は0.446、ビジネスホテルは1.043、シティホテルは1.024、会社・団体の宿泊所は0.8を乗じれば、その類型の客室稼働率が求められる。

 全国平均の旅館の客室稼働率は、34.7%である。
 旅館の客室稼働率は、35%と云える。

 旅館の客室稼働率が50%を越える地域はない。
 最高は宮城県の48.9%である。

 これが旅館の客室稼働率の実態である。
 この実態を無視して、旅館の客室稼働率を45%とし、一室6人の定員を鵜呑みにして一室6人の利用を前提にして旅館の売上高を計算することなどしないように。

 しないようにと云っても、そうして旅館の売上高を求める不動産鑑定士が、現実にはいるのであるから困る。

 宿泊施設全体の客室稼働率の最も高い地域は、

      大阪府     68.2%

である。

 逆に最も客室稼働率の低い地域は、

      奈良県     33.7%

である。

 奈良県が、客室稼働率の最低の地域であるというのには違和感を感じる。

 古都奈良である。
 歴史的観光施設も多くある。
 JR東海のテレビ広告ではないが、「そうだ、奈良に行こう」 と宣伝されている地域である。

 そうした奈良の地域の客室稼働率が、何故33.7%なのだという疑問が湧いてくる。
 信じがたい数値である。

 奈良の地域の行政体関係者、旅館等宿泊施設関係者は、宿泊施設の客室稼働率のアップを真剣に考える必要があろう。

 奈良の地域はもちろん、宿泊施設の客室稼働率が40%以下の、

        福井県    39.3%
        長野県    35.7%
        三重県    39.8%
        和歌山県   39.8%

の各地域の宿泊施設関係者は、一度自分達の足元を見つめ直して、如何に宿泊者を増やすことが出来るかよく考えても良いではなかろうか。

 全国平均51.8%から、著しくかけ離れた現在の客室稼働率に甘んじていて良いものかと。
 客室が多すぎて、過当競争であるから仕方ないと云うような情けない言い訳をしないように。

 東京のリゾートホテルの客室稼働率が、54.7%とある。

 東京にリゾートホテルはあるだろうか。
 どこにあるホテルであろうか。
 青梅の奥に入った奥多摩の辺りにもその様なホテルはない。
 海岸にもない。
 伊豆大島にあるホテルを東京のリゾートホテルと云うのであろうか。

 ビジネスホテルの客室稼働率の最も高い地域は、宮城県の80.7%である。

 年間80.7%の客室稼働率とは、甚だ高い数値である。
 ほぼ満室の状態の月が幾つかあることになる。
 宿泊予約が取れない日もかなりあることになる。

 宮城県はビジネスホテルのほかに、旅館でも客室稼働率は一位である。このことについては先に述べた。

 シティホテルの客室稼働率の最も高い地域は、78.6%の京都府である。

 会社・団体の宿泊所の客室稼働率の最も高い地域は、59.3%の島根県である。

 企業は、従業員の健康保険組合の保養所をドンドン手放している。
 そうした中にあっても、島根県が最高の客室稼働率を得ていることは、企業は島根県に持っている社員用の保養所を未だ手放していないのであろうか。

 観光庁発表の平成23年の各地域の客室稼働率、類型別客室稼働率一覧は、下記である。単位%。


地域 客室稼働率 旅館 リゾートホテル ビジネスホテル シティホテル 会社・団体の宿泊所
             
 全国 51.8 34.7 46.8 62.3 67.1 31.6
             
 北海道 52.3 40.7 41.8 60.7 64.1 27.8
 青森県 46.8 36.8 46.7 53.8 47.3 4.6
 岩手県 53.2 44.1 40.1 67.5 65.4 58.8
 宮城県 66.8 48.9 46.0 80.7 67.6 48.6
 秋田県 42.1 33.2 34.0 54.5 56.0 12.5
 山形県 44.4 33.3 29.9 60.5 58.4 42.1
 福島県 51.2 38.5 39.7 72.1 72.7 31.4
 茨城県 46.8 27.3 47.8 54.3 57.0 43.0
 栃木県 41.3 32.7 38.2 59.3 55.8 26.6
 群馬県 43.8 39.0 43.8 52.6 51.7 28.3
 埼玉県 54.8 32.7 27.5 61.5 63.3 34.9
 千葉県 52.6 27.2 58.4 59.2 60.5 28.0
 東京都 68.0 30.3 54.7 70.9 69.6 54.4
 神奈川県 59.9 44.2 58.5 68.3 71.0 35.8
 新潟県 40.2 28.4 29.0 59.0 57.0 31.1
 富山県 46.3 30.1 42.4 57.7 58.7 24.9
 石川県 53.0 42.3 47.2 60.4 60.4 47.5
 福井県 39.3 27.5 41.2 62.1 47.8 39.1
 山梨県 40.3 32.6 47.9 59.7 54.5 29.1
 長野県 35.7 27.6 39.1 57.1 65.8 21.9
 岐阜県 45.7 36.2 42.8 59.4 44.2 36.0
 静岡県 45.2 36.2 45.5 56.8 59.2 30.8
 愛知県 56.2 34.3 44.8 60.1 69.4 51.0
 三重県 39.8 26.9 37.8 53.0 54.5 22.8
 滋賀県 46.6 33.3 54.9 54.5 59.0 24.1
 京都府 62.4 40.8 55.5 72.3 78.6 41.8
 大阪府 68.2 32.5 69.1 69.6 77.4 40.5
 兵庫県 53.6 37.3 55.1 66.6 70.1 34.4
 奈良県 33.7 28.9 31.2 34.0 64.4 44.3
 和歌山県 39.8 37.8 45.4 45.0 62.2 37.2
 鳥取県 48.5 40.7 51.1 56.8 64.9 16.2
 島根県 50.3 33.3 29.7 74.9 52.3 59.3
 岡山県 47.1 29.1 43.7 59.2 56.3 18.9
 広島県 57.1 38.4 47.9 65.8 67.0 19.2
 山口県 51.1 36.7 53.3 59.3 59.4 14.7
 徳島県 44.2 24.2 40.0 62.9 56.5 9.3
 香川県 51.3 35.9 55.7 60.3 57.2 31.4
 愛媛県 49.3 38.2 46.8 56.6 57.4 55.2
 高知県 44.0 28.3 40.8 54.5 60.6 16.4
 福岡県 59.0 28.1 55.1 62.2 70.6 36.4
 佐賀県 46.7 41.8 38.0 59.6 43.3 25.2
 長崎県 45.6 35.7 41.8 56.1 62.2 35.2
 熊本県 51.0 39.0 45.4 60.4 66.9 33.6
 大分県 47.4 34.9 58.4 58.6 54.8 24.9
 宮崎県 50.3 33.8 39.5 55.7 68.9 14.5
 鹿児島県 47.2 37.4 37.6 55.1 65.1 24.0
 沖縄県 53.4 26.2 58.9 59.6 59.9 19.5


(追記) 平成25年3月8日 「各市の旅館・ホテル等類型別客室稼働率を知るには」

 各市の宿泊施設である旅館、ビジネスホテル、シティホテル等の客室稼働率を知るにはどうしたらよいであろうか。

 例えば、富山県高岡市のシティホテルの客室稼働率はどれ程であろうか。

 それは、下記のごとく計算する。
 但し、この求められる数値は合理的根拠データによって求められたものであるが、あくまでも推定であることを予め断っておく。

 富山県高岡市の全宿泊施設の平均客室稼働率は、鑑定コラム1001「全国主要都市・観光地の客室稼働率(24年9月直前1年間)」で、56.0%と知る。

 この56%から、高岡市のシティホテルの客室稼働率を求めることになる。

 鑑定コラム1052「旅館の客室稼働率は35%」は、都道府県ごとの全施設平均客室稼働率と、旅館、ビジネスホテル、シティホテル等の類型別客室稼働率が記されている。

 富山県は、

     全宿泊施設平均客室稼働率    46.3%
          旅館              30.1%
     リゾートホテル         42.4%
     ビジネスホテル         57.7%
     シティホテル          58.7%
     会社・団体の宿泊所       24.9%

である。

   富山県のシティホテルの稼働率は、富山県全宿泊施設の稼働率に対して、

       58.7%
           ───── = 1.2678                                    
       46.3%

である。

 これを高岡市の場合に当てはめると、高岡市の全宿泊施設の客室稼働率は56%であるから、シティホテルの客室稼働率は、

             56%×1.2678 ≒ 71.0%

と求められる。

 高岡市のシティホテルの客室稼働率は、71.0%である。

 求め方を簡単に算式表示すると、

                                     その県の類型別稼働率
     当該市の全宿泊施設稼働率×─────────────       
                                     その県の全宿泊施設稼働率

ということになる。

 高岡市のシティホテルの例を上式で求めれば、

                        58.7%
        56% ×────  ≒ 71.0%                           
                        46.3%
 
である。

 いささか我田引水になるかもしれないが、鑑定コラム1001と鑑定コラム1052の2つを利用すれば、鑑定コラム1001に掲載されている270区市町村の旅館、ビジネスホテル、シティホテル等の客室稼働率を知ることが出来る。
                    (鑑定コラム1056を転載)


(追記) 平成25年8月16日

 上記記事は、平成23年のデータであるが、平成24年の県別類型別宿泊施設客室稼働率のデータは、鑑定コラム1102)にあります。


  鑑定コラム1051)
「観光庁と日経主要ホテル客室稼働率の関係」

  鑑定コラム1001)「全国主要都市・観光地の客室稼働率(24年9月直前1年間)」

  鑑定コラム739)「不当鑑定及び資格剥奪にならなければよいが」

  鑑定コラム1056)「各市の旅館・ホテル等類型別客室稼働率を知るには」

  鑑定コラム1102)「平成24年各県の類型別客室稼働率」

  鑑定コラム1199)「浦安市の宿泊施設の客室稼働率がトップ」

  鑑定コラム1222)「平成25年の宿泊施設の客室稼働率は大幅にアップ66.3%」


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