○鑑定コラム


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1190)売却期間の知識の必要性

 土地、中古マンション、新築戸建住宅、中古戸建住宅の売却期間の分析を行い、それについて、前記までに鑑定コラムに記した。

 これにより上記各種類・類型の不動産についての期間がどれ程かが分かった。
 各不動産の市場売却期間は、下記である。

      土地         47日
            中古マンション        58日
            新築戸建住宅          42日
      中古戸建住宅          43日

 市場売却期間を知ってどうするのと思われる不動産鑑定士が大半だと私は思う。

 しかし、不動産鑑定評価をやっていく上に、市場売却期間の知識は必要であり、かつ、それを鑑定書に書かなければならない時がすぐ近くまで来つつあるのである。

 不動産鑑定がTPPの対象になった場合、アメリカの不動産鑑定が大手を振って日本になだれ込んでくる。

 その時、アメリカの不動産鑑定書では、評価対象不動産の市場滞留期間を必ず書かなければならないのであるから、日本での鑑定書もそれが要求されることになろう。

 評価額を出せば終わりと云うのでは無い。
 その評価額で売却出来る市場滞留期間はどれ程であるのか、根拠を示して鑑定書に書かなければならないのである。

 相当以前、アメリカのある企業が日本の企業を買収した。
 そのことに関連して、私は不動産鑑定として関与したことがある。

 日本企業を買収したアメリカの企業はアメリカで株式上場しているため、取得した日本企業の所有不動産がどれ程の価値を有するか時価評価して、アメリカの証券取引委員会に報告しなければならない。不動産鑑定評価書が必要である。

 私は、買収された日本企業の土地建物の価格を鑑定評価した。

 アメリカの鑑定会社の香港支店より、アメリカ人と中国人のアメリカの資格を持つ二人の不動産鑑定士・評価人が来日し、工場の機械装置の鑑定評価を行った。

 アメリカの証券取引委員会に提出するために、私はUSPAPに基づいて土地建物の不動産鑑定書を書いた。

 その際、当該不動産の市場滞留期間を書かねばならなかった。
 私は戸惑った。
 日本の不動産鑑定評価には、そのことに関しては全く考えていない。

 何とかデータを集め分析して、市場滞留期間の判断をしたが、私の少ない経験から考えると、TPP後には、不動産鑑定評価には、市場滞留期間の不動産鑑定書への記載が要求されると思う。


 一方、日本の不動産鑑定評価には「正常価格」という概念がある。
 不動産鑑定評価で求めるのは、殆どがこの「正常価格」である。

 求められた価格である正常価格は、適正であるであろうが、その正常価格で、市場で売却出来る期間はどの位の期間であるのかと問われると、現在の日本の不動産鑑定評価基準には、全くそれに触れていない。

 1ヶ月なのか、3ヶ月なのか、6ヶ月なのか、1年なのか。
 或いは極端な事を云えば、価格時点の1日だけ有効の価格なのか。

 これも相当以前であるが、国有地を売り払う旧大蔵省の係官から、

 「田原さん、求められている鑑定評価額の有効期間はどの位なのか。」

と問われたことがある。

 同じことは、旧建設省の道路用地買収の係官からも聞かれた事がある。

 不動産の訴訟で争っている弁護士にも聞かれた。

 鑑定評価で求めている鑑定評価額の有効な期間は、どれ程なのか。

 正常価格の売却期間については、鑑定コラム251)「早期売却価格」の記事の中でも書いている。

 現在不動産鑑定評価基準の改定作業が進んでいると聞く。
 新改訂の不動産鑑定評価基準に、正常価格、不動産鑑定評価額の有効期間の明記が必要という改訂事項が、果たして入るであろうか。

 不動産の種類・類型による市場滞留期間、市場売却期間の記載が必要と改正されるであろうか。

 興味を持って、鑑定評価基準の改定を見ていたい。

 それらの事を考えて、世田谷区を代表に選んで、4つの種類・類型の不動産の市場滞留期間、市場売却期間を分析し、コラムに発表したのである。

 このコラムの分析結果は、その様な面より考えれば、私は役に立つ情報の1つではないのかと、自分自身は思っている。


  鑑定コラム1188)
「新築戸建住宅の売却期間は42日」

  鑑定コラム1189)「中古戸建住宅の売却期間は43日」

  鑑定コラム1165)「中古マンションの売却期間は58日」

  鑑定コラム1163)「土地の売却期間は47日」

  鑑定コラム251)「早期売却価格」



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