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1212)超高級マンションの再調達原価の1つの求め方

 分譲マンションの再調達原価(新築分譲価格)の求め方は、

        @ 直接法
        A 間接法

の2つの手法で求める。

 直接法は、そのマンションの使用資材、数量等より、工事費を積算して求めるものである。

 請負契約書の添付工事費内訳書の積算工事費の現在価格を求める手法である。

 分譲マンションの場合には、開発分譲業者の利潤と付帯費用が加算されて、再調達原価が求められる。

 間接法は、類似の建物の建築工事費と比較して求める手法である。その際には単純な建設工事費だけで求めるのでは無く、直接法の場合と同じく、開発分譲業者の利潤と付帯費用を加算した金額である。

 建設会社の建物建築費のみを建物価格として、高級マンションを鑑定評価したら、とんでもない鑑定評価となる。

 その様な建物価格の求め方をしたら、高級、超高級、超々高級マンションの価格は同じ価格になってしまいかねなく、ひんしゅくを買う鑑定を行う可能性が高い。

 分譲マンションの直接法は、分譲マンション1戸の購入者の手許には、対象マンション一棟の請負契約書がある訳でなく、使用コンクリートの量、鉄筋の量等は分からないことから、適用は難しい。

 しかし、そういう求め方で無く、当初の新築購入価格を利用して、現在の新築分譲価格を求めることは出来る。

 中古マンション購入者の場合には、その新築価格が分からないことから、適用は出来ない(他の方法で分かれば適用は可である)が、新築のマンションを購入して、そのまま所有居住している場合の当該分譲マンションの再調達原価(新築分譲価格)の把握の1つについて述べたい。

 不動産情報会社の株式会社不動産経済研究所(東京新宿区 高橋幸男社長)は、「全国マンション市場動向」を発表している。

 首都圏、近畿圏の新築分譲マンションの平均価格等が発表されている。
 そのデータを利用する。

 価格分析例として、次のAマンションの現在(2014年4月)の新築分譲価格を求めることにする。

     場所           東京都港区
          専有面積         85u
          2003年新築時の取得価格    1億円
          建築年                     2003年

 Aマンションの新築時(2003年)の販売価格単価は、

              100,000,000円÷85u≒1,180,000円

u当り118万円である。

 Aマンションが分譲された2003年の東京23区の新築分譲マンションの価格は、前記不動産経済研究所の調査発表によれば、u当り67.5万円である。

 この金額については、鑑定コラム1211)「2013年東京23区分譲マンション平均価格はu86.5万円」で記されている。

 2003年の分譲時のAマンションは、どのクラスに属していたのであろうか。 そのことについて、下記で検討する。

 新築分譲マンションのu当り価格の変動係数は32%であった。
 この割合については、鑑定コラム1210)「東京23区新築マンションのu単価の変動係数は32%」で分析されている。

 2003年の東京区部新築分譲マンションの平均価格は、u当り67.5万円であるから、標準偏差は、

              67.5×0.32=21.6

21.6である。

 Aマンション価格の平均価格からの差は、

              118万円−67.5万円=50.5万円

50.5万円である。

 これを標準偏差で除すと、

       50.5万円
           ─────  = 2.34                                     
              21.6

2.34である。

 Aマンションの価格は、標準偏差の2.34倍のマンション価格と分析される。

 標準偏差2.34倍の面積比率は、正規分布表で見ると、0.0096である。
 0.96%の出現率である。

 Aマンションは、1000棟のマンションのうち、9棟しかないというマンションである。
 Aマンションは、超々高級マンションということになる。

 Aマンションは、そうしたクラスに所属するマンションであると認識して鑑定評価しないと、とんでもない鑑定評価をしてしまうことになる。

 では、現在(2014年4月)時点では、Aマンションの新築分譲価格はいかほどなのか。以下で推測する。
 
 現在(2014年4月)の東京23区の分譲マンションの平均価格は、不動産経済研究所の調査発表によれば、u当り90.0万円である。(鑑定コラム2011)

 この標準偏差は、変動係数32%を使用して、

      90.0×0.32=28.8

28.8である。

 Aマンションは、標準偏差の2.34倍の超々高級マンションであるから、2014年4月時点の新築分譲価格は、

         90.0+28.8×2.34=157.39≒158

u当り158万円と求められる。

 この単価に面積を乗ずれば、

     158万円×85u=13430万円

13430万円と求められる。

 Aマンションの再調達原価は、13430万円と求められる。

 Aマンションのごとくの超々高級マンションは、建築工事費より単純に再調達原価を把握しがたい。

 そうしたマンションの場合、新築時の平均価格に対する当該マンションの標準偏差倍率を把握して、マンションのレベルがどれ程にあるのかを知り、価格時点の新築分譲マンションの平均価格にその倍率を適用して求めた方が良い。

 当該マンションが保有する品等、管理、入居者レベル、階数、角部屋等の個別的要因が、そのまま反映されて再調達原価を求めることが出来る。

 高級マンション、超高級マンション、超々高級マンションの再調達原価、即ち新築分譲マンションの価格は、上記の手法の求め方が有用な求め方と私は思う。

 鑑定コラム2010)、2011)そして本コラム記事の3つで、超高級マンション等の再調達原価の求め方の小論文となろう。


  鑑定コラム1210)
「東京23区新築マンションのu単価の変動係数は32%」

  鑑定コラム2011)「2013年東京23区分譲マンション平均価格はu86.5万円」

  鑑定コラム803)「超高級マンションの価格」

  鑑定コラム790)「分譲マンションの再調達原価には分譲業者の利潤等が加算される」



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