○鑑定コラム
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アメリカには、古くから民間の鑑定制度があった。
現在アメリカでは、鑑定協会が8つ(ASA,AI,AIC,ASFMRA,IAAO,IRWA,NAIFA,NSREA それぞれの頭文字をとって表示した)ある。
不動産、機械、設備、動産、美術品等を鑑定する人々の団体である。
S&Lの破綻によって、資産評価の在り方が問題化した。
この問題化を受けて、評価基準の見直し、評価の中立性、外部圧力からの遮断が必要となり、1986年に、米国とカナダの資産評価を行う上記8つの鑑定業界団体が、標準資産評価基準(USPAP)を作成した。
1987年に、USPAPの普及を目的に、上記8鑑定業界団体が資金を提出して、ザ・アプレイザル・ファンデーション(TAF 米国鑑定財団) を設立した。
1988年に、米国連邦議会は、金融機関改革救済執行法という法律を可決する。
この法律は、TAF (米国鑑定財団) に2つの権限を付与した。
@ 評価・鑑定人の資格認定基準の策定
A 評価基準の普及活動
ASA(American Sociaty of Appraisers 米国鑑定士協会)は、米国鑑定財団構成員の中で、古い歴史を持つ鑑定業界団体である。ワシントンに本部があり、1936年創立の鑑定協会である。
得意とする分野は、動産、機械、設備、事業評価の分野の鑑定評価である。
日本の不動産鑑定士の団体である公益社団法人日本不動産鑑定士協会連合会は、上記8鑑定業界団体の1つであるAIとつながりがある。AIは不動産の鑑定評価を得意とする団体である。
AIとの繋がりからなのか分からないが、現在の日本不動産鑑定士協会連合会は、機械設備、動産、事業評価には全く無関心、無関係できた。
当然、日本不動産鑑定士協会連合会の会員である日本の不動産鑑定士達は、不動産の鑑定評価のみを専門とし、機械設備、事業評価の鑑定などを行ってこなかった。
日本のそれらの分野には、アメリカの鑑定会社が、既に日本に上陸し、鑑定事業を展開している。
日本にもいずれ機械装置・設備、事業評価の鑑定評価の必要性が生じるであろうと、10数年前に察知し、ASAの鑑定技術、資格制度を導入しようとする有志が現れた。
その行動に対して、日本不動産鑑定士協会連合会の活動を阻害するものだと批判し、陰口を言う人もいた。
しかし、数年前だったか。アメリカのASA本部より、日本の任意団体の事務局に妙な問い合わせがあった。
アメリカASAの年次大会に演説したいと、日本の地位ある役人から申し出が突然あって、ASAは驚いたが、スピーチを許した。
これはどういうことかという問い合わせであった。
それは誰かと聞いた処、国交省の本省のある課長であるという。
課長の名前を聞いて、こちらが驚いてしまった。
ASAの日本への資格導入に対して、ASAは難色を示した。
ASAの資格等は、あくまでアメリカ本土で行い,取得するものであり、日本で日本語による資格授与は認めないという姿勢である。
この姿勢は強固であった。
紆余曲折があったが、何とかASAの資格付与が日本でも出来る様にこぎ着けた。
ここまでたどり着くのにあまりにも時間がかかりすぎた。
当初意欲を持って機械装置、事業評価の鑑定人の資格を取ろうと意気込んで居た人も、年齢と共に意欲をなくし、失望して去っていった人も少なからずいる。
ASA本部と粘り強く交渉し、アメリカASAの本部より、講師を派遣してもらい、アメリカで行っているテキストを使い、全く同じ演習を行い、研修内容はアメリカ本土と全く同じ研修内容とし、試験、審査に合格すれば、日本でASA認定鑑定士の資格が取得出来ることになった。
各ステップの研修を行った後、研修内容がしっかり理解出来ているのか知る為に、研修最後の日に試験を行う。
試験問題も全く米国で行っているものを、日本語に日本の事務局が翻訳したものである。
答案は、講師がそのままアメリカに持ち帰り、アメリカで採点し、合否を日本の事務局に報告してくる。
レポートを提出し、そのレポートがIVSの規定通りに書かれているかどうかの審査を経て、資格が授与される。
2014年9月5日、日本で日本人9人のASA認定鑑定士が誕生した。
この9人の人々が、これから日本での機械装置・設備、動産、事業評価のASA第一期生として活躍されることを期待する。
航空機、船舶、工場の生産ライン、石油プラント、化学プラント、鉄鋼プラント等の価格評価、企業買収のM&Aの事業評価が、日本人のASA認定鑑定士として出来る様になったのであるから、鑑定技術をより勉強し、磨いて活躍して欲しい。
道は平坦では無いが、現在ある日本の不動産鑑定評価の草創期も同じ道を歩んできたと思い、頑張って行って欲しい。
下記に、合格し資格付与された名誉ある9人のASA認定鑑定士の氏名と所属を記す。
1、藤田朗誉 AM 一般財団法人日本不動産研究所
2、松浦英泰 AM 松浦不動産鑑定所 *
3、堀川裕巳 ASA 北央鑑定サービス *
4、古澤基徳 AM 札幌不動産鑑定
5、吉田 勉 AM しらさぎ鑑定所
6、天田淳一 AM みづき不動産鑑定士事務所 *
7、谷口 進 AM KPMG FAS
8、三浦雅文 AM プロパティ・コンサルティング
9、宇於崎幹朗 AM グローバル・アセット・ソリューション
*印は、有限責任事業組合 日本動産評価フロンティア所属
AM: Accredited Menber
ASA: Accredited Senior Menber
鑑定コラム727)「ASA(米国鑑定士協会)の機械・設備評価の講座の開催について」
鑑定コラム760)「ASA(米国鑑定士協会)機械・設備装置の国際資格研修」
鑑定コラム802)「WACC、CAPM、β」
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