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760)ASA(米国鑑定士協会)機械・設備装置の国際資格研修

 東京三鷹の国際基督教大学の特別教室において、2011年4月22日〜24日の3日間、ASA(米国鑑定士協会)の機械・設備装置の評価の国際資格取得専門家研修が行われた。

 4回の内の1回目の研修である。

 講師はリチャード・バークメイヤーASA上級鑑定士であった。ASAでは著名な人と聞く。

 日本に来る数週間前にはモスクワで、その前にはプエリトリコでも研修の講義を行ってきたと言う。

 2000年〜2005年まで、シティグループ・インベストメントバンクのバイスプレジデントをしておられたようである。

 ユナイテッド航空が倒産した時、その所有するボーイング社製の飛行機を鑑定評価した人とも聞く。

 アメリカのASAは、日本の機械・設備装置の国際資格取得研修の講師に、一級の人を派遣してくれたようである。

 朝9時半より午後6時までの講義である。
 3人の女性の通訳がかわりばんこに同時通訳してくれる。

 右耳にはイヤホンから翻訳の日本語が、左耳からは講師のしゃべるマイクの英語がガンガン入ってくる。前面のスクリーンには、日本語と英語の大きな画面がプロジェクターで次々と掲示される。机の上のテキストも見なければならなく、何が何だか分からない状態で講義を聞いていたような感じである。

 受講生の中には、日本語の通訳のイヤホンをハズして、英語をそのまま聞いている人もいる。時々の質問も英語でする人もいる。

 通訳がいなければ英語がさっぱり分からない私にとっては、とてもついて行けない研修である。

 1日目は講義、2日目は講義と幾つかの例題を解く。3日目は試験である。
 1日目講義終了時には、宿題も出された。

 その宿題の中で、ジェームス・イングラムメリルの「ブラック・スワン」の詩について、グーグルで調べて来いというものが出された。
 何故、ジェームス・イングラムメリルの「ブラック・スワン」の詩が、機械・設備装置の国際資格研修に関係があるのかと私はいぶかった。

 宿題ということであったから、家に帰りグーグルで検索したが、どうも分からない。
 何とかたどり着いたが、「ブラック・スワン」の詩の内容がさっぱり分からない。

 翌日国際基督教大学の学生食堂で昼食をとっていたら、今回の日本での研修開催に努力してくれた方とリチャード・バークメイヤーが、一緒に食事に同席して良いかと言うので、私は「どうぞ」といい、食事しながら話した。

 リチャード・バークメイヤー氏に、ジェームス・イングラムメリルの「ブラック・スワン」の詩について「何故あのような詩を宿題に出すのか」と聞いた。

 リチャード・バークメイヤー氏は逆に私に、

 「内容が分かったのか」

と問うてきた。

 「さっぱり分からない。」

と私は答えた。

 「それで良い。」

とリチャード・バークメイヤー講師はいう。

 講師は、「ブラック・スワン」の詩のごとく何を言っているのか分からない鑑定書を書いてはダメですという見本を示したものだという。

 なお、ジェームス・イングラムメリルは、メリルリンチの創始者の御曹司であると教えて下さった。「ブラック・スワン」の詩集は稀覯本で、目の飛び出る程の価格が付けられていることも教えて下さった。

 試験はマークシートによるもので、100余問出された。

 評価の用語と機械・装置設備の概念の問題、そして例題の計算である。

 私は、今迄にマークシートによる試験など受けたことは無かった。
 名前すらマークシートにすることにはいささか戸惑った。

 講義でも又試験問題でも同じであるが、「保険」の概念については、私はどうも分からない。

 アメリカは保険の国とも言われているが、保険に伴う機械・装置設備の価格の把握、用語がさっぱり理解出来ない。

 「保険の付保」、「付保割合条件付保険」という概念は、全く分からない。
 また「従価税」というアメリカの税金もどういうものかさっぱり分からない。

 当然、試験問題にそれらに関するものが出されても、私には正解の解答がどれなのか分からないと言うことになる。

 講師は、アメリカの四大監査法人は原価法の価格を、銀行は取引事例比較法の価格を重視し採用すると述べる。両価格の中間を取ることはしないという。

 日本の不動産鑑定評価でよく行う積算価格、比準価格或いは収益価格の平均を決定価格にするという価格決定の求め方は、アメリカではやらないという。

 研修参加者には米国国際会計士の資格を持っている公認会計士の人もかなり参加されていたが、その参加者の公認会計士の方に聞けば、日本の公認会計士協会では公認会計士に年間40単位の自主研修という名目の勉強を課しているという。

 会計関係の雑誌を読んで、その感想文を提出するとそれなりの単位が認められるという。

 今回のASAの国際資格取得研修参加も、公認会計士協会に申請すれば、40単位の研修として認められるのではなかろうかと言う。

 日本の公認会計士協会では、各自の自主的勉強・研修によって会計知識の向上を図り、40単位を与えるという制度を設けていることを知った。

 日本の不動産鑑定士の協会も、協会が行う講習によるものに単位取得を限定せず、公認会計士協会のごとく自主勉強・研修によった不動産鑑定の知識の向上を図ることに対して、単位を授与するという制度を取り入れても良いではなかろうか。

 今回のASAの機械・設備装置の国際資格取得研修を日本で、日本語で行う事が出来るまでに、発案から実現までに約7年の歳月を要した。やっと実行することまでこぎ着けた。
 多くの障害を乗り越えて実現にこぎ着けた関係者の努力、苦労、費用負担に感謝する。


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