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1375)宮崎市の田はu当り1096円(但し公売価格)

 宮崎市に関する記事が続いたが、今回で最後とする。

 宮崎市の田の価格は、どれ程であろうかと思い、調べて見た。

 宮崎市のホームページに、市の税務課が税金滞納の強制取り立て手段の一つである公売の公告をしていた。

 公売対象として、動産、不動産がある。

 不動産の中には、宅地とか、戸建住宅、マンション、山林、農地がある。

 農地には、田、畑がある。

 2015年9月29日(コラムの執筆時は2015年8月8日時であり、約1ヶ月半後である)公売期日の宮崎市の公売公告の中で、15件の不動産公売の公告がなされていた。

 その内訳は、宅地4件、農地11件である。

 農地のうち、田9件、畑2件である。

 田の一覧は下記である。地番は省略する。u当り価格の計算は田原による。


番号 町・大字 地目 面積u 見積価格円 u単価 円
1 宮崎市 北川内町黒岩前   962 1539000 1600
2 宮崎市 山崎町宮下   577 1155000 2002
3 宮崎市 跡江 大井田 1014 568000 560
4 宮崎市 跡江 大井田 1014 568000 560
5 宮崎市 大瀬町 柳橋 2509 3164000 1261
6 宮崎市 本郷南方 田元 1014 1065000 1050
7 宮崎市 本郷南方 田元 446 469000 1052
8 宮崎市 本郷南方 田元 495 521000 1053
9 宮崎市 佐土原町下田島 命ケ島ノ四 575 415000 722
  平均           1096
  標準偏差           477
  変動係数           0.435


 宮崎市に所在する田の価格は、u当り1,096円である。

 但し、この価格は、公売価格であり、農地の取引市場で形成される取引価格ではない。

 公売は、債権の強制換価の手段の一つである。

 自由な意思で取引される市場で形成される価格とは、性格が異なる。

 公売価格は、公売という強制換価という特殊要因が絡んで形成されている価格である。

 債権の強制換価の代表的なものは、裁判所が行う「競売」である。

 裁判所の競売価格は、競売という特殊要因を考えて、通常は市場価格に0.6とか0.7の競売要因という名目の価格修正が行われる。

 宅地の場合でも、農地の場合でも同じである。

 公売は、市役所等の地方公共団体、税務署が行うものであるが、公売における不動産価格(見積価格と呼ばれる価格)は、裁判所の競売価格と同じ考え方で決定される。

 競売要因で市場価格の0.6とか0.7の価格修正が行われると云っていても、それが伝聞証拠では、云っていることに信用性は無かろう。

 実際にその様に行われているのかという証拠を示すのが、信頼性を得る一番の方法であろう。

 宮崎裁判所管内の競売案件には、農地(田、畑)の競売案件は、この記事を書いている時点ではない。

 熊本裁判所管内を調べたところ、田の競売案件があった。

 下記である。

 「 事件番号 平成27年(ケ)第10号
      所在  熊本市南区富合町木原字高原町***番
      地目  田
   地積  2382u  」

 裁判所の不動産競売案件には、 3点セットと呼ばれるものがある。
 最近は、それがネットでも公開される様になった。

 3点セットとは、物件明細書,現況調査報告書及び評価書の3点の書類である。

 この中の「評価書」は、競売対象の不動産の価格をどの様にして求めたかの求め方が述べられている。

 その価格算出過程の記述の中で、上記事件番号の評価書の3頁には次のごとく、記載されている。

 「 標準価格    800円/u
      競売市場修正   0.60  」

 つまり、熊本の当該田の属する地域の田の標準価格は、u当り800円であるが、本案件は競売の強制換価であることから、その競売という特殊要因修正として0.6の修正を行っているということである。

 他の修正要因が無ければ、市場価格は800円/uであるから、

      800円×0.6=480円

本案件の競売価格は、u当り480円であるということである。

 この競売要因修正0.7或いは0.6の数値の算出方法について、私は正規分布を利用して証明した。

 それは、『民事再生法と資産評価』P199(田原他共著 清文社)の中の「早期売却価格修正率」で述べられている。

 その論文の大意は、当鑑定コラム251)「早期売却価格」の記事で述べられている。

 宮崎市の田の公売価格の平均は、u当り1,096円であるが、これは農地の市場価格ではない。

 農地の市場価格は、

                1,096円÷0.6=1,827円

u当り1,827円程度ということになる。

 宮崎市に農地の公売として、田9件、畑2件があるが、他の九州の県庁所在地の都市にも同じ様にそんなに多くあるのだろうかと疑問を持ち、県庁所在都市のホームページで調べて見た。

 この鑑定コラム記事を読まれる人は、筆者の不動産鑑定士の田原と云う人は、余程暇な人であると思われるかもしれないが、そんなに暇ではない。

 忙しい。

 忙しいが、気になったので、他の仕事を放り出して、ネットに向かって調べたのである。調べなければ、物事は分からない。

 結果は、下記である。

 宮崎市から反時計回りで、各県庁所在都市の不動産公売状況を記す。


 (大分市)

 市のホームページのトップページから、不動産公売の情報を得ようとしたが、どこにあるのか分からない。

 ホームページに設けられているキーワード検索の窓に、「不動産公売」の文言を入力して検索すると、「インターネット公売」の項目が現れた。

 大分市は、インターネットで公売しているようである。

 「インターネット公売」の内容を見ると、次の公売案件が表示された。

     大分市片島        宅地
     大分市城崎町    マンション
     大分市豊町     宅地
     大分市牧上町    戸建

 農地の公売はない。


 (福岡市)
 市のホームページのトップページの下の方に、「市政情報・市民参加」の欄がある。そしてその欄の中に、「財政・市債・公売」の項目が表示されている。

 ホームページのトップページから、「公売」を見つけることが出来る。
 サービスが良い。分かり易く良いホームページだ。

 公売の文字をクリックすると、「公売・市有地売却などの情報」の画面がでて来る。

 そして「市税滞納処分による公売」の項目、次いで「インターネット公売」と指示された文字をクリックしてゆく。

 「平成27年6月22日決定日」の文字画面がでて、終わりである。

 平成27年6月22日に公売価格が決定されたことはわかるが、その公売に付された不動産の詳細は削除されて不明である。

 済んだから削除という理由であろうが、公務上の情報である。
 削除せずに閲覧に供する状態にしておくべきではないのか。

 昨年の市予算は終わったからといって、削除するのか。 10年前の市予算はホームページに残されているであろう。


 (佐賀市)

 市のホームページのトップページから、不動産公売の情報を得ようとしたが、どこにあるのか分からない。

 ホームページに設けられているキーワード検索の窓に、「不動産公売」の文言を入力して検索すると、「不動産公売」の項目が現れた。

 しかし、その項目に内容記事の文言は全く無い。
 これで終わりである。

 人を喰ったホームページである。


 (長崎市)
 市のホームページのトップページの左隅に、「税金・公売・国民年金」の欄がある。

 ホームページのトップページから、「公売」を見つけることが出来る。

 サービスが良い。

 「公売」をクリックすると、「現在実施しておりません。」の文字画面がでで来る。

 田の公売は無いということである。分かり易く良いホームページだ。


 (熊本市)

 市のホームページのトップページから、不動産公売の情報を得ようとしたが、どこにあるのか分からない。

 ホームページに設けられているキーワード検索の窓に、「不動産公売」の文言を入力して検索すると、関連項目の幾つかが現れた。

 最初にある「不動産公売会のお知らせ」の項目をクリックすると、「現在行っている不動産公売会は御座いません」という画面が出た。

 不動産公売は現在無いのかと思い、ここで止めようと思ったが、2番目の関連項目を見てみようと、「不動産公売広報」の課題の2番目の項目をクリックしてみた。

 すると、次の内容の記事が出て来た。

 「 熊本市公告第369号
   売却区分番号 1
   公売日  平成27年6月5日
   所在等  熊本市北区高平一丁目***番
        畑     489u
        見積金額   680万円   」

   公売対象の畑のu当り金額は、

       6,800,000円÷489u ≒ 13,906円
 
13,906円である。

 これは畑の金額では無い。
 宅地見込地の金額では無いかと私には思われる。

 3つ目の項目として「公告第86号 平成27年2月2日 国税徴収法・・・・」の項目があった。

 気になったのでクリックしてみたら、次の内容であった。

 「 公告第86号 平成27年2月2日
   公売日  平成27年3月3日
   所在等  熊本市北区高平一丁目***番
        畑     489u
        見積金額   963万円   」

 「何だ、6月公売と同じ案件のものでは無いのか。
 3ヶ月で963万円であったのが、680万円に減額されるのか。
 おいおい、3月の963万円という価格は、一体どういう値段だったのか。
 誰が963万円を適正だと評価したのか。」

と、私は心の中で叫んだ。

 
               680万円
            ───── ≒ 0.706                                    
               963万円

 売れないと云うことで、3ヶ月で30%の価格減額したようだ。

 無茶苦茶な行政である。
 この様なやり方をしていて、庁内で問題にならないのか。

 互いに失敗を見て見ぬふりして、かばい合っているとしたら、それこそ問題であろう。

 議員は何をしているのか。

 裁判所の競売案件では、同じ熊本市の田では、u当り800円が標準価格と鑑定されている。

 公売の地目は農地の「畑」である。

 農地は、一般の人が宅地を買うごとく買うことは出来ない。
 農地法と云う法律があり、農地を買うことが出来る人は、農業を行っている人に限られる。


 (鹿児島市)

 市のホームページのトップページから、不動産公売の情報を得ようとしたが、どこにあるのか分からない。

 ホームページに設けられているキーワード検索の窓に、「不動産公売」の文言を入力して検索すると、「不動産公売広報」の項目が現れた。

 その項目をクリックすると、「このページは見つかりませんでした。」
という文言の画面が現れる。

 ふざけるなと怒鳴りつけたくなる人を喰ったホームページである。


 (那覇市)

 市のホームページのトップページから、不動産公売の情報を得ようとしたが、どこにあるのか分からない。

 ホームページに設けられているキーワード検索の窓に、「不動産公売」の文言を入力して検索すると、「ネット公売一覧」のページが出る。

 那覇市は、ネットで公売しているようである。

 しかしその画面には、

 「不動産の公売は現在行っていません。」

の文言が表示されて、不動産公売はないということである。

 これで九州の県庁所在都市の不動産公売状況の調査は終わりである。

 不動産公売の調査を終えて考えると、宮崎市のみ11件もの農地の公売があるのも、何だか妙なものである。


  鑑定コラム251)
「早期売却価格」

  鑑定コラム1371)「宮崎で市内地図を購入するに一苦労」

  鑑定コラム1373)「宮崎の鑑定の合間の休憩」

  鑑定コラム1374)「宮崎の賃料」


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