地代にとって、公租公課は大きな経費である。
企業経営の売上高と販売管理費の関係と云う考え方で、地代と公租公課を見れば、両者の間には密接な関係が認められる。
この関係を大量のデータによって分析すると、ある一定の関係があると認められる。
それが、「公租公課倍率法」という経済経験則として創り上げられた地代と公租公課の割合である。
公租公課の3倍が地代であると巷間でよく云われる割合である。
但し、3倍が適正地代と云う訳では無い。
私も公租公課と地代の関係をデータで分析して論文を発表した。
その分析結果から、公租公課の額に対応する地代の額をゾーンにして、論文の一部を著書に記している。
又、鑑定コラムの61)、239)にも分析結果のみ記している。
公租公課倍率法の有用性は認めるも、それが全ての地代、公租公課に当てはまるものでは無い。
鑑定コラム1356)の「地代と公租公課の関係」の中で、「公租公課減免によって、地代の倍率は著しく異なる場合があり、公租公課倍率10倍とか12倍の倍率になることが生じる」と述べている。
そして「租税の減免措置がなされている場合はイレギュラーとして措くとして」、と脇に措くとして、その事については論及しなかった。
今日は、「イレギュラーとして措くとして」として、論及しなかったものの一つについて、述べる。
その一つとは、次の場合に生じる地代である。
商業地域の中にある租税減免措置されている住宅地利用の地代の場合である。
この場合の地代について、他の不動産鑑定士が、上手に記述した記事がある事から、それを引用する。
公益社団法人東京都不動産鑑定士協会研究研修委員会(委員長 杉浦綾子氏)が発行した『平成24年度継続地代の調査分析』(平成25年3月発行) のP26に次のコラムがある。
コラムには題が無い。 無題のコラムである。
そのコラムの中に、下記の記述がある。
「商業ビルが立地していた商業地の地代が、固都税の3倍程度(非住宅)の1,000円/uであったとします。
時が経過し、共同住宅に建て替えられ、借地人の事業の収益性や契約の継続性を重視して、以前と同じ1,000円/uで契約が更新されたとします。
そうすると、共同住宅が建った翌年からは、固定資産税等については小規模住宅の1/6の特例によって、かっての非住宅の負担調整措置0.65を割り戻したとしても、公租公課は実質的に以前の1/4程度になり、計算される地代の公租公課倍率は12倍程度となります。
上記の経過を考えると、公租公課の12倍となる1,000円/uは、もっとも自然な合意と思われるのです。」
そして結論として、次のごとくコラム氏は述べる。
「現実のマーケットでは、上記のような経過を辿ったマンションの地代が公租公課の10倍を超えていたとしても、異常値といえるものではなく、むしろ12倍が自然な地代と受け止められる場合があることに留意下さい。」
著者は、携わった研究研修委員会の委員の不動産鑑定士の方であろうと思われるが、記名が無いことから、著者がどなたであるのか私には分からない。
税務に詳しいことから、研究研修委員会の委員の中で、税理士の資格を持っている判断力のしっかりした識見の高い不動産鑑定士の方では無いかと私は推測する。
上記コラム氏の云う12倍の倍率と1/4の公租公課になる経過を推測すると、下記のごとくでは無かろうか。
u当り1,000円の地代で、それは公租公課の3倍と云うのであるから、公租公課は、
1,000円÷3=333円
333円÷0.65=512円
512円÷6=85円
85円÷333円=0.255≒1/4
1,000円÷85円=11.76≒12倍
85円×3=255円