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面識の無い弁護士から突然次のごとくの電話が入った。
「最高裁判所に上告するについて、田原さんの書いた地代と公租公課倍率についての論文を証拠として提出したい。弁護士会の図書館を探しても見あたらない。ついてはその論文の掲載されている雑誌の名前と発行日、発行所を教えて頂きたい。手許にあれば、掲載雑誌の表紙と奥付のコピーをいただけないか」と。
論文そのものは既に手に入れているようであった。
最高裁判所に訴えるのに私の論文を証拠として提出することを聞いて、私の方がびっくりしてしまった。
平成6年に『東京鑑定会報』第44号p73(社団法人日本不動産鑑定協会東京会、現社団法人東京都不動産鑑定士協会)の会報誌に、「地代と公租公課の関係について」という論文を発表した。
地代と公租公課の間には密接な関係が有るのではないかと考え、平成2年〜4年のデータを使い分析してみた。
地代と公租公課の間には、
XY=a
(Xは公租公課、Yは公租公課倍率、aは定数)
の関係式が成立すると見いだした。
具体的な公租公課倍率として、
公租公課 坪円 公租公課地代倍率
90円〜120円 5倍
120円〜180円 4倍
180円〜240円 3.5倍
240円〜380円 3.0倍
380円〜880円 2.5倍
880円〜1,800円 2.3倍
1,800円〜4,000円 2.2倍
4,000円以上 2.1倍
と分析した。
公租公課倍率法とは、その土地の固定資産税、都市計画税の月額の金額にある倍率を乗じて、地代を求める手法である。
例えば対象地の公租公課が月額坪当り500円であったとすれば、
500円×2.5=1,250円
坪当り1,250円が地代ということである。
8年前の発表論文であり、使用したデータも平成2〜4年の物である。約10年前のデータであり、その後の公租公課の上昇もあり公租公課倍率は低下しているかもしれない。
しかし、最高裁判所に上告する地代の事件は、昨日、今日の時点の地代では無く相当以前の時点のものと思われる。データ分析頃の時点とすれば、論文は充分使えると思われる。
貸地業も企業経営の一つである。
企業経営であるからには売上(地代)と経費(公租公課)の間には、経済合理性が必ず存在しているハズである。そう考えれば地代の公租公課倍率法は、合理的な経験則としてそれなりの説得力ある分析手法では無いかと思う。
しかし、公租公課倍率法は学問的要素が無いと批判し、加えて簡単過ぎるためか鑑定評価の手法とは認め難いと主張する不動産鑑定士はいる。
私は、もの事簡単なものほど優れた物は無いと思っているが。
公租公課倍率法にデータの蓄積と分析、土地貸付経営と経費からの企業会計からのデータ分析を加えて、学術レベルまで分析手法を引き上げれば、説得力ある優れた評価手法になるのではないかと思う。
公租公課倍率法という手法については苦い思い出がある。
「公租公課倍率法は『鑑定評価基準』に明記されていない評価手法であるから認めることの出来ない手法である。認められない手法を使用している田原鑑定は不当鑑定だ」と法廷の鑑定人尋問で非難されたことには参った。
公租公課倍率法は、差額配分法を私的自治の原則を無視して賃料を求める(この恐るべき『鑑定評価基準』違反の求め方については後日述べたい)という様な、常識はずれの明らかな『鑑定評価基準』違反の求め方では無い。
地代を決めるときに当事者が日常的に使用している決め方である。裁判所の調停事件においても使われている手法である。
しかし、法廷の証人台で、
「『不動産鑑定評価基準』違反で不当鑑定だ」
と一方の代理人弁護士から非難、罵倒されることは身にこたえる。
今迄にも年に一・二回ぐらい面識のない弁護士から、同じ論文のコピーを欲しいという要望はあった。その都度送付していた。
最高裁判所に私の論文が証拠として提出されても、名の通った学者の論文ではない。無視される可能性が大である。
それでは面白くない。
裁判は喧嘩である。
喧嘩であるからには勝たなければならない。
私の論文を証拠として提出してくれるのである。こちらも手助けしたくなる。わずかでも勝つ可能性を見いだせないかと、我田引水もいい処であるが、ホームページに
「ある裁判官の訃報」
として安岡満彦元最高裁判事と私の鑑定の関係を述べたコラムを載せている。
「この「ある裁判官の訃報」というコラムを論文に付けて最高裁に提出したら」とかすかな希望を持って弁護士に伝えた。
今年(2002年)7月に亡くなった安岡判事の葬儀には、現最高裁の判事達は全員必ず参列しているハズである。先輩裁判官の名前が出てくる文章を目にすれば、少し心証をよくして、論文を取り扱って頂けるのではないかという甚だ手前勝手な淡い目論見である。果たして旨く行くかどうか。
地代裁判についての貢献度から云えば私の論文など微々たるものである。
日本不動産鑑定協会の副会長及び東京会の会長を務められた横須賀博先生が主宰する日税不動産鑑定士会の『継続地代の実態調べ』の貢献度は特筆すべきものである。地代評価をやってみれば、その有用性、影響力、存在感をすぐ実感する。
横須賀博先生がその調査報告書を継続的に出されたことによって、不動産鑑定士が得た信用と地位の向上の利益は多大なものである。
****追記 平成26年10月17日 寺の貸地の地代は公租公課の3倍以下 鑑定コラム1260転載
平成26年(2014年)の9月下旬、東京地裁の18階大会議室で、鑑定委員協議会が開かれた。
年一回開かれる恒例の会議である。
借地非訟事件を扱う裁判官と鑑定委員による課題案件の討議である。
鑑定委員は、弁護士、不動産鑑定士、建築士等民間精通者である。
大学の講義日で無かったことから、今年も協議会に参加した。
所長代行、総務課長を従えて、東京地裁の所長が会議室に入場し、席に着席すると会議は始まる。
東京地裁の所長の挨拶が最初に行われる。
所長は荒井勉裁判官であった。
借地非訟事件の90%は解決しており、鑑定委員の判断が、裁判官の決定を経て、国民の生活、経済活動の指針、基準になっていると述べる。
全国の借地非訟事件のうち、半分以上を東京地裁が担っていると報告される。
去年は小池裕所長裁判官、一昨年は岡田雄一所長裁判官の話であった。
岡田雄一所長裁判官は、その後名古屋高裁長官への転任となった。
小池裕所長裁判官は、その後東京高裁長官への転任となった。
今、話をされている荒井勉所長裁判官も、いずれ高裁長官そして最高裁判事の道を歩まれるのか。
そんな気持ちを抱いて、荒井勉所長裁判官の話を聞いた。
所長、所長代行、総務課長が退室後、借地非訟を職掌する部統括裁判官が議長となって協議会の討議が始まった。
検討課題は4問あった。
そのうちの一つに、借地条件変更承諾料の問題があった。
現行借地借家法17条1項は、次のごとく規定する。
「建物の種類、構造、規模又は用途を制限する旨の借地条件がある場合において、法令による土地利用の規制の変更、付近の土地の利用状況の変化その他の事情の変更により現に借地権を設定するにおいてはその借地条件と異なる建物の所有を目的とすることが相当であるにもかかわらず、借地条件の変更につき当事者間に協議が調わないときは、裁判所は、当事者の申立により、その借地条件を変更することができる。」
この条文の「用途の変更」による場合には、どう対処すべきかということが、検討課題になった。
用途指定が自宅利用として貸した土地が、貸家の用途の土地に変更されたり、店舗用途になった場合、どう判断処理すれば良いのかということである。
この検討課題で、一人の弁護士が挙手して、自分の考えを述べた。
「・・・・寺の貸地は、公租公課の3倍以下である場合には、その地代には収益性が無いと確か税法にある・・・・」
という類の発言であった。
その発言を聞いた時、
「お、この弁護士、良く勉強している。
借地関係に明るそうだ。
なかなかの弁護士だ。 ・・・・・」
と私は思った。
そして、一つのコラム記事を思い出した。
宗教法人の貸地の住宅地の地代が、公租公課の3倍以下の低水準の地代にあることに関して、
「その理由は、宗教法人(公益法人)に関しては、(法人税施行規則第4条)において、住宅用土地の貸付業で収益事業に該当しないものの要件として、住宅用土地に課される固都税の3倍以下という規則があるためです。」
と記するコラムを思い出した。
このコラム記事は、公益社団法人東京都不動産鑑定士協会研究研修委員会(委員長 杉浦綾子氏)が、平成25年3月に発行している『平成24年度 継続地代の調査分析』P23に掲載されている。
コラム記事の著者は無記名であるため、執筆者はどなたか私には分からない。
不動産鑑定士であることは間違いないが、税務関係の知識にも造詣が深いと思われることから、税理士の資格も持っておられる方ではなかろうかと推測する。
お寺は、地代が公租公課の3倍以下であるならば、宗教法人の非課税の特権を受けるのであれば、貸地の地代を公租公課の3倍以下にするであろう。
都内の借地には、寺の貸地が多い。
このことから、コラム氏は、寺の貸地の地代が、
「地域の地代相場を牽引する」
こともあるという。
そしてこうも云う。
「住宅地の公租公課の「3倍以下」という水準は、収益事業とは言えない程、「低廉な地代」という意味だったのです。」
と。
寺の貸地の地代が何故安いのか。
地代は公租公課の3倍と巷間何故云われているのか。
公租公課の3倍の地代は高いのか安いのか。
それらの原因を教えてくれたコラム氏は、識見の高い不動産鑑定士と私は思う。
コラム氏が根拠を示した法人税施行規則第4条を、下記に記す。
(住宅用土地の貸付業で収益事業に該当しないものの要件)
第四条 令第五条第一項第五号 ヘ(不動産貸付業)に規定する財務省令で定める要件は、同号 ヘに規定する貸付業の貸付けの対価の額のうち、当該事業年度の貸付期間に係る収入金額の合計額が、当該貸付けに係る土地に課される固定資産税額及び都市計画税額で当該貸付期間に係るものの合計額に三を乗じて計算した金額以下であることとする。
法人税法施行令(昭和四十年三月三十一日政令第九十七号) 「第五条第一項第五号」
五 不動産貸付業のうち次に掲げるもの以外のもの
イ 特定法人が行う不動産貸付業
ロ 日本勤労者住宅協会が日本勤労者住宅協会法第二十三条第一号及び第二号に掲げる業務として行う不動産貸付業
ハ 社会福祉法(昭和二十六年法律第四十五号)第二十二条(定義)に規定する社会福祉法人が同法第二条第三項第八号(定義)に掲げる事業として行う不動産貸付業
ニ 宗教法人法(昭和二十六年法律第百二十六号)第四条第二項(宗教法人の定義)に規定する宗教法人又は公益社団法人若しくは公益財団法人が行う墳墓地の貸付業
ホ 国又は地方公共団体に対し直接貸し付けられる不動産の貸付業
ヘ 主として住宅の用に供される土地の貸付業(イからハまで及びホに掲げる不動産貸付業を除く。)で、その貸付けの対価の額が低廉であることその他の財務省令で定める要件を満たすもの
(鑑定コラム1260より転載)
****追記 地代と公租公課の関係 2015年6月25日
地代と土地価格の間には、昭和60年頃までは、強い相関関係があった。
地価が上がれば、地代も上がるという関係が見られた。
平成バブルの地価の異常な上昇により、地代と土地価格の相関関係が切断されてしまった。
このことについては、鑑定コラム1270)「地価の変動と地代の変動は比例していない」の記事で述べた。
地代と土地価格の相関関係が切断されてしまったのであれば、地代と公租公課の間の相関関係はどうであろうか。
地代と公租公課の間の相関関係も、地価と同じく切断されてしまったのであろうか。
その関係を分析してみる。
結論から先に云うと、地価と異なり、地代と公租公課の間には、強い相関関係が存在する。
地代の必要諸経費は、公租公課が大半を占めていることから、両者の間には強い相関関係があると判断される。
公租公課倍率法という経済経験則によって創り上げられている手法が存在することは、両者の間に強い相関関係があることを示す。
但し、公租公課倍率法は絶対では無い。
宅地の規模や利用形態によって、複雑な公租公課の減免措置がなされている。1/3の減免とか1/6の減免が行われている場合がある。
その公租公課減免によって、地代の倍率は著しく異なる場合があり、公租公課倍率10倍とか12倍の倍率になることが生じる。公租公課3倍が適正な倍率であると信じ込み、減免措置されている事を棚に上げて、それら割合の地代は不当に高い地代であり、或いは地代鑑定は、不当に高い鑑定であると主張している場面に出くわす場合があるが、その主張は必ずしも正しいというものでは無い。
公租公課倍率法が絶対では無いということは、そうした場合があるためである。
租税の減免措置がなされている場合はイレギュラーとして措くとして、地代と公租公課の関係を分析すると、両者の間には強い相関関係が認められる。
地代のデータは日税不動産鑑定士会が発表している『継続地代の実態調べ』の住宅地の地代とする。
公租公課は、東京都主税局が発表している『東京都税務統計年報』の宅地の固定資産税による。
この固定資産税は、宅地全部のものであり、商業地の固定資産税も含まれている。住宅地の固定資産税は発表されていないことから、止むを得ず全宅地の固定資産税のデータを採用する。
東京23区の昭和57年度の宅地の固定資産税の税収額は、193,539,188千円である。1935億円である。
この時の宅地面積は、309,576,324uである。
u当りの年額固定資産税は、
193,539,188,000円÷309,576,324u=625円
である。坪当りに換算すると、
625円×3.30578=2,066円
である。
これは年額であるから、月額に換算すると、
2,066円÷12=172円/坪
坪当り172円である。
同様な求め方で、東京都主税局発表の宅地の固定資産税から、23区の3年毎の坪当り固定資産税の金額を下記に求める。
|
宅地固定資産税千円
|
宅地面積u
|
u単価円
|
坪単価円
|
月坪単価円
|
昭和57
|
193539188
|
309576324
|
625
|
2066
|
172
|
60
|
250838451
|
309334576
|
811
|
2681
|
223
|
63
|
305480618
|
312430869
|
978
|
3233
|
269
|
平成 3
|
394206417
|
313170093
|
1259
|
4162
|
347
|
6
|
530438976
|
314199636
|
1688
|
5580
|
465
|
9
|
577274303
|
312621810
|
1847
|
6106
|
509
|
12
|
538391402
|
313130585
|
1719
|
5683
|
474
|
15
|
496958531
|
314189921
|
1582
|
5230
|
436
|
18
|
499402700
|
315564806
|
1583
|
5233
|
436
|
21
|
551921953
|
314847365
|
1753
|
5795
|
483
|
24
|
585685504
|
315039899
|
1859
|
6145
|
512
|
日税不動産鑑定士会の23区住宅地の地代と、宅地の固定資産税の金額一覧は、下記である。
|
23区住宅地代 円/坪
|
23区月坪単価円
|
昭和57
|
445
|
172
|
60
|
545
|
223
|
63
|
606
|
269
|
平成 3
|
713
|
347
|
6
|
929
|
465
|
9
|
1078
|
509
|
12
|
1070
|
474
|
15
|
1135
|
436
|
18
|
1123
|
436
|
21
|
1107
|
483
|
24
|
1110
|
512
|
両者の推移をグラフ化すれば、下記である。
両者の間には、相関関係があることが読み取れる。
どれ程の相関関係があるのか、最小二乗法で分析してみる。
X 固定資産税 月額坪円
Y 23区住宅地地代 坪円
XYの間には、
Y=74.96056+2.088866X
(0.228)
t値=9.13 有意
相関係数0.950
の関係式が認められる。
相関係数は0.95であり、高い。
地代と公租公課の間には強い相関関係があると分析される。
固定資産税に対する地代の倍率を見ると、下記である。
|
23区住宅地代 円/坪
|
月坪単価円
|
倍率(地代/固定資産税)
|
昭和57
|
445
|
172
|
2.59
|
60
|
545
|
223
|
2.44
|
63
|
606
|
269
|
2.25
|
平成 3
|
713
|
347
|
2.05
|
6
|
929
|
465
|
2.00
|
9
|
1078
|
509
|
2.12
|
12
|
1070
|
474
|
2.26
|
15
|
1135
|
436
|
2.60
|
18
|
1123
|
436
|
2.58
|
21
|
1107
|
483
|
2.29
|
24
|
1110
|
512
|
2.17
|
2.0〜2.6倍の倍率である。
固定資産税が商業地も含めたものであるため、住宅地の地代に対しては、2.0倍という低い倍率となることは、仕方ない。
逆にいえば、固定資産税の2倍という倍率は、地代の最低倍率であるということがいえよう。
(鑑定コラム1356より転載)
****追記 公租公課の10倍の地代は有りうる 2015年11月11日
地代にとって、公租公課は大きな経費である。
企業経営の売上高と販売管理費の関係と云う考え方で、地代と公租公課を見れば、両者の間には密接な関係が認められる。
この関係を大量のデータによって分析すると、ある一定の関係があると認められる。
それが、「公租公課倍率法」という経済経験則として創り上げられた地代と公租公課の割合である。
公租公課の3倍が地代であると巷間でよく云われる割合である。
但し、3倍が適正地代と云う訳では無い。
私も公租公課と地代の関係をデータで分析して論文を発表した。
その分析結果から、公租公課の額に対応する地代の額をゾーンにして、論文の一部を著書に記している。
又、鑑定コラムの61)、239)にも分析結果のみ記している。
公租公課倍率法の有用性は認めるも、それが全ての地代、公租公課に当てはまるものでは無い。
鑑定コラム1356)の「地代と公租公課の関係」の中で、「公租公課減免によって、地代の倍率は著しく異なる場合があり、公租公課倍率10倍とか12倍の倍率になることが生じる」と述べている。
そして「租税の減免措置がなされている場合はイレギュラーとして措くとして」、と脇に措くとして、その事については論及しなかった。
今日は、「イレギュラーとして措くとして」として、論及しなかったものの一つについて、述べる。
その一つとは、次の場合に生じる地代である。
商業地域の中にある租税減免措置されている住宅地利用の地代の場合である。
この場合の地代について、他の不動産鑑定士が、上手に記述した記事がある事から、それを引用する。
公益社団法人東京都不動産鑑定士協会研究研修委員会(委員長 杉浦綾子氏)が発行した『平成24年度継続地代の調査分析』(平成25年3月発行) のP26に次のコラムがある。
コラムには題が無い。 無題のコラムである。
そのコラムの中に、下記の記述がある。
「商業ビルが立地していた商業地の地代が、固都税の3倍程度(非住宅)の1,000円/uであったとします。
時が経過し、共同住宅に建て替えられ、借地人の事業の収益性や契約の継続性を重視して、以前と同じ1,000円/uで契約が更新されたとします。
そうすると、共同住宅が建った翌年からは、固定資産税等については小規模住宅の1/6の特例によって、かっての非住宅の負担調整措置0.65を割り戻したとしても、公租公課は実質的に以前の1/4程度になり、計算される地代の公租公課倍率は12倍程度となります。
上記の経過を考えると、公租公課の12倍となる1,000円/uは、もっとも自然な合意と思われるのです。」
そして結論として、次のごとくコラム氏は述べる。
「現実のマーケットでは、上記のような経過を辿ったマンションの地代が公租公課の10倍を超えていたとしても、異常値といえるものではなく、むしろ12倍が自然な地代と受け止められる場合があることに留意下さい。」
著者は、携わった研究研修委員会の委員の不動産鑑定士の方であろうと思われるが、記名が無いことから、著者がどなたであるのか私には分からない。
税務に詳しいことから、研究研修委員会の委員の中で、税理士の資格を持っている判断力のしっかりした識見の高い不動産鑑定士の方では無いかと私は推測する。
上記コラム氏の云う12倍の倍率と1/4の公租公課になる経過を推測すると、下記のごとくでは無かろうか。
u当り1,000円の地代で、それは公租公課の3倍と云うのであるから、公租公課は、
1,000円÷3=333円
である。
非住宅の負担調整措置0.65が無くなることから、本来の公租公課は、
333円÷0.65=512円
である。
この本来の公租公課が、今度は小規模住宅の1/6の特例が適用される。
512円÷6=85円
u当り85円が公租公課である。
新しい公租公課は、
85円÷333円=0.255≒1/4
従前の公租公課の1/4程度である。
地代は1,000円で変わらないのであるから、地代の公租公課倍率は、
1,000円÷85円=11.76≒12倍
12倍となる。
この計算が合っているかどうか分からないが、多分こうして12倍の倍率、1/4の公租公課となるのであろう。
私も、上記によく似た案件に遭遇したことがある。
上記の例で、例えば公租公課がu当り85円になったのであるから、公租公課地代3倍適正論を持ち出して、
85円×3=255円
u当り255円が適正地代であるから、u当り1,000円の現行地代をu当り255円に減額せよという類のものである。
地代をu当り255円に減額するとすれば、u当り1,000円で形成されている商業地の更地価格は、u当り255円に相当する更地価格まで下落することになるであろうか。
(鑑定コラム1409より転載)
公租公課倍率法に関して、本ホームページの『鑑定コラム』に次の記事があります。
鑑定コラム239)「公租公課倍率法・平成17年」
鑑定コラム884)「定期借地権の地代は、公租公課の7倍前後」
鑑定コラム1356)「地代と公租公課の関係」
鑑定コラム1365)「借地権価格と地代」
鑑定コラム1409)「公租公課の10倍の地代は有りうる」
鑑定コラム2330)「事業用定期借地権の地代の公租公課倍率は6.0倍」
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