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1442) 期間1年、2年、3年、4年国債はマイナス金利となっている

 国債金利と不動産の還元利回り及び期待利回りとは、関係があるだろうかと思い、その関係を分析してみようと思い、国債金利を調べて見た。

 財務省が発表している「国債金利情報」を見てみた。

 それを見て驚いた。

 日本の国債にもマイナス金利が生じていた。

 マイナス金利が発生したということの話は、西欧で発生したと昨年(2015年)日本経済新聞の記事で知っていたが、日本の国債で生じていることは知らなかった。

 日本の国債にマイナス金利が生じた日時、利率は下記である。日本の国債マイナス金利の発生は、初めてのことである。

  期間1年国債    平成26年12月17日  −0.001
  期間2年国債    平成27年11月09日  −0.004
  期間3年国債    平成27年11月18日  −0.004
  期間4年国債    平成28年01月07日  −0.003

 それ以降、期間1年、2年、3年、4年の国債のマイナス金利は頻繁に出現し、続いている。
 期間5年国債には、マイナス金利は発生していない。

 何故国債にマイナス金利が発生するのかについては、私の説明よりもその道のプロの人達が理由を説明していることから、そちらの人に譲る。

 平成27年(2015年)12月30日現在の国債金利を記すと、下記である。

        国債期間          金利

1年 -0.043 2年 -0.033 3年 -0.013 4年 0.008 5年 0.032 6年 0.037 7年 0.064 8年 0.124 9年 0.190 10年 0.267 15年 0.603 20年 0.997 25年 1.155 30年 1.282 40年 1.406

 池波正太郎の『鬼平犯科帳』が描く火付盗賊改方長官長谷川平蔵にあやかって、「平成の鬼平」とマスコミが持ち上げた三重野日銀総裁は、平成バブルの不動産価格高騰退治を行ったが、その時の国債金利はどうであったろうか。

 最高潮であった平成2年(1990年)4月3日の国債金利を記すと、下記である。

        国債期間          金利

1年 7.408 2年 7.373 3年 7.109 4年 7.034 5年 7.096 6年 7.167 7年 7.130 8年 7.050 9年 6.955 10年 6.785 15年 - 20年 6.757

 国債金利と不動産の還元利回り及び期待利回りとの間に相関関係があるとすれば、国債金利がマイナス金利の場合には、不動産の還元利回り及び期待利回りもマイナス利回りになることになる。

 しかし、不動産の還元利回り及び期待利回りが、現在マイナス利回りであるとは聞かない。ゼロ利回りであるとも聞かない。

 とすると、国債金利と不動産の還元利回り及び期待利回りの間に相関関係があるという仮説は、間違いということになるのだが。

 国債金利を基準にして、期待収益率を算出する現代の資産運用理論は、その土台そのものが崩れようとしているのではないのか。

 鑑定評価基準は、不動産の還元利回りの求め方として4つの求め方を示す。

 そのうちの1つとして、割引率より求めよと云う。

 その割引率は、どの様にして求めるのかというと、鑑定基準は次のごとく云う。

 「債券等の金融資産の利回りをもとに、対象不動産の投資対象としての危険性、非流動性、管理の困難性、資産としての安全性等の個別性を加味することにより求めるものである。」(26改正鑑定基準国交省版P31)

 この「債券等の金融資産の利回りをもとに」の記述の「債券等の金融資産」とは、国債を指している。トヨタ自動車の社債を指している訳ではない。みずほ銀行の1年定期預金を指している訳ではない。日本政府が発行する国債を指している。

 その国債の金利、つまり国債の利回りを「もとに」、つまり基準として求めよと云っている。

 その国債の利回り、即ち金利がマイナス金利では、基準になるのか。

 鑑定評価基準のこの割引率の求め方は、「積み上げ方式」と呼ばれる求め方であるが、国債のマイナス金利の出現によって、その求め方の理論構築が土台から崩れようとしている。

 なお、平成27年と平成2年の国債利回りを見較べてみると、おかしなことに気付こう。

 金利の水準が全く違うことは、当然であるが、それ以外に大きな違いが認められる。

 平成27年の金利は、短期(短期金利は1年未満の金融資産の金利を云うが、ここでは論を進めるための便宜上1年国債金利を短期と呼ぶこととする。以下同じ)と長期を較べてみると、長期金利の方が金利は高い。

 一方、平成2年の短期と長期の金利を見ると、短期の金利の方が長期よりも高い。

 この現象は何故であろうか。

 財務省の「国債金利情報」のアドレスは、下記である。

    
http://www.mof.go.jp/jgbs/reference/interest_rate/


  鑑定コラム149)「積み上げ方式の割引率に実証性はあるのか」

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