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1554)改定増補『賃料<地代・家賃>評価の実際』のはしがき

 著書改定増補『賃料<地代・家賃>評価の実際』を脱稿したことについては、鑑定コラム1553)で記した。

 その鑑定コラム1553)の脱稿記事の中で、「今回の鑑定基準の改定においては、私が主張していた幾つかが取り入れられている。」と記した。

 その基準に取り入れられたものは何なのだと云うことになるが、そのことについて、改定増補版の初頁の「はしがき」の中に記した。

 そのこともあり、その「はしがき」を下記に転載する。

 最初の10行程度は、鑑定コラム1553)の脱稿記事と重なるが、それは我慢して読んで下さい。

 なお、基準改定に取り込まれた私の主張についての内容は、過去の鑑定コラムに述べられているので、その過去の鑑定コラム名も記して置く。



 2001年11月に『賃料<家賃>評価の実際』(清文社)を発行した。

 その著書は、半分が基礎価格である土地建物の価格の評価に費やされていた。

 数年で売り切れ絶版となった。

 絶版になったが要望が多くあったため、4年後、家賃評価の部分を抜き出し、地代評価を加筆して2005年12月に、初版・『賃料<地代・家賃>評価の実際』という著書を発行した。

 それから11年経ち、賃料評価理論も進歩した。

 平成26年5月に不動産鑑定評価基準が改定された。

 その改定は、価格評価の他に賃料評価の基準改定がなされた。

 その基準改定に伴い初版著書の内容も改定する必要が生じた。

 平成26年5月の基準改定は、私が著書や論文そして講演で主張していた3点を取り入れるごとく改定された。

 一つは、不動産鑑定評価の基本の基本である土地価格の求め方が変更した。

 更地価格の求め方が変わると云うことは、画期的なことであり、重大なことである。
 何度かの鑑定基準の改訂がなされたが、更地の求め方は、昭和44年(1969年)統一基準にされてから変更されていない。

 改定前の基準の更地価格の求め方は、

 「更地並びに自用の建物及びその敷地の取引事例に基づく比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連づけて決定するものとする」

であった。

 改定新基準では、

 「更地並びに配分法が適用できる場合における建物及びその敷地の取引事例に基づく比準価格並びに土地残余法による収益価格を関連づけて決定するものとする」

となった。

 「自用の建物及びその敷地の取引事例」のところが、「配分法が適用できる場合における建物及びその敷地の取引事例」に改定されたのである。

 それだけの改定が、それ程重要なことかと思われるかもしれないが、非常に重要な変更である。

 このことについて、私は、東京銀座、新橋等の高度商業地にあっては、更地の取引、自用の建物及びその敷地の建物の取引事例などない。あるのは貸家及びその敷地の取引ばかりである。貸家及びその敷地の取引事例の配分法土地価格の事例を認めるべきであると私は強く主張した。

 鑑定評価基準通りに事例を考えていたら、東京の高度商業地の土地の鑑定評価は出来なくなる。行えば鑑定評価基準違反の鑑定ということになる。

 現実には、更地の取引、自用の建物及びその敷地の取引事例など無いことから、貸家及びその敷地の取引事例から配分した土地価格の比較を行って土地価格を求めざるを得ない。

 一方、収益還元法では、賃料から貸家及びその敷地の価格を求めている。

 Jリートの鑑定評価に至っては、貸家及びその敷地の収益価格が鑑定評価額と発表されている。

 取引事例比較法では、土地取引事例として貸家及びその敷地の取引事例の採用を否定しながら、収益還元法では貸家及びその敷地の価格を採用している。

 この論理の矛盾をどうする積もりかと私は指摘して来た。

 他の2つは、賃料の評価の部分である。

 私は、地代は「家賃あっての地代」であるから、家賃より地代を求めるべきであると主張して来た。

 それが賃貸事業分析法という名称で公に認められることになった。

 もう1つは、利回り法の継続賃料利回りの求め方である。

 今迄の鑑定基準は、従前賃料合意時点の継続賃料利回りを「標準とし」であった。

 「標準とし」の場合、土地価格の変動がそのままストレートに継続賃料利回りに反映してしまい、地価上昇が激しい時は、地代が甚だ高く求められ、逆の場合は甚だ安く求められていた。

 地代の変動率と地価の変動率とは異なるのであるから、鑑定基準の考えは間違っていると、私は厳しく鑑定基準を批判して来た。

 改定基準は、「標準とし」を「踏まえて」に改定した。

 今回の賃料評価基準の改定で、賃料評価基準が万全な基準になったのではない。まだまだ改定すべき個所が多くある。それらについては、めげずに改定することを主張して行きたい。

 最後に、プログレスの野々内編集長には、原稿が約1年以上遅れたことを紙面を借りてお詫びしたい。

                                 平成28年10月10日東京府中の自宅にて


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