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1555)ゼンショーのもう1つの方向

 牛丼の「すき家」等を経営するゼンショーホールディング(以下「ゼンショー」と呼ぶ)は、群馬県にあるスーパーマーケットをM&Aすると、2016年10月19日の日本経済新聞夕刊は伝える。

 ゼンショーのホームページを訪れた。

 日経新聞の内容が、10月18日付でプレスリリースされていた。

 それによれば、群馬県で食品スーパーマーケット、惣菜店44店を展開する株式会社フジタコーポレーション(所在群馬県太田市 藤田勝好社長)の株式を、ゼンショーが100%取得するとリリースする。

 譲渡価格は、124億2900万円である。

 株式会社フジタコーポレーションが、群馬県で展開しているスーパーマーケットは、「フジマート」、「アバンセ」、「マルシェ」の店名であり、惣菜は「でりしゃす」という店名である。

 過去3年の売上高、営業利益は、下記である。

                              売上高百万円     営業利益百万円

      2014年3月期     23,217       276          2015年3月期     24,036       814          2016年3月期     25,342       860
 
 直近決算の営業利益率は、

                      8億6000万円
                 ───────── = 0.0339 ≒ 0.034            
                    253億4200万円

3.4%である。
  
 売上高に対する取得費の割合は、

                    124億2900万円
                 ────────  = 0.49                         
                    253億4200万円

0.49である。

 売上高の半値が取得費ということである。

 投下資本回転率は、

                    253億4200万円
                 ────────  = 2.04                         
                    124億2900万円

2.04である。

 鑑定コラム977)「ゼンショー牛丼店の投下資本回転率は2.0」で、すき家の出店の売上高と出店費用の間の投下資本回転率は、2.07と書いた。

 M&Aにおいても、ゼンショーは、その経営方針を貫いているようである。

 取得費は投下資本であるから、投下資本の回収年は、

                    124億2900万円
                 ────────  = 14.4                         
                      8億6000万円

約14年である。

 ゼンショーの2016年3月期の売上高は、5257億円である。
 有形固定資産、無形固定資産、投資で構成される固定資産額は、2135億円である。

 固定資産回転率は、
          
                   5257
                 ───  =2.46 ≒ 2.5                              
                   2135

2.5である。

 M&Aの取得費は投資であり、それは固定資産を形成する。

 上記で求められた固定資産回転率を用いて、取得費124億2900万円の妥当性を検討する。

 売上高124億2900万円を、ゼンショーの固定資産回転率の2.5で除すと、

                253億4200万円
               ───────   = 101億4000万円                   
                    2.5

投資額は、101億4000万円と計算される。

 124億2900万円の取得費は、

              124億2900万円
              ──────     = 1.226≒1.23                       
              101億4000万円

23%高い買い物ということになる。

 ゼンショーは5業種部門にまたがって事業経営している。

 牛丼、レストラン、フアーストフード、小売、その他の5部門である。

 売上高の占める割合は、

      牛丼       35.5%
      レストラン    25.0%
      フアーストフード 22.6%
      小売       11.7%
      その他       5.2%

である。

 牛丼、レストラン、フアーストフードの売上高は、それぞれの市場の天井付近に達したのか、一頃のごとくの売上高の伸びが無い。

 それに比し、小売の部門は、全体の売上高に占める割合は小さいが、売上高の伸びは著しい。小売業の売上高の推移は、下記である。

       2016年3月期       614億円
       2015年3月期      535億円
       2014年3月期       341億円

 他の部門の状況と小売業の状況を考えて、ゼンショーは、企業の生きる道の1つを小売に見出して、今回のスーパーマーケットの買収に踏みきり、小売部門を大きく育てようとしているのでは無かろうか。


  鑑定コラム1233)
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