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牛丼店の「すき家」に強盗が入ったと云うニュースを久しぶりに耳にした。
NHKの2015年10月12日のウエブニュース地方版によれば、茨城県の東海村にある「すき家東海店」で、同日午前4時半過ぎ、店員が従業員出入り口から外に出たところ、男2人に拳銃のようなものを突き付けられた。
「金を出せ」と脅され、金庫から現金約30万円を奪われ、犯人達は逃げたと伝える。
店には客はいなく、従業員の女性一人がいたが、男女従業員の二人には怪我は無かった。
今から4年前の2011年のすき家への強盗の多さは、凄まじかった。
年間発生件数82件である。強盗が伝染したごとくであった。
3月、9月にはそれぞれ14件発生している。ほぼ2日に1件、すき家は強盗に入られていた。
私は、あまりのすき家の強盗の多さに驚き、その事を鑑定コラムに記した。
鑑定コラム743)の「「すき家」強盗対策をしっかり行え !」(2011年3月10日発表)である。
警察の指導もあり、会社も対策を施し、現在は強盗の件数は、2011年の半分以下に減ったと聞くが、しかし2015年10月12日に強盗事件が発生しているごとく、ゼロ件数になったというわけでは無い。
すき家は、ゼンショーホールディングスが経営する柱の業種店舗である。
そのゼンショーホールディングスは、強盗対策として、どういう対策をしているのか、ゼンショーホールディングスの有価証券報告書を見てみた。
2015年3月期の有価証券報告書の「対処すべき課題」として、下記の5つ記述してある。
・MMDの進化
・出店及びM&Aによる成長
・ブランドの進化
・食の安全の追求
・「すき家」の労働環境の改善
「すき家」の労働環境の改善の中身は、
・長時間労働を禁止するルールの設定
・深夜帯における一人勤務体制の廃止
である。
強盗対策については、何も記述されていない。
従業員を強盗の被害に遭わせて、企業利益を追求しても良いという企業経営など無い。
強盗に遭遇した従業員の心理的恐怖心は、一生ぬぐいがたいものであろう。
そうした心的外傷を生じさせる企業経営など、企業経営として失格であろう。
社内的には、対策を取られていると思われるが、余り名誉な事でないから、有価証券報告書には載せてないのであろうか。
ゼンショーホールディングスの有価証券報告書を閲覧したのであるから、売上高の推移、家賃について分析してみる。
ゼンショーホールディングスの2011年3月期以降の売上高の推移は、下記である。
2011年3月 370,769百万円
2012年3月 402,962百万円
2013年3月 417,577百万円
2014年3月 468,377百万円
2015年3月 511,810百万円
もの凄い売上高の増加である。
これは、他の飲食店のM&A、即ち企業買収による結果である。
売上高増、規模拡大を手っ取り早く実現するには、既存企業をM&Aする手法が使われる。
資本の力による企業買収である。
グローバル企業が良く使う手法である。
国内で売上高、利益が限界に達すると、海外の企業を買収して、利益の拡大を行うことになる。
こうした企業経営が良いか悪いかは、私には判断しかねるが、資本のグローバル化も行き過ぎると、それは悪となり得るのでは無かろうかと私は思う。
ゼンショーホールディングスの2011年3月期以降の売上高は著しく伸びたが、経常利益は一時伸びたが、逆に大きく減少している。下記である。
2011年3月 15,791百万円
2012年3月 19,300百万円
2013年3月 13,873百万円
2014年3月 7,957百万円
2015年3月 2,875百万円
上記経常利益の増減を見ていると、不動産鑑定評価の不動産の価格に関する11の諸原則の中の、「収益逓増及び逓減の原則」が適用されるのではなかろうかと思いたくなる。
ゼンショーホールディングスは、飲食店の企業買収で大きくなったため、事業は4つのグループに分かれる。その店舗数、売上高等は、下記である。
2015年3月末現在の数値である。
(牛丼グループ)
店名 すき家、なか卯
店舗数 2,581店舗
売上高割合 33.9%
売上高 511,810百万円×0.339=173,504百万円
一店舗年額売上高 173,504百万円÷2,581=6722万円
一店舗月額売上高 6722万円÷12=560万円
一店舗一日売上高 6722万円÷365日=18.4万円
(レストラングループ)
店名 ジョリーパスタ、ココス、ビッグボーイ、ビクトリアステーション
店舗数 1,365店舗
売上高割合 29.7%
売上高 511,810百万円×0.297=152,008百万円
一店舗年額売上高 152,008百万円÷1,365=11,136万円
(ファーストフードグループ)
店名 はま寿司(回転寿司)、瀬戸うどん(うどん)、伝丸(ラーメン)
店舗数 682店舗
売上高割合 20.6%
売上高 511,810百万円×0.206=105,433百万円
一店舗年額売上高 105,433百万円÷682=15,459万円
(その他) 省略
強盗に奪われた金は、約30万円という。
すき家の一店舗の一日の売上高は、18.4万円である。
奪われた約30万円は、10月10日(土曜日)、11日(日曜日)の1日半か2日間の売上高ということか。
ゼンショーホールディングスの店舗は、殆どが賃借である。
地代家賃として、2015年3月期は、49,282百万円(492億8200万円)計上している。地代家賃の項目名称であるが、それは家賃である。
家賃は売上高に応じて配分して、一店舗当りの家賃を求める。下記である。
(牛丼グループ)
49,282百万円×0.339÷2,581店舗=647万円
一店舗月額家賃 647÷12=53.9万円
(レストラングループ)
49,282百万円×0.297÷1,365店舗=1,072万円
(ファーストフードグループ)
49,282百万円×0.206÷682店舗=1,489万円
売上高に占める家賃の割合を求める。
算式は、
年間家賃
─────── = 家賃割合
売上高
である。
牛丼のすき家の家賃割合は、
647万円
───────= 0.0963
6722万円
9.6%である。
ジョリーパスタ、ココスの家賃割合は、
1,072万円
───────= 0.0963
11,136万円
9.6%である。
回転寿司のはま家の家賃割合は、
1,489万円
───────= 0.0963
15,459万円
9.6%である。
私は、『Evaluation』創刊号p42(清文社 2000年8月1日発行)に、論文「売上高に対する家賃割合」を発表した。
その論文は、店舗売上高に対する家賃割合を論理的に算出し分析している。
その論文で発表された家賃割合の結果を、鑑定コラム18)及び鑑定コラム1012)に転載している。
飲食店の家賃割合は、
レストラン 11.1%
中華料理 10.4%
そばうどん 13.0%
鮨 10.7%
である。
売上高のほぼ10%が、飲食店の家賃と考えてよいと判断される。
分析した今回のすき家の家賃割合も、ほぼこの論文結果に近い割合である。
喫茶店も飲食店であるから、その家賃割合は、上記割合水準が妥当と私には判断される。
今から10年程前であったか、ある喫茶店の家賃の鑑定書を見せられたことがある。
売上高の28%の家賃であった。
この鑑定書家賃には、驚いた。
そんな鑑定書が、裁判所に提出され、賃料の求め方など何も知らない裁判官は、その金額が適正であると思い込んで判決してしまうのである。
誤審も甚だしい。喫茶店経営者はカンカンになって怒っていた。
それについては、鑑定コラム202)でコラム記事を書いた。
本コラム記事をほぼ書き終えて、試しにグーグルで「喫茶店の家賃」の言語で検索してみた。
検索時間0.19秒で約39万語がヒットしたと示された。
画面トップページの記事を目で追っていたところ、7番目に鑑定コラム202)「喫茶店の家賃が売上高の28%という鑑定書」の文字が飛び込んで来た。
これには、私はびっくりした。
「えっ! トップページの7番目に私のコラムが掲示されるの・・・・。」
と思わずつぶやいてしまった。
鑑定コラム743) 「「すき家」強盗対策をしっかり行え !」
鑑定コラム1233) 「たかが賃料、されど賃料」
鑑定コラム976) 「ゼンショーの店舗家賃は売上高の10%」
鑑定コラム977) 「ゼンショー牛丼店の投下資本回転率は2.0」
鑑定コラム18) 「店舗売上高と家賃割合」
鑑定コラム1012) 「店舗売上高と家賃割合の追加」
鑑定コラム202) 「喫茶店の家賃が売上高の28%という鑑定書」
鑑定コラム1462)「店舗の売上高に対する家賃割合の求め方」
鑑定コラム1555)「ゼンショーのもう1つの方向」
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