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1600)階層別効用配分割合

 10階建等のビルの建物の5階部分等の家賃を求める時には、そのビルの各階の効用から階層別効用配分割合を利用する。

 この求め方で求められた賃料を、積算賃料という。

 階層別効用配分割合は、積算賃料を求めるのに大変重要なものである。

 階層別効用配分割合とは、一棟のビルの全階層別効用に対する各階階層別効用の割合をいう。

 下記の算式である。

              階層別効用
          ─────────  = 当該階層の階層別効用配分割合      
              全階層別効用

 当該ビルの全効用のうちで、当該階層の効用はどれ程の割合を占めるかということである。

 階層別効用配分割合を求める元になる階層別効用とは、具体的にどういうものかと云えば、3階基準階の効用を100とした場合の、各階の効用評点を云う。

 1階の効用を100として求める場合もある。どちらの階を100としても結果は同じである。

 この効用評点を効用比と呼ぶ人もいる。

 では、その効用評点はどうして求めるかと云えば、それは各階の賃料が効用を現していると考え、賃料より評点を求める。

 実質賃料で求めるのが理論的であるが、便宜的に支払賃料で求めている。

 求め方は、下記である。

 各階の支払賃料を、次のとおりとする。

            1階    坪当り20,000円
            2階    坪当り14,000円
            3階    坪当り13,000円
            4階〜10階 坪当り13,000円

であったとする。

 3階の賃料を100とすると、1階の評点は、
 
                  20,000円
                ─────×100 ≒ 154                              
                  13,000円

154と求められる。

 同じ求め方で、2階は108、4階〜10階は100と求められる。

 上記をまとめると、各階の階層別効用評点は、次のごとくである。

            1階    154
            2階    108
            3階〜10階 100

 各階の効用評点を各階の賃貸面積に乗じて、各階の効用積(効用積評点)を求める。その効用積評点の合計を求める。

 その全体の効用積評点に占める各階の効用積評点の割合が、各階の階層別効用配分割合である。

 具体的な階層別効用配分割合を、下記に記す。


用途 建築面積 賃貸面積a 効用b 効用積a×b=c 階層別効用配分割合c/d
10 事務所 300 240 100 24000 0.09649
9 事務所 300 240 100 24000 0.09649
8 事務所 300 240 100 24000 0.09649
7 事務所 300 240 100 24000 0.09649
6 事務所 300 240 100 24000 0.09649
5 事務所 300 240 100 24000 0.09649
4 事務所 300 240 100 24000 0.09649
3 事務所 300 240 100 24000 0.09649
2 店舗 300 240 108 25920 0.10421
1 店舗 300 200 154 30800 0.12383
  3000 2360   248720 1
          d  


 上記表を説明する。

      賃貸面積a×効用b=効用積(c=a×b)

 効用積の総和を、dとする。

 各階の効用積cを、dで割ったのが、階層別効用配分割合である。

              c÷d=階層別効用配分割合

 例えば、5階の階層別効用配分割合は、ビルの全効用を100%とすると、その9.649%が、5階の効用配分割合ということである。

 この階層別効用配分割合を使用して、どの様に賃料を求めるのか。

 それを以下で、具体的に説明する。

 上記一棟ビルの月額賃料が800万円であるとする。

 1階の店舗の賃料は、

              800万円×0.12383≒99.1万円

である。u当り賃料は、4955円(991,000円÷200=4,955円)である。

 5階の事務所賃料は、

             800万円×0.09649≒77.2万円

である。u当り賃料は、3,217円(772,000円÷240=3,217円)である。

 求められた賃料の名称は、積算賃料と呼ばれるものである。

 積算賃料のほかに、周辺のビル賃料と各階個別に比較して求める賃料は、比準賃料と呼ばれる。

 賃料は、この2つの賃料を必ず求めなければならない。一つだけの賃料を求めて、その賃料は適正であるといくら主張しても、それを「ハイ、そうですか」と認めることは出来ない。

 「あなたは、積算賃料だけしか求めていない。

 積算賃料は、鑑定評価基準に則って求めているから適正であるとあなたは主張しています。

 鑑定評価は、市場性を反映する適正な価格及び賃料を求めるものです。

 積算賃料は、市場性を反映している賃料であると鑑定評価基準は書いていません。

 とすると,あなたの求めている積算賃料は、市場性を反映している適正な賃料であると云うことには、必ずしもなりません。

 市場性を反映していると云うことを担保するものが必要ではありませんか。

 それはこの鑑定書の中のどこにありますか。積算賃料以外の賃料の記述はありません。

 積算賃料が適正であると云うことを、担保する別の手法の賃料が無ければならないのではありませんか。

 適正を担保するものが無ければ、いくら適正と主張しても、それはあなたの一人よがりの考えでしょう。

 賃料は一つだけではない。もう1つの手法による賃料もあります。

 市場性を最も反映している比準賃料です。

 比準賃料を求めることによって、積算賃料の適正が担保されるのです。

 何故もう1つの手法の比準賃料を求めなかったのですか。求めると具合が悪かったために求めなかったのではありませんか。」

 相手側代理人弁護士に、この様に反論されても、なお、自分の求めた積算賃料が適正と主張するのであろうか。

 一つの賃料では、その賃料が適正であると云うことが証明出来ない。

 適正を証明するためには、別の手法による賃料が必要である。

 それ故に2つの手法の異なる賃料を求めなければならない。

 積算賃料の妥当性を、比準賃料が担保するということである。

 比準賃料の妥当性を、積算賃料が担保するということになる。


  鑑定コラム1603
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