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1.はじめに
新型コロナウイルスは、日本の人々の日常の社会生活習慣を変えさせ、そして各産業に多大な影響を及ぼしている。
その中で、外食産業及びホテル業界も売上高減という大きな影響を受けている。
パブレストラン・居酒屋の売上高減少率と京都ホテル客室稼働率を調べた結果、両者の数値に驚くべき酷似性を発見した。
それについて述べる。
数値・グラフ及び文章には、既発表鑑定コラムの記事内容の引用等を行っているため、重複があることをあらかじめ了承して頂きたい。
2.日本の新型コロナウイルス感染者数
2019年12月頃に中国武漢市で新型コロナウイルスの感染が見つかり、人口1千万人を超える武漢市の都市封鎖を中国政府は行った。
中国の春節の休暇を利用して、2020年1月に多くの中国人が観光客として日本を訪れた。
それと共に、新型コロナウイルスを日本に持ち込んだ。
2020年1月〜12月までの、日本の各月の新型コロナウイルス感染者数を求める。
NHK発表の新型コロナウイルス感染者数累計より下記のごとく求める。
例えば2020年10月の感染者数は、
10月の感染者数=10月末までの累計感染者数−9月末までの累計感染者数
=101,481人−83,737人
=17,744人
の算式で求める。
1月 17人
2月 225人
3月 1,992人
4月 12,187人
5月 2,477人
6月 1,865人
7月 17,651人
8月 32,129人
9月 15,194人
10月 17,744人
11月 47,504人
12月 86,884人
合計 235,869人
1月の感染者数は17人であった。12月86,884人である。1年間では235,869人の感染者となる。
総務省統計局の発表によれば、日本の人口は2020年8月1日時点で、1億2580万1千人(確定値)である。
感染者率は、
235,869人÷125,801,000人=0.00187=0.0019
0.0019である。%に換算すれば0.19%である。
累乗の指数をXとして、
17のX乗=235,869
の算式よりXを求めると、X=4.366431である。
感染者率0.19%と侮るなかれ。当初17人の感染者であったのが、1年間に感染者23.5万人余になったのである。
非常事態宣言とか営業時間の短縮等の対策を取った上の累乗指数4.36は、大変な数値である。
感染者の月別数をグラフに示すと、下図である。感染者数のピークが4ヶ月ごとにやってきている。
3.2020年パブレストラン・居酒屋の売上高減少率
鑑定コラム2214)「2020年のパブレストラン・居酒屋の売上高の大巾な減少」の記事において、一般社団法人日本フードサービス協会(会長赤塚保正 滑`安本店社長)が発表している同協会に所属している外食産業企業の売上高の対前年同月比割合について述べた。
その割合は下記である。
年月 対前年同月比売上高 %
2020年1月 101.0
2020年2月 94.5
2020年3月 56.7
2020年4月 8.6
2020年5月 10.0
2020年6月 39.9
2020年7月 47.2
2020年8月 41.0
2020年9月 51.1
2020年10月 63.7
2020年11月 57.2
2020年12月 39.1
上記数値をグラフにしたのが、下図である。
4.2020年京都ホテル客室稼働率
鑑定コラム2215)「新型コロナの影響が大きい2020年京都のホテル客室稼働率」の記事において、公益社団法人京都市観光協会が、「京都市観光協会データ月報(2020年12月)」で発表している京都ホテル客室稼働率について述べた。
その2020年の客室稼働率は下記である。
年月 客室稼働率 %
2020年1月 68.8
2020年2月 54.3
2020年3月 30.3
2020年4月 5.8
2020年5月 6.5
2020年6月 15.5
2020年7月 20.1
2020年8月 22.8
2020年9月 33.0
2020年10月 41.0
2020年11月 63.2
2020年12月 37.6
上記数値をグラフにしたのが、下図である。
5.パブ・居酒屋売上高減少率と京都ホテル客室稼働率のグラフの酷似
上記3の2020年パブレストラン・居酒屋の売上高減少率のグラフと、4の2020年京都ホテル客室稼働率のグラフをよく見ると4月・5月のデータ値が1月・2月のデータよりも大幅に下落し、一桁台の数値となっている。
パブレストラン・居酒屋の売上高減少率の数値を知った時、どうしてこの業種のみ大幅に下落しているのか不思議に思った。この業種は特別なのか。これほどの下落をする業種は外には無いであろうと思っていた。
しかし、京都ホテル客室稼働率の下落率を知って、パブレストラン・居酒屋の売上高減少率と同じく4月・5月が一桁台になっているのを知った。
試しにと思って、左側縦軸に京都ホテル客室稼働率をとり、右側縦軸にパブレストラン・居酒屋の売上高減少率を取って、グラフを重ねてみた。下記である。
2020年11月のデータに大きな差が生じたが、他の月のデータの重なり具合は驚く程酷似している。
2020年のパブレストラン・居酒屋の売上高減少率は特殊な現象、2020年京都ホテル客室稼働率は特殊な現象とそれぞれ単独で分析する時は思っていた。
しかし、その2つの特殊の現象と思っていたものが、全く異なる業種で生じているにもかかわらず、その現象が酷似しているということになると、それは特殊な現象と云うもので無くなる。
酷似を引き起こす何かがあると云うことになる。それは何か。
6.パブ・居酒屋売上高減少率と京都ホテル客室稼働率の相関関係
2020年のパブレストラン・居酒屋の売上高減少率と2020年京都ホテル客室稼働率は酷似する。その相関度を表す相関係数を求める。
データ値を再掲すれば、下記である。
年月 前年同月比売上高 % 京都ホテル客室稼働率 %
2020年1月 101.0 68.8
2020年2月 94.5 54.3
2020年3月 56.7 30.3
2020年4月 8.6 5.8
2020年5月 10.0 6.5
2020年6月 39.9 15.5
2020年7月 47.2 20.1
2020年8月 41.0 22.8
2020年9月 51.1 33.0
2020年10月 63.7 41.0
2020年11月 57.2 63.2
2020年12月 39.1 37.6
上記データをプロットすると下図である。
2020年パブレストラン・居酒屋対前年同月比売上高減少率をY、2020年京都ホテル客室稼働率をXとして、両者の両者の関係を求めると下記の関係式が求められる。
Y=12.22+1.16X
相関係数r:0.87
相関度を示す相関係数は0.87である。相関関係は高い。
7.まとめ
パブレストラン・居酒屋と京都のホテルとは、全く別の業種であり、類似性は無い。
そうであるにもかかわらず、新型コロナウイルス感染が、2020年のパブレストラン・居酒屋の売上高減少率と2020年京都ホテル客室稼働率とが酷似し、両者の相関度を示す相関係数が0.87と甚だ高いと云うことを教えてくれた。
利益・売上高は人が運んでくれるのであるが、新型コロナウイルス感染という事象が、両業種に利益・売上高を運んでくれる人々に、同じ様な心理影響を与えたようである。
パブレストラン・居酒屋、ホテルは不動産鑑定とは無縁では無い。深く関わっている。
パブレストラン・居酒屋の家賃の増減額の賃料評価、入居ビルの価格評価で不動産鑑定と深くつながりがある。私も多くの飲食店の家賃増減額訴訟に伴う賃料評価を行ってきた。
ホテルはホテルの売買に伴う価格評価、ホテルの家賃の増減額の賃料評価で不動産鑑定と深くつながりがある。私も飲食店の家賃評価ほどでは無いが、ホテルの評価も行ってきた。
そうしたこともあり、新型コロナウイルスによって痛めつけられている両業種の状況を分析していたところ、たまたまパブ・居酒屋売上高減少率と京都ホテル客室稼働率の酷似を発見した。
鑑定コラム2214)「2020年のパブレストラン・居酒屋の売上高の大巾な減少」
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