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2340) 国有地売却競争入札の年末広告

 2021年12月24日の日本経済新聞朝刊41面、スポーツ欄の最下段に、関東財務局による国有財産売却の一般競争入札の広告が掲載されていた。

 紙面最下段に縦巾10cm程度で横紙面全部を使った広告である。

 令和3年度の2回目の一般売却競争入札であり、入札期間は2022年1月20日から28日とある。

 入札の資料等の手続き委託業者は株式会社オオバと記されている。

 オオバは測量会社では無かったかと記憶している。区画整理事業等の測量会社と思っていたが、国有地の売払の業務も行い出しているようである。

 私の古い記憶では、国有地の売払手続き業務は、国土工営か勧業不動産が行っていたと記憶している。

 その事は、その会社の不動産鑑定士と何回も国有地の売払に伴う鑑定評価を「相鑑」として行ったためにその事を知った。それは私が開業する前で、開業する前のいわば鑑定評価修行の為に勤めていた鑑定事務所での話である。

 「相鑑」とは、1社だけの鑑定評価だけでなく、2社以上の不動産鑑定業者に鑑定を頼み、その依頼された不動産鑑定業者の事である。

 関東財務局のホームページを訪れ、今回の国有地売却の一般競争入札に供される物件案内を見ると、入札物件は83件である。競争入札物件は全て不動産鑑定士に拠って鑑定評価されている。

 又、昔の話をして申し分け無いが、昔は大蔵省(現財務省の前身)の各財務局の不動産鑑定の出来る鑑定業者は指定されていた。

 関東地区では、大蔵省の関東財務局が信頼出来る不動産鑑定業者にしか国有地の鑑定評価は頼まなかった、

 そして必ず2社若しくは3社鑑定であった。つまり「相鑑」の鑑定評価である。1社では鑑定価格に万一の間違いがある事を避ける為の役所の慎重な配慮であった。

 2社或いは3社の鑑定評価に大きな評価額の開きが生じた場合には、その理由の説明に呼び出され、その説明が納得されなければ再度の鑑定のやり直しがあった。

 令和3年度2回目の国有地の売払一般入札の物件は、関東甲信越の1都9県の地域に及んでいた。

 甲信越の売却物件所在都市は、下記である。

    山梨県  甲府市、山梨市、笛吹市
    長野県  岡谷市、飯田市、佐久市、辰野町
    新潟県  新潟市、南魚沼市
 売払国有地の大半は住宅地であるが、商業地(商業地域、近隣商業地域)の物件もある。

 商業地の物件を記すと下記である。u当り単価は、最低入札価格÷土地面積で求めた価格であり、田原の計算による。百円未満四捨五入。
        土浦市港町        179u   u当り 69,300円
        常総市水海道諏訪町        76.56u  u当り 17,200円
        ひたちなか市馬渡          186.93u  u当り 22,000円 
        矢板市末広町              1752.88u u当り 27,900円
        前橋市表町            745.76u  u当り 43,300円
 東京都内の地目宅地の物件は、下記の3件である。
  目黒区八雲3     647.44u 都立大学駅徒歩12分 u当り 786,200円
    北区西ケ原3     84.01u   西ケ原駅徒歩7分     u当り 142,800円
    小平市花小金井4 175.45u 花小金井駅         u当り 71,500円
 東京随一の繁華街、商業地である銀座4丁目の交差点から南東へ直線距離で約2.3kmにある東京都中央区晴海5丁目の土地の価格がu当り27,000円(区画ブロックの最低価格 平成28年4月1日時点)という鑑定評価がなされた。

 銀座4丁目交差点から2.3kmの土地価格が、目黒区八雲3丁目、北区西ケ原3丁目、小平市花小金井4丁目の住宅地の価格よりも安く、茨城県土浦市港町、群馬県前橋市表町の商業地の価格よりも安いようである。

 銀座4丁目交差点から2.3kmの土地価格は、茨城県ひたちなか市馬渡、栃木県矢板市末広町の価格程度ということの様らしい。

 東京都中央区晴海5丁目の東京オリンピック晴海選手村土地(都有地)が、近くに所在し、同一近隣地域にある東京都基準地価格がu当り895,000円(平成27年7月時点 中央−3)であるにもかかわらず、u当り27,000円(区画ブロックの最低価格 平成28年4月時点)で、オリンピック選手村を造るからと云って、不動産鑑定士によって鑑定評価された。





 裁判長は、その価格を「価格は適正」であると判決した。

 u当り27,000円と評価する不動産鑑定士もどうかしているし、それを適正と判断して判決する裁判官もどうかしており、都有地売却には都議会の承認が必要であるにもかかわらず、都議会の承認は必要なく地方自治法237条2項の適用は無く適正な土地売却価格であると主張する東京都もどうかしている。

 不動産は動かない、動かせない。人が不動産に働き掛ける事により不動産の土地利用による地域性が生じる。

 地域を形成する土地から得られる利益の多寡から、所有及び利用の競争が生じ、稀少性という要因が加わり経済価値が発生する。

 この発生した経済価値が土地価格という名称で市場で売買されるのである。これが土地価格発生のプロセスである。

 晴海選手村土地の経済価値は、u当り895,000円であると基準地価格がしっかりと証明している。栃木県矢板市末広町の価格程度の経済価値では無い。

 u当り27,000円と鑑定評価した不動産鑑定士、その価格が適正と判決した裁判官、その土地価格で土地売却する東京都の3者は、この事が全く分かっていない様である。全く分かっていないどころか、その知識そのものが欠落している。

 オリンピックに関係するならば、何をやっても許され、その様な知識は必要でないというものでは無かろう。

 その様な事が罷り通る日本であるならば、今後100年間、一切オリンピックなど日本で開催するなと云いたい。

 下記に関東財務局の令和3年度2回目の国有地一般競争入札の物件一覧表のアドレスを記す。

       http://www.kantou-baikyaku3.jp/land_list/02/index.asp


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