○鑑定コラム
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1.はじめに
このコラム章以前では、統計学を利用した確率論より、鑑定価格の出現率の分析によってA〜E街区の鑑定価格が妥当かどうか判断して来た。
その結果は、A〜E街区の鑑定価格は統計学上許される範囲で出現する価格では無いと立証された。
しかし、コラムを読む人の全てが、統計学の知識を持っている人では無い。
Z値3.5とか、出現率10万分のいくつとか、百兆分のいくつと云われても具体的にそれがどういうものか分からず、鑑定価格の不適切の実感が分からない方も多かったのでは無かろうかと思う。
この章では、統計学の確率出現率からの分析結果の補強も兼ねて、具体的な画地の減価要因の修正率の割合を使って、現実にA〜E街区の鑑定価格が有り得るか説明する。この方が具体的で分かり易いと思う。
具体的な画地の減価修正率は、公的評価で使用している減価修正率を利用して計算した方が、客観的で適正さが保たれることから、東京都の主税局が発表しているデータ数値を使用する。
2.東京都23区池沼の課税価格
平成28年度(平成28年4月1日〜平成29年3月31日)の東京都の土地固定資産税の価格は、『平成28年度東京都税務統計年報』によると、以下である。
地目 総面積u 総価格千円
宅地 315,630,452 115,037,919,700
池沼 55,248 2,008,045
総価格とは、課税土地の総価格である。
宅地の平均課税価格は、
115,037,919,700千円
──────────── = 364,470円
315,630,452u
である。
池沼の平均課税価格は、
2,008,045千円
──────────── = 36,346円
55,248u
である。
宅地課税平均価格に対する池沼土地の課税平均価格の割合は、
36,346円
───────= 0.10
364,470円
である。
3.東京ど真ん中区の17階建てマンション土地の都有地鑑定価格
東京ど真ん中区の15階〜17階建ての賃貸マンション土地(26,300.14u A街区)の鑑定評価格は、平成28年4月1日時点でu当り27,000円という不動産鑑定書がある。
この鑑定書は、土地取引事例との比較を行わず、かつ近隣地域に東京都基準地中央3(晴海5-1-9 住居表示 平成27年7月時点の価格は、u当り895,000円)を全く無視し、収益還元法の価格をベースにして開発法を行うという鑑定基準違反の評価を行っている。
その得られた価格u当り27,000円は、上記基準地価格u当り895,000円の3%の価格である。
この価格の出現確率は10のマイナス6乗の百万分のいくつである。
具体的にそれはどういう状態の価格かと云えば、池沼の課税価格がu当り36,346円であり、それ以下の価格である。
池沼に17階の建物を建てることが出来るであろうか。出来ないであろう。
そうした価格を不動産鑑定士の資格を持つ人が、適正な価格であると堂々と言い張っている。
池沼の課税価格以下の価格を、17階の賃貸マンションが建つ宅地価格としていては、こりゃだめであろう。それでも適正と言い張るのか。
4.東京都土地固定資産税評価基準
東京都の土地固定資産税評価基準で価格減額出来る要因とその割合の主なものは、下記である。中高層併用住宅の修正率である。標準規模画地に対する修正率である。
イ、奥行逓減 100メートル以上 0.8
ロ、無接道画地 0.6
ハ。不整形地 極端に不整形 0.55
ニ、崖地 急傾斜地 0.5
ホ、高圧線下地 0.5
へ、生産緑地 0.5
ト、地下障害物 10メートル未満 0.5
チ、広大地 13万〜14万u 0.85
リ、私道 0.1
ヌ、都市計画道路予定地 0.1
上記要因より、次の要因を選んで修正率を計算して見る。
奥行100m以上 0.8
不整形地 0.55
無接道画地 0.6
地下障害物 0.5
崖地 急傾斜地 0.5
広大地 0.85
0.8×0.55×0.6×0.5×0.5×0.85=0.0561
標準価格を東京都基準地価格中央3の平成27年7月の価格である895,000円とすると、
895,000円×0.0561=50,210円/u
u当り50,210円である。
上記悪要因を考えて求めても、A街区の鑑定価格u当り27,000円より高い価格が求められる。
A街区の土地は、極端な不整形土地では無い。無接道画地では無い。地下障害物がある土地では無い。崖地 急傾斜地ではない。そのA街区の土地価格が、それら極端な不整形土地の要因とか無接道の要因等を持つ土地価格よりも安い価格であると云うことは、甚だおかしいでは無いか。
A街区の鑑定価格u当り27,000円は異常の安さである。出現確率百万分のいくつの価格が、どういう価格であるかと云うことが、上記具体的減価要因によって求められる価格を知れば、その様な価格であると分かろう。実現性の全く無い価格である。
再度云う。こりゃダメだ。
上記土地価格減価の要因の中に「世界規模の行事に伴う施設用地」の要因など入っていない。
世界規模の行事に伴う施設をつくるからといって土地価格が安くなるというものではない。
前にも述べたが、代々木の国立競技場の土地は、東京オリンピックが開かれる主競技場であるが、その土地価格が東京オリンピックが開かれると云って値上りしたのか。競技場を新しくしなければならなく、工事費がかかるからと云って土地価格が下落したのか。
その要因によって土地価格は変わっていない。
晴海のA・B・C・D・E街区の土地価格では、世界規模の行事に伴う施設をつくるからといって土地価格が安くなるという事は、おかしいではないか。論理が合わない。
5.B・C・D・E街区の土地鑑定価格
@ 街区の配置と土地鑑定価格
A・B・C・D・E街区の概略配置と、その土地の鑑定価格は、下記である。
図は概略である。
A B・C・D・E街区の鑑定価格
東京都基準地価格中央3(895,000円/u 平成27年7月)に対する各街区の鑑定価格の割合は、下記である。
B街区 49,600円÷895,000円=0.055
C街区 108,000円÷895,000円=0.121
D街区 77,300円÷895,000円=0.086
E街区 83,700円÷895,000円=0.094
前記A街区の悪要因のうち不整形要因、地下障害物を除いた要因の計算をすると、下記である。
奥行100m以上 0.8
無接道画地 0.6
崖地 急傾斜地 0.5
広大地 0.85
0.8×0.6×0.5×0.85=0.204
895,000円×0.204=182,580円/u
u当り182,580円である。
B・C・D・E街区の画地は、無接道画地では無い、崖地 急傾斜地では無い。それにも係わらず、無接道画地、崖地 急傾斜地の要因修正した価格よりも安い。
このことからB・C・D・E街区の画地は論理性など全く無く、デタラメな価格であるということなる。
6. まとめ
A街区の価格もデタラメ。
B・C・D・E街区の価格もデタラメ。
全ての街区の価格がデタラメである。こりゃ、ダメだ。
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