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今から45年以上前の1960年頃であったか。
私が高校生の頃、ジェームス・ディーンの「ジャイアンツ」という米映画を見た。
その映画はアメリカの西部テキサスが牧畜業の大牧場の土地より石油産出の大地に変わろうとする時代を描いた映画である。大きな時代の流れの変化の局面を捉え、それをジェームス・ディーンを起用して見事に描ききったジョージ・スチーブンスという人はすばらしい監督と思う。
私が見た映画の中で最高と思っている「エデンの東」でデビューしたジェームス・ディーンの3作目の作品である。
若い青年が石油を掘り当て、原油が地中から空高く噴き上がる下で、おびただしく降り注ぐ真っ黒な原油の雨に打たれて、狂気のごとく飛び跳ね喜ぶディーンの姿が目に焼き付いている。
そのテーマ音楽を今も時々口ずさんでいる。
その映画の中で、時代が変わりつつあることの自覚をかたくなに拒否するロック・ハドソン演じる白人の大牧場主が、家族を連れて郊外にあるレストランに入るシーンがある。
レストランの主人は、南米系の人々が店に入って来てテーブルの席に座ろうとした時、入店を拒否し追い出そうとした。
親族に初めて南米系を迎えることになった大牧場主は、その光景を見て激怒し、レストランの主人に鉄拳を食らわせるシーンがあった。
人種問題を監督ジョージ・スチーブンスは描こうとしていた。そのことは充分理解出来たが、身内に初めて南米系を迎えることになって、人種差別を他人ごとでは無いと自覚した大牧場主の鉄拳シーンと同時に、私の脳裏に強く残っているのが、その場所となった郊外にある駐車場付のファミリーレストランとその内部のテーブルの配置や内装の状況であった。
アメリカの郊外にあるレストランというものがどういうものか、「ジャイアンツ」という映画で初めて知った。
その頃の日本には見られなかった郊外レストランというものに目を見張った。
そしておよそ10年後、東京の府中という町に住むことになり、中央高速自動車道路の府中インターチェンジに近い甲州街道沿に、新しく出来た駐車場付のフアミリーレストランというものに初めて入った。
それは昭和45年(1970年)頃だったか。
真新しいレストランの中に入って内装、テーブルの造り配置を見て驚いた。
米映画「ジャイアンツ」で大牧場主が人種差別に怒り、レストランの主人を殴りつけたレストランシーンが即座に思い浮かばれた。
「これはあの「ジャイアンツ」で見た、あのアメリカのフアミリーレストランではないのか。
日本にもアメリカの郊外フアミリーレストランが登場したのか」と。
その店は「すかいらーく」という名のレストランの国立店であった。
その後うわさで知ったが、その店は「すかいらーく」の第1号店という。
すかいらーくが小僧寿し本部の株式の30.04%を35億円で取得すると発表した。(2005年9月28日 鰍キかいらーくHPプレスリリース、 鰹ャ僧寿し本部HPプレスリリース)
小僧寿し本部の決算書によれば、平成16年12月期の売上高等は次の通りである。
売上高 26,405,590千円
売上原価 13,253,631千円
販売一般管理費 12,744,905千円
営業利益 407,053千円
営業利益率は、
407,053千円÷26,405,590千円≒1.5%
である。
営業利益率1.5%の企業の株式30%の売買価格が35億円である。
投下資本利益率は、
(4.07億円×0.3004)÷35億円≒0.035
3.5%である。
投下資本の回収年数は、
1÷0.035≒29年
29年である。
投下資本の回収に29年を要する企業買収を、通常の企業経営者は行うであろうか。
まずその様なことを行わない。
企業買収して投下資本を回収する年数は、飲食店で5〜7年であろう。7年として、
1÷7≒0.143
営業利益率14.3%を考えて企業買収するのでは無かろうか。
小僧寿し本部の営業利益率は1.5%であるから、10分の1の利益率である。
この様に考えると、すかいらーくが小僧寿し本部の株式の30.04%を買収するのに35億円の値段を付けたのは、別の計算要因があるのでは無かろうかと思われる。
私の勝手な推測で、以下にすかいらーくの小僧寿し本部株式30.04%の買収価格35億円を要因分析してみる。
小僧寿し本部の売上高等は上記した。同社の貸借対照表の資産の部で、確実に資産として価値のあるものとして次のものが見受けられる。
建物 2,453,120千円
土地 3,518,840千円
長期貸付金 1,174,161千円
敷金保証金 2,129,375千円
土地建物の価格は時価評価されていると考える。
長期貸付金は全額返却されるという保証は無い。50%の焦げ付きがあると考えると、
1,174,161千円×0.5=587,080千円
となる。
敷金保証金は店舗進出の時、土地所有権者に店舗の建物建設資金として提供するもの、或いは店舗を賃借する場合に賃貸人に差し入れるものであり、店舗賃貸借契約が終了した時には、小僧寿し本部に返却される金額であり、これは100%回収される金額である。
以上の金額を合計すると、8,688,415千円である。
これの30.04%は、
8,688,415千円×0.3004≒2,610,000千円
である。
上記金額は最悪を考えた場合の資産価値である。
しかし、現在は何も最悪の状況では無い。営業利益は少ないが、企業経営が続行中である。この要因の価値を考える必要がある。
営業利益による価格は、
(407,053千円×0.3004)÷0.143≒855,000千円
である。
両価格を合計すると、
26.1億円+8.55億円=34.65億円≒34.7億円
である。売買価格35億円にほぼ近い価格が求められた。
土地建物の価格、保証金、貸付金という企業資産として確実性のあるものの価値から、すかいらーくの小僧寿し本部の企業買収価格35億円を、不動産鑑定の立場から分析すると上記のごとく分析説明出来る。
すかいらーくが、上記のごとく考え方で35億円の売買価格を決めたということは全く無いであろう。
購入者は購入者としての全く別の観点より、購入価格を決定している可能性が高いことから、上記の価格説明は私の勝手な独自の判断によるものであることを断っておく。
すかいらーくについては鑑定コラムに下記の記事があります。
鑑定コラム267)「すかいらーくがファミリーレストランを買収」
米映画「ジャイアンツ」についての関連した記事は、下記にあります。
鑑定コラム504)「読売「編集手帳」も米映画『ジャイアンツ』のシーンを」
鑑定コラム1237)「国立(くにたち)現象」
鑑定コラム1822)「すかいらーく1号店は国立店」
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