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1237)国立(くにたち)現象

 JR東日本が、運営する鉄道の平成25年度(2013年度)の各駅の一日当りの乗車人数を発表した。

 新宿駅の乗車人数は、751,018人という。

 新宿駅はJR山手線、中央線のほかに、2つの私鉄、2つの地下鉄が乗り入れている。

 「新宿駅の一日の利用者が75万人と云うことは無いだろう。
 そんなに少なくは無い。
 200万人ぐらいいるのではないのか。」

と私は思った。

 75万人では無いであろうと思っていたが、それは乗車する人の数であって、降車する人の数は入っていないという。

 加えて、JR駅のみで新宿駅に乗り入れている京王電鉄、小田急電鉄、東京メトロ、都営地下鉄の利用者は数に入っていないようである。

 乗車する人のみであれば、乗った人は必ず降りるのであるから、倍の人数が駅利用者と云うことになる。

 JR中央線の2013年の乗車人数と、10年前の2003年(平成15年)の人数を比較してみた。下記である。


駅名 2013年度 2003年度 増減
東京 415908 369025 46883
神田 97589 107156 -9567
御茶ノ水 104737 111870 -7133
水道橋 85320 87233 -1913
飯田橋 91196 88453 2743
市ヶ谷 58900 58551 349
四ツ谷 92431 86505 5926
信濃町 26908 27410 -502
千駄ヶ谷 20444 22508 -2064
代々木 70016 66650 3366
新宿 751018 746293 4725
大久保 24775 25261 -486
東中野 39554 39143 411
中野 138467 114459 24008
高円寺 49236 49450 -214
阿佐ヶ谷 44298 44204 94
荻窪 86032 82953 3079
西荻窪 42402 40740 1662
吉祥寺 139282 139209 73
三鷹 92724 84410 8314
武蔵境 65331 58717 6614
東小金井 28908 27830 1078
武蔵小金井 59504 55281 4223
国分寺 108819 103226 5593
西国分寺 28394 22471 5923
国立 53237 55245 -2008
立川 160411 145697 14714
日野 28651 26291 2360
豊田 30910 31427 -517
八王子 85191 81273 3918
合計 3120593 2998941 121652


 ここで妙なことに気づいた。

 中央線全体では、10年間に12.1万人増えているのに、10年間で乗車人数が減っている駅がある。

 23区では、神田、お茶の水、水道橋、信濃町、千駄ヶ谷、大久保、高円寺の各駅である。

 都下の市部では、国立、豊田の2駅である。

 神田、お茶の水駅は、都心の空洞化によるものか。

 水道橋は、東京ドーム、後楽園遊園地の最寄り駅である。
 プロ野球読売巨人軍の低迷が影響しているのであろうか。
 
 信濃町、千駄ヶ谷駅は、国立競技場、神宮球場の最寄り駅である。
 国立競技場で開かれる競技大会の来場者減そしてプロ野球ヤクルトスワローズの低迷が原因しているのか。

 大久保、高円寺駅の減少は、駅勢圏地域の減退と云う要因と思われるが、減少人数が少ないから検討しないことにする。

 豊田駅は駅近くにあった富士電機東京工場の大幅縮小が影響しているものと思われる。

 疑問に思われるのが、国立(くにたち)駅の2,008人の減少である。
 一日平均2,000人強の減少数である。

 国立市は、工業地の街でも無く、商業地の街でもない。住宅地の街である。
 学園都市とも云われている。

 国立駅近くには、一橋大学を筆頭にして国立音大、桐朋学園、都立国立高校等の大学、高校がある。

 住宅地の市街は、国立駅を頂点にして、放射線状に幹線道路が広がり、画地の敷地面積は大きく、東京西の郊外の田園調布住宅地といわれる区画整然とした良好な高級住宅地である。

 大学、高校が移転したと云う話は聞かない。

 国立駅利用の大規模施設と云えば、国立駅北方にある旧国鉄のリニア鉄道を研究している鉄道総合研究所もその一つであるが、これが移転したとは聞かない。

 どういう理由で、一日2000人もの乗車人数が減少したのであろうか。

 国立市の人口、世帯数は減っているのであろうか。

 国立市の人口、世帯数を、同市の発表している統計表から調べて見た。下記である。

                                 世帯数                人口

   平成15年(2003年) 32,631世帯      71,942人    平成25年(2013年) 35,418世帯      74,566人

 10年間で、世帯数は2,787世帯増えている。増加率8.5%である。
 人口は、2,624人増えている。増加率は3.6%である。

 世帯数、人口ともに増加している。

 それなのに国立駅の乗車人数は減っている。

 同じ中央線の国立駅を挟んで、東隣の西国分寺駅、西隣の立川駅は、それぞれ5,923人、14,714人も増加している。

 乗車人数が減っているということは、駅利用者数が減っているということである。

 自動車利用に流れたという見方もあると思われるが、それ以上に考えられる理由は、国立駅を利用する勤め人が減り、駅利用の必要性が無くなったという仮説である。

 その仮説の中で、新しく駅が出来て、国立駅利用者がそちらに流れたと云う考えもある。

 国立市の南部を、JR南武線が走っている。
 立川〜川崎を結ぶ鉄道である。

 その沿線に「西府」という駅が、2009年3月に、府中市の西のはずれ西府地区内に出来た。
 国立駅の南東約3.3kmの距離にある。

 府中市にある分倍河原駅と、国立市にある谷保駅の真ん中辺りに出来た新駅である。

 この新駅に、国立駅利用者が流れたのではないかという推測も成り立つ。

 しかし、国立市内に住んでいる人の南武線利用者は、矢川、谷保駅周辺の人が立川、川崎・横浜方面に行こうとするために、あるいは国立市内に住んでいる人が、川崎・横浜方面に行くのに利用するのであり、新宿・東京駅方向に行く人々はまず利用しない。国立駅を利用する。

 西府駅が出来て利便性が良くなった人々は、府中市の西府地区の人々と、日本電気府中工場に勤務する人々である。

 西府駅が、国立駅より一日2000人の乗車人数を奪ったとは考えにくい。

 国立駅利用者の減少は、国立市に住んで居て、今迄中央線の国立駅を利用して他市に出て行っていたが、ある理由によってその必要性が無くなった人々が増えたと云うことではないであろうか。

 そういう人々はどういう人かと云えば、他市にある会社・勤め先を定年退職して、国立の自宅に一日中いる60歳以上の人々である。

 そうした定年退職した60歳以上の高齢者が、国立市民として、ここ10年で甚だ増えたのではなかろうか。
 その仮説を証明するために、国立市の人口統計の年齢別人口を調べて見た。 下記である。単位人。

                                平成15年         平成25年

    60〜65歳未満       3,850      4,954      65〜70歳未満       3,744      4,137      70〜75歳未満       3,065      3,489      75〜80歳未満       2,139      3,156      80〜85歳未満       1,224      2,353      85〜90歳未満        693      1,322      90歳以上          373  657 計 15,088 20,068

 国立市の60歳以上の人口が、

          平成15年     15,088人
          平成25年     20,068人

と、10年間で4,980人増加している。

 夫婦二人が共に60歳以上で、夫が会社勤務の定年で自宅に居ることになったとすれば、

        4,980÷2=2,490

2,490人と云うことになる。

 2,490人全員が、国立駅を毎日利用する人であったということはあり得ない。
 このうちの2,000人が国立駅を毎日利用していた会社勤めの人々であったとすれば、国立駅の一日2,000人の減少は合理的に説明出来る。

 人口に占める60歳以上の割合は、平成15年は、

                   15,088人
               ─────── = 0.210                             
                   71,942人

21.0%である。

 平成25年は、

                   20,068人
               ─────── = 0.269                             
                   74,566人

26.9%である。

 市民に占める60歳以上の割合が、

              平成15年    21.0%
              平成25年    26.9%

である。

 10年間の市内人口の増加率は、3.6%であるが、60歳以上の高齢化の増加率は、

                  20,068
               ─────  = 1.33                                 
                  15,088

33%である。

 市民の高齢化がはっきりと進んでいる。
 市民の1/4が60歳以上である。

 国立駅の乗車人数の減少の大きな原因は、この60歳以上の市民の増加が原因しているのでは無かろうかと私は思う。

 中野駅の乗車人数の大幅増加は、昨年2つの私立大学の中野キャンパスが、中野駅の北側近くに出来たことによるものと思われる。


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