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鑑定コラム2412)で、店舗賃料と日本銀行が発表している店舗賃料指数の間に相関関係が見られるか分析して見たが、両者の間には密接な相関関係は認められなかった。
それはおかしいと思い別の検討として、事務所賃料と日本銀行が発表している店舗賃料指数の間に相関関係が見られるか分析して見る。
事務所賃料のデータは不動産仲介、不動産情報提供会社である三幸エステートの調査・発表している東京都心5区の2000年から2021年までの各年6月賃料とする。坪当り円である。
都心5区とは、東京都千代田区、中央区、港区、渋谷区、新宿区、の5区を云う。その5区は日本の事務所賃料のリーデング地域と目される。
店舗賃料指数は、日本銀行が企業向けサービス価格調査の一環の中で発表している店舗賃料指数とする。
店舗賃料指数は各年6月とする。
データ一覧は、下記である。
年月
|
東京都心5区事務所賃料 円/坪 三幸エステート
|
日本銀行店舗賃料指数 2015年=100
|
2000年6月
|
16985
|
102.7
|
2001年6月
|
16987
|
103.2
|
2002年6月
|
16895
|
103.2
|
2003年6月
|
16900
|
102.9
|
2004年6月
|
16388
|
102.8
|
2005年6月
|
16102
|
103.2
|
2006年6月
|
16457
|
102.4
|
2007年6月
|
17519
|
101.9
|
2008年6月
|
18918
|
101.3
|
2009年6月
|
18224
|
100.2
|
2010年6月
|
16531
|
98.8
|
2011年6月
|
15588
|
98.4
|
2012年6月
|
15171
|
97.1
|
2013年6月
|
14646
|
96.9
|
2014年6月
|
14663
|
99.6
|
2015年6月
|
15062
|
99.0
|
2016年6月
|
15100
|
99.0
|
2017年6月
|
16520
|
98.7
|
2018年6月
|
17452
|
99.4
|
2019年6月
|
18699
|
99.6
|
2020年6月
|
20000
|
94.6
|
2021年6月
|
19879
|
96.3
|
上記データを、左側縦軸に都心5区事務所賃料(円/坪)、右側縦軸に日銀店舗賃料指数(2015年=100)を取って図示したグラフが下図である。
上図を見て、都心5区事務所賃料と日銀店舗指数との間に強い相関関係があると読み取れるであろうか。
事務所賃料の2008年の山は、不動産ファンドバブルによる事務所賃料の上昇である。リーマン・ブラザーズの倒産で一気に不景気に成り事務所賃料は下落した。
事務所賃料の2020年の山は、リートバブルによる好景気による賃料の上昇である。
日銀店舗指数は、事務所賃料の上記動きと全く連動が見られない。特に2000年〜2008年の間は、真逆の動きをしている。
事務所賃料のリートバブルの山は、不動産ファンドバブルの山より高いが、日銀店舗賃料指数は、その様になっていない。
都心5区事務所賃料と日銀店舗賃料指数との間に強い相関関係があるとは認めがたい。
縦軸に都心5区事務所賃料、横軸に日銀店舗賃料指数を取り、上記データをプロットすると、下記の図である。
都心5区事務所賃料と日銀店舗賃料指数のプロットの点は、散在し、傾向がはっきりと認められる散布図で無い。両者の間に強い相関関係があるとは認められない。
日銀店舗賃料指数は、都心5区事務所賃料との間に相関関係は殆ど無いことは、上記分析で分かった。
鑑定コラム2412)の「店舗賃料と日銀店舗賃料指数との関係」において、一般社団法人日本ショッピングセンター協会が発表している中心地域物販賃料の賃料と、日銀店舗賃料指数との関係を分析した。
その結果、日本ショッピングセンター協会が発表している中心地域物販賃料と、日銀の店舗賃料とは、殆ど相関関係が無いと分かった。
日本ショッピングセンター協会が発表している中心地域物販賃料は、店舗の賃料である。日本全国に同協会員の企業の店舗はある。
その店舗の賃料の傾向が、日銀発表の店舗賃料指数の傾向とは異なっており、殆ど相関関係が認められないと云うことになると、一体日銀店舗賃料指数は、どの様な店舗の賃料をターゲットにして作成されているのであろうか。
店舗賃料と云っても小売店舗と飲食店によっても単価は異なる。大都市の店舗賃料と、小都市の店舗の賃料では単価は異なる。中心部にある店舗と郊外にある店舗では単価が異なる。店舗の規模によっても単価は異なる。ショッピングセンターの中にある店舗と、ショッピングセンターの中に入っていない店舗では単価が異なる。1階店舗と2階等上階の店舗の単価は大きく異なる。
日本銀行が発表している店舗賃料指数は、どの店舗の賃料指数なのか。
分析した日本ショッピングセンター協会所属の大都市、中都市A・B・C、小都市A・Bの中心地域にある物販店舗の賃料を主ターゲットにして算出された賃料指数で無いことは、分析して相関関係がはっきりと認められないことからわかった。
日銀発表の店舗賃料指数は、どういう店舗の賃料の場合に適用出来るのか。日本銀行は適用店舗の種類、地域等を発表してくれないであろうか。
どの様なデータを使用して、二次加工、三次加工されて作られた合成関数によって店舗賃料指数値が求められているか知らないが、現実の店舗賃料推移と全く乖離した店舗賃料指数では、利用することが困難である。
現実の店舗賃料推移を説明出来る店舗賃料指数であることを望む。
鑑定コラム2412)「店舗賃料と日銀店舗賃料指数との関係」
鑑定コラム2411)「店舗賃料の評価でスライド法に消費者物価指数を使うことは妥当か」
鑑定コラム2410)「事務所賃料の評価でスライド法に消費者物価指数を使うことは妥当か」
鑑定コラム2416)「日本銀行事務所賃料指数・東京圏とSC店舗賃料の関係」
鑑定コラム2417)「日本銀行事務所賃料指数・東京圏と都心5区事務所賃料の関係」
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