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2717) 日銀マイナス金利政策大転換についての4大新聞の社説

 日本銀行の金融の超超緩和政策をやめるという政策転換については、鑑定コラム2710)で記した。

 この政策転換は重要なことであり、日本の新聞はどの様に報じたか、後日への記録として残しておくことが必要と思われ、4大新聞の社説の要点を記す。

 いずれもウエブによるものであり、日本経済新聞を除き、2024年3月20日のウエブ掲載のものである。日本経済新聞は3月19日20:00のウエブ掲載のものである。

 金融の超超緩和政策の経緯をいずれの新聞社説も記述しているが、その部分は省略する。

1.朝日新聞

 朝日新聞の社説は、「「異次元緩和」の終結 物価安定実現への責務確認を」の表題で、「11年間の功罪率直に」、「「2%」の意義説明を」の小表題をつけて、日銀の超超金融緩和の政策転換について述べる。

 「11年間の功罪率直に」の小表題では、以下のごとく述べる。

 「「異次元緩和で人々の先行き予想が変わり、物価目標が達成できる」という当初の触れ込みは見込み違いだったということだ。最近の物価意識の変化も、海外発のインフレという「外圧」が起点になった。

 相次いで導入してきた「非伝統的」な緩和手法は、デフレ脱却に向けた試行錯誤ではあっただろう。だが、円安が急進した一昨年秋に緩和手法の維持に固執するなど、過去の判断が無謬(むびゅう)であるかのように振る舞い、柔軟性を欠く局面もあった。」

 超超金融緩和で2%のインフレ政策は見込み違いであったと指摘し、その判断を、日本銀行は無謬性のごとく振る舞う姿勢を批判する。

 「2%」の意義説明を」の小表題では、2%のインフレ政策は失敗であったにも係わらず、植田日銀が25年度にかけて「2%目標」が実現すると云う事に関して以下のごとく述べる。

 「経済の局面変化を説明しようとする姿勢自体は望ましいが、どこまで期待できる動きなのか。十分に分析し、国民に分かりやすく示すべきだ。」

2.読売新聞

 読売新聞社説は、「金融緩和策転換 経済好循環への環境が整った」の表題で、日銀に超超金融政策について、功罪を述べる。

 功については、下記のごとく記す。

 「日銀は、13年春に就任した黒田東彦前総裁のもとで、大量に国債を買い入れる異次元の金融緩和策を始めた。それにより、過度な円高は是正され、企業業績の改善が株価の上昇につながった。

 日本経済に一定の安定をもたらす効果があったと評価できる。」

 罪については、下記のごとく記す。

 「2%の物価上昇率を2年程度で達成する当初の目標は達成できず、16年にはマイナス金利政策やYCCを相次いで導入するなど、金融緩和は長期化した。

 それに伴い、副作用が表面化した。超低金利で金融機関の収益が悪化したほか、日銀が多くの国債を買い入れることで、国債市場は機能不全に陥った。」

 今後の日銀政策について、「日銀は金融市場に混乱が生じないよう、警戒を怠らないようにしてもらいたい。」と、当然な事を社説は記す。そして今迄の金融の超超緩和の恩恵を受けてきた財政に対して、財政の健全化を指摘し、下記のごとく記す。

 「金利が上がれば、国の財政運営にも影響する。国債の利払い費の増加が避けられないためだ。

 日銀の金融緩和策は利払い費を抑えてきた。それが国の財政規律を緩めたことも緩和策の副作用の一つだと指摘される。コロナ対策で政府は巨額の財政出動を行い、国債など国の借金残高は22年度末に1270兆円まで膨らんだ。

 長期金利の上昇により、既に24年度当初予算案で、利払いなどに充てる国債費は過去最大になっている。財政の健全化が、これまで以上に重要になったことを、政府は強く認識せねばならない。」

3.毎日新聞

 毎日新聞は、「異次元緩和の転換 国・企業はぬるま湯脱却を」の社説表題を掲げて、日銀の超超金融緩和政策について、下記のごとく述べる。

 「政策転換そのものは妥当だ。

 ただし、現在の物価上昇はエネルギー価格の高止まりなど海外要因によるところが大きく、異次元緩和の効果とは言い切れない。」

 現在の物価上昇は、日銀の2%上昇目標の政策によるもので無く、「エネルギー価格の高止まりなど海外要因による」ものとはっきりと明言する。

 つまり、日銀の超超金融緩和政策は失敗であると云うことを指摘しているのである。

 今後については、下記のごとく記す。

 「預金者にとってはプラスとなる半面、住宅ローンや貸出金利の引き上げは負担増に直結し、景気の下押し要因ともなりかねない。

 日銀が期待する物価高が実現しても、負担増に耐えきれない人が続出するような状況は避けなければならない。政府は家計や企業の「痛み」にも配慮し、格差を是正する政策に力を入れるべきだ。

 「金利ある世界」では国の財政規律を含め、日本経済の真の実力が問われることになる。経済・社会全体が長期低迷から脱する機会とする必要がある。」

4.日本経済新聞

 日本経済新聞の社説については、鑑定コラム2710)で記した。コラム記事から転載する。

 日本経済新聞は、「「異次元緩和」脱却を成長の好機に」の表題で、日銀の政策は「国民生活を苦しめた」と下記のごとく述べる。

 「黒田東彦前総裁のもと2013年に始まった異次元緩和は「2年で2%の物価上昇」を目標に未曾有の規模国債を買い上げる非常時の対応だった。当初は円安や株価が景気を押し上げたが、目標は2%では果たせず、その後はマイナス金利やYCC(イールドカーブ・コントロール)へと変遷した。

 近年は強引な新発国債の買い集めが金利体系をゆがめ、一時は企業の資金援助に支障が生じた。円安も加速し、物価高に拍車がかかって国民生活を苦しめた。」

 そして、結論として、日銀の金融超超緩和政策は失敗であったと、次のごとく記す。

「異次元緩和の教訓は、金融政策だけで経済を復活させるのは難しいという事実だ」


  鑑定コラム2710)
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