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39)河口湖のラベンダー満開

 2002年7月に入って早々、不動産鑑定評価で引き立てていただいた人の葬儀の帰りに、河口湖に寄って来た。

 河口湖ハーブフェスティバルの真っただ中にあった。

 河口湖町や関係者が10余年かけて育ててきたラべンダーの紫の花は満開であった。

 風が吹く度に花は静かに揺れ、ラベンダーの匂いがただよって来ていた。

 北海道の富良野の「ファーム富田」や日の出公園のラベンダー畑の規模には及ばないが、河口湖畔のラベンダーも見事な景観を呈する様になってきた。

 観光バスがひっきり無しに到着し、そして出てゆく。駐車場にはバスが20台ほど駐車していた。自家用車も多く来ていた。人、人、人である。今まさにラベンダーの旬であった。

 仮設テントの売店前は、ラベンダーを堪能した人々が群がっていた。
 店はラベンダーを材料にした香水、香料、ドライフラワー、石鹸、入浴剤、ソフトアイスクリーム、菓子、ケーキ等ラベンダー商品のオンパレードである。
 100人を越す人が働いているのであろうか。
 河口湖の町興しは見事に成功した。

 日本にラベンダーを根付かせ、普及させ、ハーブ産業を大きく育て拡大させた「ファーム富田」の50年に渡る富田忠雄氏の功績は非常に大きいと思わざるを得ない。

 ラベンダーの紫の群の美しさを私に初めて知らせてくれ、20年余の長きに渡り富良野から、美しい風景と冬の厳しい吹雪の中で生きる人の優しさ、暖かさ、人生の厳しさを伝えてくれた倉本聰の「北の国から」のテレビドラマも、今年9月に最終回という。

 ドラマを期待する一方、さだまさしの作曲のもの悲しくハミングの良くあうテーマ曲のドラマが見られなくなるのも寂しい。
                          * 
 亡くなった人は、不動産鑑定評価に対して厳しい見方をし、不動産鑑定士に対して強い不信感を持っている人であった。

 「不動産鑑定士は狭い村社会で生きている。お互いが知り合いであるため、内容の悪い不動産鑑定評価であっても批判しょうとしない。争おうとしない。判断だ、意見だと言って逃げている。なあなあで仕事をしている。ぬるま湯に浸かって、情報にうとく、不勉強過ぎる。」
と耳の痛いことを言っていた。

 「裁判は戦いである。戦いであるから勝たねばならない。なあなあで決着するものでない。地元であるから自分の方が正しい鑑定をしているとか、優れていると言うものではない。適正な本当の不動産鑑定を論理的にしてくれ、そして戦ってくれる不動産鑑定士が欲しい。」
といい、地元の不動産鑑定士を拒否し、人を介して私に鑑定依頼してきた。

 えらい考えの人に出会ったものだと思い、仕事を引き受けるのに躊躇した。
 私はそれほど立派な不動産鑑定士ではない。
 他の不動産鑑定士とあえて論争するつもりも無い。
 裁判に勝てるか負けるか分からない。
 しかし、ベストを尽くしてみると言って引き受けた。

 借地人が10数人いる地代の評価であった。
 その案件が結審し、忘れた頃に今度は大規模大型店舗の家賃の鑑定依頼があった。

 ウィンストン・チャーチルの著書を愛読し、穏和であるが、信念の人であった。
 会社を経営するオーナー社長であり、その地方においては経済界のボスの一人でもあった。

 不動産を多く持っており、幾つかの不動産や賃料がらみの裁判で苦い経験をされていたのか、
 「不動産鑑定士はたるんでいる。今のままではダメだ」
と私は説教された。

 教えられる点の多い人であった。

 軽飛行機の操縦ライセンスを持っていた。
 自分の自家用飛行機で伊豆の旅から飛行場に帰る途中に山に激突してしまった。
 事故はテレビのニュースで知った。
 墜落事故は間違いであって欲しい。
 生きていて欲しいと思ってニュースを聞いていた。

 その人の葬儀であった。
 葬儀委員長は国会議員であった。
 葬儀の後にラベンダーの花見とは不謹慎かもしれないが、河口湖のラベンダーを見るたびに、世話になつた故人を今後思い出すことになろうから、故人は許してくださるのではなかろうかと思っている。


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