暇ではない。
時間にゆとりが無く、不動産鑑定評価の仕事に追いまくられている。
但し、それは仕事が多くあるのでなく、仕事のスピードが甚だ遅くなったために、仕事に追いまくられているだけである。
こうした状態を「忙中」と言って良いか分からないが、「忙中閑あり」と、勝手に「閑」と付けて、映画を見に行ってきた。
勧める人がいて見に行ってきたと言った方が良いかもしれない。
『おくりびと』という映画である。
納棺師という職業があるとは知らなかったが、あの世に旅立つ人への最後の化粧を行う人を描いた映画である。
それぞれの人生を歩んで来た人が、美しく化粧されて、この世の人と涙の別れをする。
映画の中にはチェロの奏でるクラッシック音楽が生演奏され、第九の合唱も登場する。
主人公を演じる本木雅弘の演技が甚だ良い。
笑いあり、失敗あり、涙あり、別れあり。
納棺師として人生を生きて行く姿を、悩みながらも、立派な職業であるという自覚に目覚めて見事に演じて居る。
『シコふんじゃつた』以来の本木雅弘の好演技である。
今年2008年の日本映画での最優秀主演男優賞と私は推す。
『おくりびと』の本木雅弘が、今年2008年の日本映画での最優秀主演男優賞とすれば、最優秀主演女優賞は『山桜』の田中麗奈である。
私の今年見た映画ばかりによる勝手な選出であるが。
山崎努の演技も良かった。
山崎努が映画デビューした黒沢明監督の『天国と地獄』の若い誘拐犯の演技は素晴らしかった。みずみずしい強烈な鮮烈さを受けた。黒沢明は、物語の重要な存在の役に新人の山崎努を抜擢した訳であるから、若い天性の演技力を見抜く人かなと思った。
その後、数10年を経て、役者としての演技に磨きが益々かかり、「山崎努の世界」を造りあげている。
見る前はさほど期待していなかったが、見終わって、『おくりびと』という映画は良い映画と思った。映画評論家的に言えば、五つ星☆☆☆☆☆の映画といえる。
観に行く時には、ハンカチの用意をして行かれたい。
プロデューサー 間瀬泰宏・中澤敏明 監督 滝田洋二郎 脚本 小山菫堂 音楽 久石 譲