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賃料は、経済事情の変動に影響を受ける。
平成20年9月に、アメリカ投資銀行のリーマン・ブラザーズが倒産した。
平成20年12月末に、トヨタ自動車が平成21年3月期決算の予想を1500億円の赤字と発表した。9ヶ月前の20年3月期決算では2.2兆円の日本一の黒字決算であった。それが9ヶ月後に今期の決算は赤字になると発表したのである。
平成23年3月11日に、東日本大震災が発生した。
この3つの事件は、最近5年間で日本経済を大きく揺さぶった事件であった。
この3つの事件は、賃料にどの様な影響を与えたであろうか。
具体的な賃料数値で分析してみる。
採用する賃料データは、日本経済新聞社が調査発表している『オフィスビル賃料調査』の西新宿地域の賃料データで分析してみる。
日本経済新聞社の『オフィスビル賃料調査』は、年2回、春と秋にオフィスビル賃料を調査して発表されている。
春は東京・大阪を中心として、秋は全国の主要都市のオフィスビル賃料が発表されている。
新築ビルと既存ビルの賃料を発表しているが、既存ビルの賃料で検討する。
その調査の調査対象のビルの条件は、
イ.5階建以上、冷暖房完備、エレベータ付の大型ビルで3階以上のフロア
ロ.ビルオーナーは原則大手企業
ハ.賃貸料は坪当りの中心相場
ニ.仲介会社などに示す募集賃料
である。
西新宿地域のオフィスビルの2007年(平成19年)以降の賃料は、下記である。
2007年(平成19年)5月 9千円/坪〜50千円/坪
2008年(平成20年)5月 8千円/坪〜55千円/坪
2009年(平成21年)5月 8千円/坪〜36千円/坪
2010年(平成22年)5月 6千円/坪〜36千円/坪
2011年(平成23年)5月 8千円/坪〜27千円/坪
2012年(平成24年)5月 6千円/坪〜28千円/坪
2013年(平成25年)5月 8千円/坪〜30千円/坪
賃料の水準はゾーンで発表されている。
上記ゾーンの左値が低値、右値が高値の賃料である。
経済変動の賃料の影響は、ゾーンの高値の賃料に色濃く現れることから、高値賃料で検討する。
上記賃料の推移を見ると、西新宿地域のビルの高値賃料が、
平成20年5月坪当り55千円 → 平成21年5月坪当り36千円
と一年間で、
36
─────= 0.65
55
▲35%下落している。
賃料が下落するには、それなりの理由があるはずである。
▲35%もの大幅下落をするには、経済事情として大事件が生じたことを暗示する。
その期間には2つの大きな経済事件が生じている。
1つは、平成20年9月のリーマン・ブラザーズの倒産がある。
これによって、銀行は、一斉に貸付資金の引きあげ及び新規貸出の大幅抑制を行った。
ファンドバブルで浮かれていた企業は、倒産への道を歩むことになる。
そしてもう一つは、平成20年12月の暮れも押し詰まった時に、トヨタ自動車は、今期の決算は赤字になるという発表である。
あのトヨタ自動車ですら赤字になるのかと企業の多くは驚き、かつ、そのことによって不景気の本格的到来を肌で察知し、事業の縮小、撤退に急いで取り組むことになった。
支店・営業所の撤退、子会社の整理等である。
事務所の空きが増え、みるみるうちに募集賃料は下落して行った。
上記▲35%の下落は、上記2つの経済事情の変動が引き起こしたことに原因している。
次に大きな賃料下落しているのは、
平成22年5月坪当り36千円 → 平成23年5月坪当り27千円
である。
27
─────= 0.75
36
▲25%下落している。
平成23年3月に東日本大震災が発生した。
▲25%の下落は、東日本大震災の経済影響によるものである。
賃料は、経済事情の変動の影響を確実に受けて形成されると言うことが、これで分かろう。
スライド法の尺度は、消費者物価指数変動率とかGDP等の変動率でなく、賃料の変動率が、よりベストの尺度であるということになる。
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