2009年3月31日の東証上場株式の日経平均株価は、8109円53銭で終わった。
それがどうしたという質問が出そうであるが、企業中心資本主義国家である現在の日本にとって、株式の価格の動きは日本経済に与える影響が甚だ大きい。
経済あっての国民生活であり、政治である。
時の総理大臣が、漢字をまともに読むことも出来なくても、それは大変悲しいことであるが、それによって国民は生活に特に困るという影響は受けない。 しかし上場株式の平均株価の高低は国民の生活に大きな影響を与える。
俺には関係ないと言っている人は、経済の仕組みを知らないために、そう言っているのであり、経済の仕組みを知れば、そうは言っておれないと私は思うが。
1年前の2008年3月31日の日経平均株価は、10,252円54銭であった。
1年間で、
8109円53銭−10,252円54銭=▲2,143円01銭
の株価下落である。
率にすると、
▲2,143.01÷10,252.54≒▲0.209
20.9%の下落である。
「それがどうした」と再度開き直りの質問を受けそうである。
しかし、3月末で年間20.9%の株価下落の現実を見て、「それがどうした」と言って、のほほんといられる状態ではない。
企業にお金を貸している銀行は、上場企業の株式を資産として保有している。
それは企業融資のためであったり、企業への出資、投資であったりする。
企業の株式資産の確定は、決算期末時点の株価で行われる。3月期決算の企業であれば、3月31日の株価で株式資産の金額が確定される。
その保有株式が20.9%下落したとすると、時価会計制度の現在にあっては、それだけの損失が生じたと言うことになる。
3月期決算の銀行の決算がそれによって赤字決算になったとすると、資本補強等の手当てをしなければならなくなる。
それと併行して、銀行の経営内容の改善の方策がとられ、新規融資の制限、既存貸出の返済要求等が貸出先の企業に対して行われる。
融資を受けられなくなった企業はどうなるかと言えば、投資計画の縮小或いは断念、経費の節減、挙げ句の果ては社員の給与のカット、最悪の場合は人員整理の手段がとられることになる。
俺は解雇などされないと思っていたら、とんでもない。
企業はそんなに甘くはない。
転勤の辞令が出され、それが嫌なら、辞めてもらうということになり得る。
そうした形などで自分が解雇される状態になって、日経平均株価下落を、「それがどうした」、「俺には関係無い」とうそぶいていることが果たして出来るであろうか。
2009年4月1日の日本経済新聞は、20年3月末から21年3月末までの1年間の株価20.9%の下落によって、大手銀行6グループで、1.2兆円の減損が生ずると伝える。
主要生命保険会社では、4960億円の減損が発生すると伝える。
さすがに日経である。膨大なデータから、よくこんなに早く金額予測が出来るものだと感心する。専門スタッフが居るのか、こうした計算の迅速性には驚かざるを得ない。
3月末株価年間20.9%の下落は、都市銀行のみに影響を与えるのではない。
3月期末決算の地方銀行、信用金庫等の金融機関も例外ではない。
金融機関からの融資が受けられなくなった企業は、経営不安が生じる可能性が大きい。
それによって金融機関の貸出債権の不良債権化が生じてくる。
不良債権が発生すれば、益々銀行の経営内容が悪くなる。
銀行は自行の経営内容を良くしょうとする行動を必ずとることから、銀行のより厳しい融資の停止、貸出債権の貸しはがしが強まることになる。
甚だ粗っぽい予測であるが、3月末株価年間20.9%の下落という事実から、今後、企業の倒産がより増えそうだ。
路頭に迷う社員がより増えそうだ。
鑑定コラム647)「2010年3月31日の日経平均株価は11,089円94銭」
鑑定コラム759)「2011年3月31日の日経平均株価は9,755円10銭」
鑑定コラム1063)「2013年3月末の日経平均株価は12,397円91銭」