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571)銀座・渋谷・新宿・六本木のメトロ乗降客が減っている

 東京メトロ株式会社が、経営する地下鉄の平成20年度の乗降客数を発表した。

 銀座・渋谷・新宿・六本木駅という、東京を代表する商業地にある地下鉄駅の乗降客数が、対前年比でマイナスを示してきた。
 
 東京メトロ株式会社が発表した、上記駅の平成20年度の一日当り乗降客数と対前年比(括弧書き数値%)は、下記である。

    銀座駅    267,029人(▲2.8%)
    渋谷駅    237,339人(▲8.2%)
    新宿駅    232,044人(▲3.7%)
    六本木駅   125,321人(▲4.1%)

 渋谷・新宿駅は、JR駅利用者も多くJR利用で訪れる人も多いが、ターミナル駅として、地下鉄利用者も多い。

 銀座・六本木駅は、地下鉄利用である。

 商業地の収益は、商業地への来訪者が運んで来てくれるのである。
 店に人が来てくれないことには、商売にならない。

 それ故、商業地にあっては、来訪者の数が地域繁栄の最大の要因である。
 来訪者は圧倒的に鉄道・地下鉄が運んで来てくれる。

 その地下鉄駅の乗降客数が減っていることは、同駅を中心とする商業地の売上高減少が生じていることを推測させる。

 売上高の減少は収益の減少を意味し、それは土地価格の低下に結びつく。

 商業地の土地価格を評価する時、私は時々、当該対象地、取引事例地、地価公示地が接面する前面道路の通行人の数を、カウンターで計って土地価格を評価する場合がある。

 一日中の人通りをカウントするのが一番良いことであるが、その様な時間的余裕が無いため、日中の人通りの一番少ない時間帯である13時〜14時の15分間の通行量をカウントして間に合わせている。

 実際に調査すれば分かると思うが、人通りの多寡と商業地の土地価格との間には、ほぼ正比例の関係があることが分かる。

 人通りの多い場所の土地価格は高く、人通りの少ない場所の土地価格は安い。
 商業地の優劣の判断を判定する時には、人の通行量を計ってみることである。

 但し、銀座7・8丁目の裏通りのごとく、夜の水商売・飲み屋街等を目的とする商業地には、この経済経験則は当てはまらない。

 人が利益を運んで来てくれるのであり、銀座・渋谷・新宿・六本木駅の地下鉄乗降客数が、対前年比で減少していることは、それら駅勢圏の商業地の土地価格は下落していると言えよう。

 理屈ではそうかもしれないが、本当に現実にそれらの商業地の土地価格が下がっているのかという疑問を持つ人もいると思う。

 その疑問について、上記4駅を最寄り駅とする商業地に所在する地価公示価格で分析してみる。採用する地価公示価格は、それぞれの商業地の最高土地価格のものである。


 ・銀座駅(地価公示地 中央5-22 銀座4-5-6 銀座駅近接)
      平成19年1月1日   u当り 30,600,000円
      平成20年1月1日   u当り 39,000,000円
      平成21年1月1日   u当り 38,200,000円
 平成20年1月をピークにして平成21年1月の地価は下落している。


 ・渋谷駅(地価公示地 渋谷5-22 宇田川町23-3 渋谷駅150m)
      平成19年1月1日   u当り 15,800,000円
      平成20年1月1日   u当り 19,400,000円
      平成21年1月1日   u当り 18,400,000円
 平成20年1月をピークにして平成21年1月の地価は下落している。


 ・新宿駅(地価公示地 新宿5-35 新宿3-24-1 新宿駅広場)
      平成19年1月1日   u当り 17,500,000円
      平成20年1月1日   u当り 22,500,000円
      平成21年1月1日   u当り 22,000,000円
 平成20年1月をピークにして平成21年1月の地価は下落している。


 ・六本木駅(地価公示地 港5-2 六本木4-9-5 六本木駅近接)
      平成19年1月1日   u当り 6,080,000円
      平成20年1月1日   u当り 8,100,000円
      平成21年1月1日   u当り 7,530,000円
 平成20年1月をピークにして平成21年1月の地価は下落している。


 地下鉄駅乗降客が減少している銀座・渋谷・新宿・六本木駅をメーンの駅とする商業地の地価は、いずれも平成20年1月1日をピークにして下落している。

 駅の乗降客数の変動は、商業地の価格に密接に結びついていると言える。

 地価公示価格は、資料収集、価格分析に時間が必要であり、地価公示価格発表時の実際の土地価格と開差が生じる場合がある。このことはやむを得ない事である。

 銀座・渋谷・新宿・六本木の商業地の地価が下落に転じたのは、平成19年7月である。

 このことから乗降客数の変動は、地価の変動に比して遅行性があると言える。

 即ち、乗降客数が増加し始めた時は、その駅勢圏の商業地の土地価格は、既に上昇している。

 乗降客数が減少し始めた時は、その駅勢圏の商業地の土地価格は、既に下落していると言える。
  

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