愛知県の小牧に不動産鑑定の仕事で行って来た。
名古屋鉄道小牧線の小牧駅に降りた。
現地周辺は住宅地であるから、恐らく飲食店は無いと思い、少し早いが小牧駅周辺で昼の腹ごしらへと思って、そば店・うどん店を捜した。
駅前広場は広いが、見えるのはマンションと戸建住宅ばかりである。
駅の周りを、一回りしたが、どうもそれらしきものは無い。
ホテルのレストランは、気が進まないが、駅まで戻った。
小牧駅ビルは、小牧名鉄ホテルになっていることから、止むを得ずホテルのレストランにすることにした。
ホテルの入って居る駅ビルの1階の外の通路に面している部分は、店舗になっているが、2、3店が店を開いているだけで、多くは閉店している。
立地は抜群に良いのにもかかわらず、店舗が閉店していることは、どうも小牧の商業の景気は良くないようだ。
評価対象物件は2階建てのアパートであった。入居者は一人もいなかった。
周辺の人に聞けば、当該アパートは、派遣社員の借り上げ社宅に利用されていた。ブラジル人等が最近までいたが、全員出てしまったという。
自動車産業を筆頭にして、愛知県は不景気であるということを耳にしていたが、小牧市を訪れて、派遣社員の首切りによる借り上げ社宅の空っぽのアパートが鑑定評価の対象案件ということになって、愛知県のみで無く日本の経済の不景気の現実を具体的に見せつけられることになった。
100%の空室になってしまった借り上げアパートの価格を、さてどの様にして不動産鑑定評価するか。
地方に行った時、時間が空いた時は出来るだけ、その都市の美術館を訪れることにしている。
しかし、実際には仕事に追われ、仕事が終わるのが午後5時を過ぎていることが多く、なかなか美術館を訪れることが出来ない。
今回は、時間が少し空いた。
小牧で横山大観展をやっていると聞いた。
その美術館はメナード美術館という。
メナードという画家などいたのだろうかと疑問に思い聞いたところ、化粧品のメナード化粧品の創業者である野々川大介夫妻が、買い集めた絵画を展示する為に故郷に建てた美術館という。
著名な画家の絵が所蔵されているらしいという。
美術館の閉店時間まで何とか間に合いそうである。
横山大観の絵ならば見ておいて損は無かろうと思い、メナード美術館に駆けつけた。
見学は時間があまりなく、駆け足で慌ただしかった。
メナード美術館での横山大観展は、今年(2009年)の9月から開かれており、11月3日で終わるという。
大観展と名乗るだけあって、40数点の作品が展示されていた。
展示作品は、前期と後期で入れ変わるという。
私の訪れた時は、後期の作品が展示されていた。
宮内庁、東京国立近代美術館、東京芸術大学、足立美術館、山梨県立美術館等、著名な美術館所蔵の大観の作品が展示されていた。
記憶に残る絵は、次の幾つかであった。
宮内庁三の丸尚蔵館所蔵の「龍蛟躍四瞑(りゅうこうしめいにおどる)」は、二対の屏風画で、二対を併せると6間の長さのものである。墨絵である。その描かれている龍の躍動感に圧倒される。
東京国立近代美術館所蔵の「或る日の太平洋」は、真ん中に龍が絡む大きく立ち上がる波のうねりを浮世絵のごとく大胆に、そして遠くに霊峰富士山を描く。
http://www.asahi.com/taikan/topics/image/TKY200712060282.jpg
足立美術館所蔵の「山に因む(ちなむ)十題」は、雲の間に見える青の富士山である。白の中に群青の青が際だつ。
横山大観記念館所蔵の「霊峰飛鶴」は、黄色の後光をバックに富士山が描かれ、富士山の前を白鳥が群れをなして行く。心安まる絵である。
メナード美術館所蔵の「海に因む(ちなむ)十題・黒潮」は、波のうねりと赤い太陽が光輝く。私は波のうねりを海の波とは思わず、山々が波打つ山脈と思ってしまった。
http://museum.menard.co.jp/collection/japanese/japanese_yokoyama.html
別室に大観ゆかりの画家の絵があつた。
その中に、メナード美術館所蔵の前田青邨の「出陣」の絵があった。
前田青邨得意の武者の見事な絵だ。
「洞窟の頼朝」の絵に引けをとらない。
5人の騎馬武者に囲まれて出陣する主人公の若い武将は誰であろうか。
兜を見れば誰かが分かろうが、私にはその知識は無い。
メナード美術館の大観展の案内のホームページは、下記です。
http://museum.menard.co.jp/exhibition/ex0903/index.html
絵画についての鑑定コラムは、下記にもあります。
鑑定コラム451)「MOA美術館と千住博のウオーターフォール」
鑑定コラム482)「長沢明の「イエローエッジ」が入賞」
鑑定コラム1488)「若冲展、待ち時間120分」