2008年7月初旬、50年振りに出席した熱海での中学校の同窓会の翌日、寝不足と二日酔いのけだるさの体で、熱海駅の裏山の中腹にあるMOA美術館を同窓会出席の方々と共に訪れた。
同美術館は尾形光琳が描いた国宝「紅白梅図屏風」を所蔵している美術館である。
MOA美術館コレクションの絵画、工芸品を見たいと思い、今迄に2回訪れたが、いずれも「休館」で、中に入ることが出来なかった。
今回初めて、やっと入館することが出来た。
特別展として「第16回MOA岡田茂吉賞展」が開かれていた。岡田茂吉氏はMOA美術館の創立者と聞く。
7つの長短のエスカレータを乗り継ぎ、最上階に行き、最上階から下りながら展示品を見る様に設計されていた。
第16回MOA岡田茂吉賞展の大賞、優秀賞を得た作品が展示されていた。
絵画部門では、松本哲男の受賞した「ヴィクトリア・フォールズ」と同氏の以前描いた「イグアナ・フォールズ」の大作が展示室の壁いっぱいを占めるごとく展示されていた。
その大きさと迫力に圧倒されてしまう。
絵画部門のもう一つは「トラ」を抽象的に描いた長沢明の連作であつた。
虎を直線的に、あるときは怒り、あるときはユーモアに描いているのが印象的であった。
工芸品の展示室に入った時、目に飛び込んできた花びらを形どった漆黒の器鉢を見た時、
「ウァー。美しい。」
と思わず声を上げてしまった。
その作品は、増村紀一郎の「乾漆菊華鉢」であった。
上記入賞作品のうち、松本哲男の「ヴィクトリア・フォールズ」、増村紀一郎の「乾漆菊華鉢」の作品紹介のアドレスは、時間の経過からか削除されましたので、本文からも削除します。
長沢明の「トラ」は下記です。
http://www.gei-shin.co.jp/comunity/04/51.html
展示室の何番目であったか忘れたが、展示室に足を踏み入れた途端目に入った絵を見た瞬間、
「千住博の絵だ。」
と分かった。
横の長さ15メートルほどの大きさの絵で、怒濤のごとく落下する滝の白い水と、地面に激しくたたきつけられて跳ね返え、舞い上がる水しぶきの躍動感を描いた絵である。
「こんなところで千住博のウォーターフォールが見られるとは。」
と私は驚いた。
外務省が千住博のウォーターフォールを買い上げたということは、新聞でずっと以前知っていた。
その作品と殆ど構図が同じである。
美術館の方に聞くと、
「外務省の所蔵のものではありません。当美術館が、とある人からお預かりして保管管理している絵です。
外務省が購入されたものは、この絵の一連のウォーターフォールの1つです。」
という返事が返って来た。
外務省の中などには私など入ることは出来ない。
外務省の飯倉公館などでしか見られない千住博のウォーターフォールを、身近に見られることが出来た事は、私にとって大満足であった。
仕事で羽田空港を良く利用する。
どちらかと云えばJAL(日本航空)を利用するのが多い。JALの搭乗口は羽田第1旅客ターミナルビルである。
しかし、発着便の都合でANA(全日空)を利用することもある。
ANAは羽田第2旅客ターミナルビルが搭乗口である。
その羽田第2旅客ターミナルビルの建物の天井を見上げると、オーロラを思わせる絵画がつり下がっている。又、天空には銀河の中心の輝きを思わせる絵がある。
千住博の作品である。
「旅人よ、輝きあれ」
と旅立つ人に絵画が言っているように私には受け取れ、私は旅に発つ。
ビクトリア及びイグアナの大瀑布の絵、漆黒の器鉢、トラの絵、そして千住博のウォーターフォールを見るたびに、今後は私にとって、50年ぶりに参加した熱海での中学校の同窓会がより鮮やかに印象深く想い出されて来ることになるであろう。
MOA美術館を訪れる企画を考えてくれた、東京在住の中学同窓会の幹事に感謝する。
千住博のウォーターフォールや羽田第2旅客ターミナルビルに懸げられている作品は、下記のアドレスで見られます。
http://www.hiroshisenju.com/index.html
鑑定コラム447)「50年前へのタイムスリップ」
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