賃料の管理費をおかしな求め方をしている賃料鑑定書がある。
賃料鑑定書のみでなく、価格評価の鑑定書で収益価格の必要諸経費の管理費を求める場合にもよく見られるやり方である。
そのおかしな求め方と言うのは、必要諸経費の管理費の金額を月額支払賃料の2%とか、0.5パーセントとか、5%とし、月額支払賃料が不明のため月額支払賃料をXとして、管理費を0.02X円とか、0.005X円とか、0.05X円する。
例えば、純賃料を5,000,000円とする。管理費以外の必要諸経費が2,500,000円であったとする。管理費は支払賃料の2%とする。保証金の運用益を250,000円とする。
上記条件の場合の積算賃料を、下記のごとくの方程式をたてる。(月額管理費を2%とすると、年額の管理費は0.02X×12=0.24Xである。)
5,000,000円+(2,500,000円+0.24X)=12X+250,000円
という式をたて、この式よりXを求める。上記式の右辺もおかしな式で、左辺と右辺が果たして等号で結ばれるものか、私には疑問があるが。本来右辺に共益費が加えられるべきでものではなかろうか。
上記式で求めたXに0.02を乗じて月額の管理費を求める。
建物の月額支払賃料が分からなければ、管理費用が分からないという考え方である。
現実の建物賃貸借にあって支払賃料が分からないから、管理費が分からないということなどあり得るのだろうか。
また支払賃料が決まってから管理費が決まるという賃貸借契約方法があるのだろうか。
この様な非現実的な管理費の求め方に、現実性としての合理的な理由は無い。
そもそも、評価建物の管理費は、年額支払賃料の2%であると断定して求められるのか。その断定した合理的理由と2%の理論的算出根拠が逆に問われることになろう。
管理費を求めるのに、何も支払賃料を基本にするものでもない。
当該建物の分かっている管理費を建物の面積に除して、建物面積を基本にして求めることも出来る。
当該建物はビル管理されているのであるのだから、管理費がいくらかは分かるはずである。
支払賃料をXとして管理費を求めるという様な不動産鑑定書など、不動産の評価の専門家足るべき不動産鑑定士が書くべきものではない。
鑑定コラム633)「実務修習の継続賃料の求め方は間違っている」
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