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684) 賃貸事務所ビル経費率

 事務所ビル賃貸事業は、事業経営である。不動産事業という企業経営である。
 事業経営・企業経営であるからには、事業収入と事業支出の間には、企業経営をする上での、経済的経験則が必ず存在するハズである。

 2009年〜2010年にかけてJリートで売買された東京都内の賃貸事務所ビルのデータより、事務所賃料収入とその事務所ビルを運営経営していくために必要とする経費の関係を分析してみた。

 経費には、減価償却費を含む。

 不動産不況で、不動産の動きは多くない。
 その中で、データは多くは無いが、9つのデータが得られた。

 その分析結果である賃料収入に対する必要諸経費の占める割合は、即ち、

         必要諸経費(減価償却費込み)
               ──────────────  = 経費率             
                     年間賃料収入

の式で求められ、経費率は、

        0.203〜0.469

であった。

        平均 0.364

であった。(データの一覧は後記一覧表参照)

 即ち、賃料収入を100%とすると、事務所の必要諸経費(減価償却費込み)は、
35%前後であるといわれているが、そのことがほぼ実証された。

     支払賃料の純賃料+必要諸経費=支払賃料
    
で構成されている。

     支払賃料の純賃料=1−0.364=0.636
     必要諸経費=0.364

である。
 支払賃料の純賃料の割合は、必要諸経費の割合よりも高い割合にあるのが、適正な賃料のあるべき姿である。

 支払賃料の純賃料は、必要諸経費に対して、

         0.636
               ───── = 1.747≒1.75                            
                  0.364

である。支払賃料の純賃料は、必要諸経費の1.75倍ということになる。
 これが標準的な支払賃料の純賃料割合ということになる。

 ある賃料鑑定の評価で、裁判所の鑑定人不動産鑑定士が求めた賃料鑑定の支払賃料の純賃料と必要諸経費の関係を分析したところ、およそ

     支払賃料の純賃料割合  35%
     必要諸経費       65%

と求められていた。

 そして、その賃料が適正な賃料であると鑑定していた。

 賃料の賃料形成理論については詳しくなく疎い裁判官は、裁判所鑑定人の賃料鑑定は絶対的に適正であると信じ込み、賃貸人側の主張する不当鑑定の抗議を退けて、裁判所鑑定人の賃料鑑定額に若干の修正を加えたが、ほぼ鑑定人賃料鑑定額に近い額の判決を下した。

 判決自体が、財産権の侵害を引き起こしているのでは無かろうかと思われるごとくのひどい賃料裁判である。
 鑑定人不動産鑑定士は、もっとしっかりしてもらわないと困る。

 支払賃料の65%が必要諸経費の割合を占めたら、健全な事務所ビル経営をすることは、殆ど不可能に近い。不動産賃貸業経営をするなということに等しく、不動産賃貸業を否定するごとくの裁判賃料鑑定であり、判決である。

 木を見て森を見ずという賃料鑑定である。

 ビル経営する賃貸人は、「不動産鑑定士も裁判官も資本主義経済での経済行為とはどういうものなのか知らないのか !。 ふざけるな !」と当方に怒りをぶっけるが、強制力を持つ裁判の判決には法治国家であるためどうしょうもない。

 下記に、賃貸事務所ビルの賃料収入と必要諸経費(減価償却費込み・データでは「賃貸費用」の名称となっている)の分析データ一覧を記す。


事務所ビル所在 賃料収入 賃貸費用 経費割合
    a円 b円 b/a
1 中央区銀座8丁目 20327000 9539000 0.469
2 中央区日本橋本町4丁目 99415000 31695000 0.319
3 渋谷区恵比寿1丁目 116903000 39453000 0.337
4 新宿区新宿2丁目 37414000 14320000 0.383
5 港区元赤坂1丁目 746141000 151521000 0.203
6 渋谷区神宮前6丁目 230587000 79286000 0.344
7 千代田区神田神保町2丁目 161000000 55000000 0.342
8 渋谷区神宮前6丁目 347000000 148000000 0.427
9 渋谷区恵比寿南1丁目 62000000 28000000 0.452
平均       0.364


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