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1133)何度言えばわかるであろうか 空室損失は経費では無いと

 最近の家賃評価で、未だに相変わらず空室損失を必要諸経費に算入している賃料鑑定書が、賃料裁判の鑑定書として提出されてくる。

 「空室損失を積算賃料の必要諸経費に計上することは間違いです。」

と指摘すると、

 「空室損失を必要諸経費に計上することは当然のことであり、間違いではありません。田原鑑定は空室損失を計上していないことから、田原鑑定の方が間違いです。」

と空室損失経費当然論を展開して、当方の鑑定の方が間違っていると反論してくる。

 どうして当然なのだの説明が必要であるが、その説明は無い。

 不動産鑑定士が空室損失を経費に計上している鑑定書を書き、その不動産鑑定士が間違いでは無いと云うことから、代理人弁護士は、準備書面で空室損失を経費に計上するのは当然であるという論理を展開し、加えて空室損失を経費に挙げていない田原鑑定は鑑定評価基準違反であり、不当鑑定で信頼性はないと激しく攻撃してくる。

 当然論として、

 「空室が増えるのであれば賃料を高く設定しなければならない。
 空室のリスクを考えれば、5%程度の空室損失相当額を計上することは間違いでは無い。」

  と代理人弁護士は、準備書面で主張する。

 「おいおい、代理人弁護士ょ、空室が増えれば増えるほど賃料が高くなるのかい?
 非現実的な無茶な論理を展開するなょ。」

と云いたくなる。

 賃料の必要諸経費とは、賃料収入に対応する費用性のあるものをいうのであり、空室損失には費用性は無い。

 本鑑定コラムでも、

          184)「空室損失は家賃の必要諸経費なのか」
           347)「『不動産鑑定評価基準』はダブルスタンダードなのか」
           579)「空室損失は経費ではない」
           589)「平成22年地価公示から空室損失・共益費は収入項目に」

のコラム記事で、空室損失は経費では無いと再三に渡って述べている。

 また著書、論文、賃料講演においてでも、空室損失は経費では無いと私は述べている。

 しかし、未だにそれが分からない人が存在し、経費計上が適正であると主張する不動産鑑定士がいる。

 何故分かろうとしないのか。
 情報が行き渡っていないのか。
 自ら殻に閉じこもっていて、情報を得ようと努力しょうとしないのか。
 不勉強なのか。

 自らの情報不足、不勉強を棚に挙げて、空室損失経費論を展開されても困る。

 国土交通省は、土地価格の公示という政策を実施している。地価公示価格政策である。

 その実施部隊は不動産鑑定士である。

 国土交通省は、その地価公示価格の収益還元法の求め方を、平成21年までは次のごとくとしていた。

 (総収益)
    支払賃料          
        保証金等の運用益
        権利金等の運用益及び償却額
        その他の収入(駐車場使用料等)

 (総費用) 修繕費 維持管理費 公租公課 損害保険料 貸倒れ準備費 空室等による損失相当額 建物等の取壊費用の積立金 その他の費用

 平成21年までは空室損失は、経費項目に入っていた。

 平成22年の地価公示は、下記のごとくとなった。

 (総収益)
    支払賃料          
    共益費
        その他の収入(駐車場使用料等)
    貸倒れ損失
    空室等による損失相当額
        保証金等の運用益
        権利金等の運用益及び償却額

 (総費用) 修繕費 維持管理費 公租公課 損害保険料 建物等の取壊費用の積立金 その他の費用

 平成22年の地価公示価格では、収入項目に空室損失、共益費、貸倒れ損失が加わった。
 費用から空室損失、貸倒れ損失が無くなった。

 国交省は空室損失を経費項目で無く、収入項目であると認めたのである。
 鑑定評価基準は、各論第3章を除いて、訂正されていなく、未だに費用項目に空室損失が残っているが。

 この残っていることを良いことにしての、空室損失は経費項目であるという主張は、不勉強以外何者でも無い。

 国交省で、鑑定評価基準の見直しが現在行われている。
 その見直し作業において、空室損失の経費項目削除も行われるであろう。

 まさか現行のままと云うことは無いであろう。
 もしそうなった場合には、私は猛烈に鑑定評価基準批判を展開する。
 ダブルスタンダードは基準足り得ないと。

 なお、上記費用項目において、必要諸経費に減価償却費が計上されていないが、地価公示価格はキャッシュフローで求められており、減価償却費を経費計上しない。

 減価償却費相当は、

       総収入(総収益)−総費用=純収益

の純収益に含まれていると云うことになる。つまりこれが償却前純収益というものである。

 次いでに云えば、純収益が償却前純収益で求められている場合、この利益より還元して価格を求める場合の使用する還元利回りは、償却前還元利回りで対応しなければならないということになる。償却後還元利回りでは性質の同一性がなく出来ないと云うことである。

 つまり、下記である。

    償却前純収益÷償却前還元利回り=不動産価格

 「償却前純収益÷償却後還元利回り」という算式は成立しないということである。


  鑑定コラム184)
「空室損失は家賃の必要諸経費なのか」

  鑑定コラム347)「『不動産鑑定評価基準』はダブルスタンダードなのか」

  鑑定コラム579)「空室損失は経費ではない」

  鑑定コラム589)「平成22年地価公示から空室損失・共益費は収入項目に」

  鑑定コラム1242)「これが改正鑑定評価基準なのか」

  鑑定コラム1580)「裁判を混乱させる収益・経費両方計上の空室損失」


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