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1460) 銀座の土地が坪2億円で取引された

 銀座の土地が、驚愕な価格で取引された。

 銀座中央通りの土地は、滅多に取引されない。

 また取引されても、その土地価格がオープンになることは無かった。

 それが、今回銀座中央通りに面する銀座2丁目のビルの売買価格がオープンされた。

 それは、Jリートの投資法人の購入によって、投資家への情報公開が義務づけられているために、オープンにせざるを得なかったためである。

 もし、購入者がJリートの投資法人で無ければ、売買価格の公開はあり得なかった。

 こうしたことを考えると、Jリートの情報公開という制度は、大変良い制度であると私は思う。
 
 あるJリート投資法人が、ホームページに銀座2丁目の銀座中央通りのビル取得を公表した。下記である。

 ・所在     東京都中央区銀座2丁目 銀座中央通り
 ・取得価格    13,000百万円(持分50%)
 ・取得日    平成28年3月1日
 ・土地面積   394.53u(全体土地)
 ・建物構造   鉄骨造陸屋根地下1階付13階建
 ・延べ床面積  4,339.92u(全体建物)
 ・賃貸面積   3,141.07u(全体建物)
 ・建築時期   平成26年5月
 ・賃料収入   408百万円(投資法人が取得する50%分)

 そして、Jリート投資法人には義務づけられている不動産鑑定評価書の内容が発表されている。その主な数値を記すと、下記である。

 ・鑑定評価額  13,300百万円

 ・収益価格   (直接還元法) 運用益   813百万円    運用費用  111百万円    純収益   709百万円    還元利回り  2.7%    収益価格  13,200万円
  (DCF法)    割引率   2.5%    最終還元利回り 2.7%    収益価格  13,300百万円
 ・積算価格 10,700百万円    土地費率  94.0%    建物比率   6.0%
 
 上記データより、次のごとく土地価格を分析する。

 積算価格は、10,700百万円である。
 土地・建物の価格割合は、94:6である。この価格割合から、土地価格・建物価格を次のごとく求める。

 土地価格は、

     10,700百万円×0.94=10,058百万円
     10,058百万円÷197.265u(394.53u×0.5)=50.99百万円

u当り5099万円である。

 建物価格は、

     10,700百万円×0.06=642百万円
     642百万円÷2169.96u(4339.92u×0.5)=0.2959百万円

u当り295,900円である。

 購入した金額は、13,000百万円である。

 建物価格は、上記より642百万円である。

 購入土地価格は、

     13,000百万円−642百万円=12,358百万円

である。

 u当り価格は、

    12,358,000,000円÷197.265u=62,646,694円≒6265万円

6265万円である。

 坪当り換算すれば、

    6265万円×3.30578=20,711万円≒2億700万円

2億700万円である。

 銀座2丁目の銀座中央通りの土地が、2億700万円で売買された。

 この価格から検討すると、銀座4丁目の交差点の土地価格は、どんな価格になるであろうか。

 公表されたデータより、次のことがわかる。

 賃料は、

     408,000,000円÷12ヶ月÷1570.535u(注)=21,649円
                        ≒21,600円
       (注)賃貸面積3141.07u×0.5(持分割合)=1570.535u

u当り21,600円である。坪当り換算では、

       21,600×3.30578≒71,400円

である。

 取得価格と鑑定評価額の価格乖離率は、

     取得価格   13,000百万円
       ──────────────  = 0.977                      
          鑑定評価額  13,300百万円

である。

 取得価格は、ほぼ鑑定評価額である。

 その鑑定評価額は、どういう価格かと云えば、

    鑑定評価額   13,300百万円
    DCF法価額    13,300百万円
 
であることから、

    鑑定評価額=DCF法価額

である。

 還元利回りは、

      709百万×0.5(持分割合)
       ───────────── = 0.0273                        
           13,000百万円

2.73%である。この利回りは償却前利回りである。つまり利回りの中に減価償却費相当が含まれている。

 この算出利回りの分母の金額は、ほぼ鑑定評価額が採用されている。鑑定評価額はDCF法の収益価格である。積算価格では無い。

 2.73%の利回りは、収益価格に対応する利回りであって、積算価格に対応する利回りではない。

 賃料の積算賃料の期待利回りは、土地建物の価格に乗じる利回り、即ち積算価格に対応する利回りである。

 このことは何を意味するかと云えば、Jリートの還元利回りは、賃料評価の期待利回りには使え無いということを意味する。上記データは、それの証拠となる。

 「否、使用出来る」と主張して使用されるのは結構であるが、そうした場合どういうことが生じるか論述する。

 類型が異なることに目をつぶり2.73%の利回りを使用することとする。

 上記で求められた13,300百万円は、賃料から求められた収益価格であるから、その収益価格を、賃料を求めるための基礎価格には採用出来ない。

 基礎価格は、土地建物価格から求める積算価格を採用することになる。

 積算価格は、10700百万円であるから、純賃料は、

     10,700百万円×0.0273=292.11百万円

となる。

 本件の純賃料は、354.5百万円(709百万円×0.5持分割合=354.5百万円)であることから、この純賃料にならなければならない。

 292.11百万円では、大幅な賃料減額となる。その様なことを貸主の投資法人は望んでいるであろうか。

 現行賃料から得られる354.5百万の純賃料を得るには、積算価格を変えることは出来ないことから、期待利回りを変えざるを得ない。

 現行の純賃料354.5万円を得るには、期待利回りは、

                 354.5百万円
            ────────  = 0.033                             
                10,700百万円

3.3%で無ければならない。

 2.73%では、現行の支払賃料を大巾に減額しなければならなくなるのである。

 Jリートの還元利回りは、賃料の期待利回りに使用出来ないと云うことが、これでわかったことと思う。

 DCF法価格と積算価格の関係を見れば、

           DCF法価格    13,300百万円
       ───────────────── = 1.243                 
           積算価格         10,700百万円

DCF法価格は、積算価格より24.3%高い価格ということになる。

 上記分析より、銀座2丁目の銀座中央通りの土地価格は、坪当り2億700万円(u当り6265万円)で取引された。

 それは、自由な不動産取引市場が形成した市場価格である。

 不動産鑑定は、自由な不動産市場が形成する適正な市場価値を価額に表す行為である。

 本件取引は、その不動産鑑定に依って裏づけられた金額で取引された。

 一方、本件土地の近くに、同じ銀座中央通りに面して地価公示価格がある。

 その地価公示価格は、下記である。
 
     地価公示番号    東京中央 5-29
          所在  中央区銀座2丁目6-7
          面積  353u
     道路  南東側  幅員27m 国道
     価格  u当り2430万円(平成27年1月1日)

 本件近接に上記地価公示地がある。その価格はu当り2430万円(平成27年1月1日)である。坪当り換算で、8033万円である。

 本件売買価格は、坪当り2億700万円である。

 まとめると、下記である。

    地価公示価格   坪当り 8033万円(平成27年1月1日時点)
    本件売買価格   坪当り 2億700万円(平成28年3月1日時点)

 あと2週間程度後(3月22日頃)に、国土交通省が平成28年1月1日時点の地価公示価格を発表する。

 さて、その価格は、どの様な価格として発表されるであろうか。


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