○鑑定コラム


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ

1420)売上高から見た東京都中央卸売市場の適正家賃

 生鮮魚介類(水産)、青果、食肉の各卸売店舗の売上高に対する家賃割合について、鑑定コラム1419)に分析記事を書いた。

 卸売売上高に対する家賃割合は、下記のごとく求められた。

          生鮮魚介類(水産)卸売店舗      0.83%
          青果卸売店舗               0.58%
          食肉卸売店舗               1.05%

 この家賃割合を東京都中央卸売市場の売上高に当てはめてみる。

 東京都中央卸売市場の築地市場の水産、青果の平成26年の卸売売上高は、下記である。

           水産卸売上高     4350.22億円
           青果卸売売上高         863.61億円

 卸売売上高に、前記家賃割合を乗ずれば、年間卸売店舗の家賃が求められる。

 築地市場の家賃は、下記である。

           水産    4350.22億円×0.0083 = 36.1億円
           青果     863.61億円×0.0058 =  5.0億円 
            計                                 41.1億円

 築地市場の年間家賃は、41.1億円と求められる。

 東京都中央卸売市場は、水産、青果、食肉の他に、花卉を扱っている。

 花卉の卸売店舗の損益計算のデータは、平成12年版の『中小企業の原価指標』(同友館)、平成12年版の『中小企業の経営指標』(同友館)には無いことから、次のごとく推測する。

 花卉は、生鮮魚介類(水産)や食肉の部類よりか野菜・果物(青果)の部類に類似性が高い。

 花卉の小売店舗である花屋の売上高に対する家賃割合は、4.2%(鑑定コラム18 花子売)である。

 青果の小売である野菜果実店の売上高に対する家賃割合は、3.6%(鑑定コラム18 野菜・果実小売)である。

 野菜・果実小売と花小売店舗の家賃割合の間には、

                     4.2%
                  ────  = 1.167                               
                     3.6%

の関係が認められる。

 この割合関係が、卸売店舗の家賃割合にも適用出来ると判断する。

 青果の卸売店舗の家賃割合は、0.58%であったから、花卉の卸売店舗の家賃割合は、

                    0.58%×1.167=0.68%

0.68%と求められる。

 卸売店舗の売上高に対する家賃割合をまとめる。

          水産卸売店舗         0.83%
          青果卸売店舗            0.58%
          食肉卸売店舗            1.05%
          花卉卸売店舗            0.68%

 上記家賃割合と各市場の卸売上高より、各市場の家賃を求める。下記である。
 表示金額は百万円以下切りすての表示のため、合計があわない場合があります。

 (食肉市場)

          食肉    1222.05億円×0.00105 = 12.83億円

 (大田市場)

          青果    2663.24億円×0.0058 = 15.44億円
          水産         103.19億円×0.0083 =  0.85億円 
          花卉         494.95億円×0.0068 =  3.36億円
           計                                 19.66億円

 (豊島市場)

          青果     208.95億円×0.0058 = 1.21億円

 (淀橋市場)

          青果     560.95億円×0.0058 = 3.25億円

 (足立市場)

     水産         169.30億円×0.0083 = 1.40億円

 (板橋市場)

          青果     283.63億円×0.0058 = 1.64億円
          花卉          71.78億円×0.0068 = 0.48億円
           計                                 2.13億円

 (世田谷市場)

          青果      96.91億円×0.0058 = 0.56億円
          花卉         126.65億円×0.0068 = 0.86億円
           計                                 1.42億円

 (北足立市場)

          青果     386.30億円×0.0058 = 2.24億円
          花卉         80.26億円×0.0068 = 0.54億円
           計                                2.78億円

 (多摩ニュータウン市場)

          青果     51.42億円×0.0058 = 0.29億円

 (葛西市場)

          青果     295.62億円×0.0058 = 1.71億円
          花卉         81.21億円×0.0068 = 0.55億円
           計                                2.26億円

   合計                                     88.39億円

 東京都中央卸売市場の賃料は、年間88.39億円と分析された。

 現行の授受されている賃料は85億円(売上高割賃料は除く)である。

 現行賃料と理論的に求められた賃料とが、ほぼ近似にある。

 この現象に、分析した私の方が驚いている。

 築地市場と多摩ニュータウン市場の賃料単価が同じであるということは、フェアで無いと考え、現行賃料は安いのではないかと思い分析に取り組んだ。

 多大な時間と労力を使い分析した結果は、現行賃料は妥当な賃料水準に近いと分かった。

 誤差は、

                     85億円
                  ─────= 0.97                                 
                     88億円

3%程度である。

 東京都中央卸売市場は、どういう考え方で、現行85億円の賃料を決めたのか私には分からないが、結果より推定すれば、その決め方には驚嘆する。

 私が苦心して求めた売上高に対する家賃割合を、東京都は既に知っていたのかと思いたくなってくる。

 もしそうであるならば、私はがっくり来る。

 中央卸売市場特有の売上高割増の家賃を考えた家賃割合は、定額家賃に対する売上高割増家賃の割合は0.384であるから、前記で求められた家賃割合に1.384を乗ずれば、その家賃割合が求められる。

 この家賃割合が、東京都中央卸売市場の売上高に対する家賃割合と云える。

 下記である。

          水産卸売店舗         0.83%×1.384  = 1.15%
          青果卸売店舗            0.58%×1.384  = 0.80%
          食肉卸売店舗            1.05%×1.384  = 1.45%
          花卉卸売店舗            0.68%×1.384  = 0.94%

 卸売市場の赤字の解消は、各市場の取扱数量を拡大し、売上高を上げることであろう。

 卸売市場を通さずに流通しているものもかなりあろうと思われるが、取引の明瞭性、安全性を考えれば、卸売市場を通した流通の方が好ましい。

 そして、取扱い種類を増やすことも考える必要があろう。


  鑑定コラム1419)
「魚・野菜・肉卸店舗の家賃割合」

  鑑定コラム1416)「東京都中央卸売市場の売上高は1兆2110億円(平成26年)」

  鑑定コラム1415)「築地市場の売上高は芳しくない」

  鑑定コラム1414)「東京都中央卸売市場は53億円の赤字」

  鑑定コラム1410)「都の卸売市場の家賃はいくらか」

  鑑定コラム18)「店舗売上高と家賃割合」

  鑑定コラム1012)「店舗売上高と家賃割合の追加」


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ