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1419)魚・野菜・肉卸店舗の家賃割合

 2000年(平成12年)に、「売上高に対する家賃割合」という論文を『Evaluation』創刊号P46(清文社 2000年8月)に発表した。

 小売店舗の売上高に対する家賃割合について論じた内容の論文である。

 飲食店の家賃は、売上高の10%等のごとく、各小売店舗の売上高に対する家賃割合はどれ程が妥当かを分析している。

 その論文では、小売店舗の売上高と家賃の関係を分析したが、卸売店舗については、分析しなかった。

 それは、卸売店舗の家賃割合を知りたいという人はあまり多く無く、必要性が弱いと判断したためである。

 今回、卸売店舗の売上高に対する家賃割合がどれ程であるかが必要になって来た。

 卸売店舗の売上高に対する家賃割合を分析する。

 分析するのは、魚・野菜・肉の卸売店舗の家賃割合である。

 2000年に発表した「売上高に対する家賃割合」という論文と同じ考え方で分析する。

 採用する資料は、2000年の小売店舗の家賃割合の分析に使用した平成12年版の『中小企業の原価指標』(同友館)と、平成12年版の『中小企業の経営指標』(同友館)に発表されている損益計算書、財務諸表の数値である。

 魚卸業(生鮮魚介卸業)を代表に選んで、その売上高に対する家賃割合の求め方を述べる。

 平成12年版『中小企業の原価指標』(以下「原価指標」と呼ぶ)のP302に、生鮮魚介卸業の損益計算書(「原価及び構成比率」)が掲載されている。以下である。


生鮮魚介卸    
区分 原価額千円 構成割合%
(売上原価)    
売上原価 3289285 87.2
     
(販売費)    
販売員給料手当 128139 3.4
支払運賃 41377 1.1
支払荷造費・荷造材料費 7271 0.2
支払保険料 22224 0.6
車輌燃料・修理費 7911 0.2
販売員旅費・交通費 3949 0.1
通信費 6815 0.2
広告・宣伝費 2659 0.1
その他販売費 16374 0.4
小計 236719 6.3
     
(管理費)    
     
役員(店主)給料手当 38720 1
事務員給与手当 41553 1.1
福利厚生費 28714 0.8
減価償却費 12010 0.3
交際・接待費 4263 0.1
土地・建物賃借料 16924 0.4
保険料 5613 0.1
修繕費 2529 0.1
光熱水道料 10158 0.3
支払利息割引料 10675 0.3
租税公課 6838 0.2
従業員教育費 132 0
その他管理費 35312 0.9
小計 213441 5.6
     
総計 3739445 99.1
     
利益 35826 0.9
     
売上高 3775271 100


 上記損益計算書より、分析に必要な次の数値・割合を選択する。

(1) 選択数値

@ 売上高  売上高は3,775,271千円である。

A 減価償却費
 建物、設備資産の減価償却費である。建物の減価償却費が必要であるが、それのみの分析は行われていないため、設備資産を含める減価償却費のデータを採用する。
 あとで設備資産を分離するために一工夫する。  0.3%

B 賃借料
 損益計算書の表示は「土地・建物の貸借料」とあるが「賃借料」と呼ぶこととする。
 土地もしくは建物の賃借料あるいは機械装置のリース料の金額である。
 個々別々の企業の損益計算書では、賃借料は何の賃借料であるか分かるが、「原価指標」では何の賃借料であるか分からない。
 ある企業は地代であったり、ある企業は家賃であったり、ある企業は設備のリース料であったりする。
 データ企業の全てが借地の企業ばかりとは考えにくい。また設備のリース料ばかりとも考え難い。賃借料の中心は家賃であろうと思われる。
 しかし、データ企業の全てが借家企業であるとは考え難い。借家企業も一部あろうが、過半以上は自用企業であろうと思われる。賃借料は借家企業が負担する家賃であろう。
 借家の場合、建物の減価償却費は生じない。それ故、借家の場合、賃借料を減価償却費相当及び借家企業の固定資産税・都市計画税と考える。     0.4%

C 保険料
 建物の火災保険料とみなす。  0.12%

D 租税公課
 土地・建物の固定資産税・都市計画税である。  利益が出ている場合には事業税が入っている可能性があることから、健全企業で計上されている租税公課の額は採用せず赤字企業の租税公課の額を採用する。その額を健全企業の売上高で除して、租税公課の売上高に対する割合を求める。
 生鮮魚介卸売業の欠損企業の租税公課は4,690千円である。(「原価指標」P302)
   租税公課の割合は

              4,690
          ─────  = 0.1%                                      
            3,775,271
である。

(2) 必要諸経費
 減価償却、賃借料、保険料、租税公課を生鮮魚介卸売業の土地・建物の「必要諸経費」とする。
     0.3%+0.4%+0.1%+0.1%=0.9%
 金額は
   3,775,271千円×0.009=33,977千円
  である。

(3) 原価・管理費割合
 生鮮魚介卸売業の原価と、商売を行っていくための管理費の売上高に対する割合である。
      87.2%+5.6%=92.8%

(4) 家賃
 生鮮魚介卸売業店舗の場合3,775,271千円の売上高を得るためには、原価・管理費としてそれの92.8%の金額を使っている。
 その売上高を生み出すために使われている土地・建物の必要諸経費は33,977千円の金額である。

 生鮮魚介卸売業の原価・管理費は売上高の92.8%であり、その売上高を得るために使われている土地・建物も、その業種に使われているからには、その業種の原価・管理費割合の中で売上高に貢献していると考えられる。

 その貢献額が家賃であり、必要諸経費33,977千円を0.928で除せば貢献する額、即ち家賃が求められる。
      33,977千円÷0.928=36,613千円
 この家賃は償却資産も含めた店舗の家賃である。そのため償却資産を控除する必要がある。
 前記『中小企業の経営指標』のP475に生鮮魚介卸売業の貸借対照表がある。健全企業11社の資産の部の固定資産の項に次の数字がある。

      土地・建物    184,415千円
      設備資産           32,199千円
       計              216,614千円
 設備資産とは償却資産である。
 土地・建物と設備資産を合計した金額に対して占める土地・建物の割合は

         184,415
    ─────────   =0.851                                   
         216,614
である。
 先に求められた償却資産を含む家賃に、土地・建物の占める割合を乗ずる。
      36,613千円×0.851=31,158千円
求める家賃は31,158千円である。

(5) 家賃割合
 求められた家賃は31,158,000円である。
 売上高は3,775,271,000円である。
 家賃割合は、

       31,158,000
   ──────────  =0.0083                                  
      3,775,271,000
0.83%である。
 生鮮魚介卸売業の売上高に対する家賃割合は、

                   0.83%
と求められた。

 上記求め方と同じ方法によって、野菜卸業(野菜・果実卸業)、食肉卸業の売上高に対する家賃割合を求めれば、下記である。


 (野菜・果実卸売業)

野菜・果実卸    
     
売上高 6066023 千円
欠損企業租税公課 4801 千円
     
減価償却 0.1
賃借料 0.4
保険料 0
租税公課 0.1
0.6
     
必要諸経費 36396 千円
     
原価割合 91
管理費割合 3.3
94.3
     
設備資産込み家賃 38596 千円
     
土地建物価格 185079 千円
設備資産 19438 千円
204517 千円
     
土地建物割合 0.905  
     
家賃 34929 千円
     
家賃割合 0.58


(食肉卸売業)

食肉卸    
     
売上高 1509763 千円
欠損企業租税公課 2439 千円
     
減価償却 0.6
賃借料 0.3
保険料 0.2
租税公課 0.2
1.3
     
必要諸経費 19627 千円
     
原価割合 87.3
管理費割合 5.4
92.7
     
設備資産込み家賃 21173 千円
     
土地建物価格 83523 千円
設備資産 27781 千円
111304 千円
     
土地建物割合 0.75  
     
家賃 15880 千円
     
家賃割合 1.05


 卸売上高に対する家賃割合をまとめると、

      生鮮魚介卸売業   0.83%
            野菜・果実卸売業  0.58%
            食肉卸売業          1.05%
である。


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