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1390) 丸ビルの還元利回り

 丸ビルの還元利回りは、どれ程であろうか。

 分析してみる。

 丸ビルは、東京駅の西側・丸の内側の駅前広場に面し、皇居に向かう行幸通りにも面する丸の内の超一等地にある。

 ビルの所有者は、丸の内の大家と云われる三菱地所である。

 還元利回りは、

             純賃料
        ─────────    = 還元利回り                        
          土地・建物の価格

の算式で求められる利回りである。

 純賃料は、

         賃料総収入−必要諸経費 = 純賃料

の算式で求められる。

 まず最初に丸ビルの賃料総収入を求める。

 賃料総収入は、

          (支払賃料+共益費)×12 + 敷金運用益

で求められる。

 丸ビルの賃料は、坪当り59,000円と、鑑定コラム1380)「丸ビルの賃料の推測」で求められている。

 丸ビルの延床面積は、三菱地所のホームページのビル紹介の頁に、数値が載せられている。159,838.66u(48,351.19坪)である。

 有効面積は、73,451.07u(22,218.95坪)と記されている。

 レンタブル比(賃貸面積率)は、

                  22,218.95坪
               ───────  = 0.460                            
                  48,351.19坪

46.0%である。50%を切っている。廊下が広く、共用面積が広くゆったりしたビルの内部である。

 三菱地所の丸の内の平均レンタブル比は、平成27年3月期決算書の添付資料によれば、

            貸付有効面積   1,571千u
        ────────────────  = 0.608                  
            営業床面積        2,583千u

60.8%である。

 まとめると、

           丸ビルのレンタブル比           46.0%
           丸の内事務所ビルの平均レンタブル比        60.8%

である。

 貸事務所ビル所有者は、賃料収入を多く得たいために、賃貸面積を少しでも多くして、収入を拡大したい欲望に駆られる。

 それ故、出来るだけ共用面積を削り、削った分を事務所にして賃貸に回しがちである。

 共用面積が少なくなければ、それだけ清掃、電気代等が少なくて済む。それはビル経営の効率から云えば、よいこととなる。

 しかし、共用面積が少ないビルは、廊下等が狭く感じられ、万一火災になった場合の避難の際に、被害が拡大する可能性がある。

 総じて、共用面積の少ないことは、品等の落ちるビルに通じることになる。

 丸ビルの賃貸面積率が50%を切って、46%と云うことは、共用面積の方が、賃貸面積より大きいことを示す。

 これを知れば、丸ビルの設計思想が分かり、品等が如何に良いビルかが分かろう。

 丸ビルの月額賃料収入は、

             59,000円×22,218.95坪 = 1,310,918,050円

である。13.1億円である。この賃料は、共益費込みの賃料とみなす。

 年間賃料収入は、

              1,310,918,050円×12 = 15,731,016,600円

である。157.3億円である。

 賃料収入はどれ程かが、これで分かった。

 次に敷金の運用益を求める。

 丸ビルの敷金は、支払賃料の21ヶ月と鑑定コラム1386)「 丸ビルの敷金の推測」で分析した。

 敷金の金額は、

              1,310,918,050円×21 = 27,529,279,050円

275億円の敷金である。

 運用利回りを1.0%とする。

 敷金運用益は、

              27,529,279,050円 × 0.01 = 275,292,791円

である。

 総収入は、

           賃料収入        15,731,016,600円
           敷金運用益         275,292,791円 
             計                    16,006,309,391円

である。

 これで丸の内の賃料総収入が分かった。

 次は、必要諸経費を求める。

 丸ビルの必要諸経費率は、27.5%と、鑑定コラム1387)「 丸ビルの必要諸経費の推測」で分析されている。

 必要諸経費を求める算式は、

      賃料総収入×必要諸経費率 = 必要諸経費

である。

 丸ビルの必要諸経費は、

            16,006,309,391円×0.275 = 4,401,735,083円

である。44億円である。

 次は、純収益を求める。

 純収益を求める算式は、

           総収入 − 必要諸経費 = 純収益

である。

 丸ビルの賃料の純収益は、

          16,006,309,391円 - 4,401,735,083円 = 11,604,574,308円 
                                              ≒ 116億円
 
116億円である。

 これで、還元利回りを求める算式の分子が分かった。

 次に分母である丸ビルの土地・建物の価格を求める。

 建物価格は、鑑定コラム1388)「丸ビルの建物価格」で、462億円と求められている。

 土地価格は、鑑定コラム1389)「丸ビルの土地価格」で、4091億円と求められている。

 まとめると、丸ビルの土地・建物価格は、

       土地価格       4091億円
              建物価格               462億円
                計                  4553億円

である。

 還元利回りは、

             純賃料
        ─────────    = 還元利回り                        
          土地・建物の価格

の算式で求められることは、前記した。

 純賃料は、116億円であった。

 土地・建物は、上記より、4553億円である。

 算式に、純賃料、土地・建物の価格の数値を代入すれば、丸ビルの還元利回りは求められる。

 下記である。

                   116億円
               ────── =0.02547≒0.0255                       
                  4553億円

 丸ビルの還元利回りは、

                 2.55%

である。但し、この還元利回りは、キャッシュフローの減価償却前還元利回りである。

 およそ2ヶ月に渡り、長々とデータを駆使して分析して来た到着点の結果は、2.55%の数値であった。


  鑑定コラム1380)
「丸ビルの賃料の推測」

  鑑定コラム1386)「丸ビルの敷金の推測」

  鑑定コラム1387)「丸ビルの必要諸経費の推測」

  鑑定コラム1388)「丸ビルの建物価格」

  鑑定コラム1389)「丸ビルの土地価格」

  鑑定コラム1391)「丸ビルの減価償却後還元利回り」

  鑑定コラム1392)「丸ビルの賃料、還元利回りの分析を終えて」

  鑑定コラム1481)「600億円のホテル売買」

  鑑定コラム1523)「丸ビルの還元利回りは2.51%(28年3月)」


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