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土地残余法は、対象地の上に賃貸建物を想定し、得られた純収益から土地価格を求める手法である。
2つの手法がある。
1つ目は、純収益を総合還元利回りで除し、想定複合不動産の全体の収益価格を求め、それより建物帰属収益は建物価格であるとして,建物価格を控除して求める手法である。
2つ目は、純収益から建物帰属収益を控除し、残された純収益が土地帰属収益とし、それを土地還元利回りで除して求める手法である。
今回論じるのは、上記の2つ目の求め方の土地残余法である。
2つ目の土地残余法の収益還元法は、下記の算式で求める。
総収入−総費用=純収益
純収益−建物帰属収益=土地帰属収益
土地帰属収益÷土地還元利回り=土地収益価格
下記条件によって、土地収益価格を求めていた不動産鑑定書があった。
土地の還元利回りは4.5%としていた。そして、その利回りは減価償却後利回りであると明言していた。即ち4.5%の還元利回りの中には減価償却の要因は含まれていないということである。
比準価格70,000,000円の土地上に賃貸建物を想定し、その建物価格は39,400,000円とする。
想定賃貸建物の総収入等は、下記である。
総収入 7,480,000円
総費用 1,380,000円
純収益 6,100,000円
建物帰属収益 2,667,380円
土地残余収益 6,100,000円−2,667,380円=3,432,620円
土地収益価格 3,432,620円÷0.045≒76,280,000円
建物帰属収益2,667,380円は、次のごとく求められていた。
建物を躯体部分と設備部分と分け、躯体の経済的耐用年数を30年とする。
設備の経済的耐用年数を15年とする。
利率4.5%、期間30年の元利均等償還率(注)は0.0613、期間15年の元利均等償還率は0.0931である。
(注 元利逓増償還率は、賃料上昇率を0とすれば、その式は元利均等償還率になる)
躯体と設備の価格割合を0.8:0.2とする。
上記償還率と価格割合から、
0.0613×0.8+0.0931×0.2=0.0677
の利率を求める。
この利率を建物価格に乗じて、建物帰属収益を、
39,400,000円×0.0677=2,667,380円
と求める。
この土地残余法の求め方は、おかしいと思わないか。
建物帰属収益を求める建物期待利回りの個所である。
0.0677は、建物価格に乗じて建物帰属収益を求めていることから、この値は建物期待利回りである。
0.0677の建物期待利回りは、土地還元利回り4.5%の値がベースになって求められている。
その求め方がおかしい。
0.0677という値は、4.5%という土地の利回りを、金利に見立て、期間27年(躯体の耐用年数相当の30年×0.8+設備の耐用年数相当の15年×0.2=27年)で土地購入資金を借り入れた場合の元利均等償還率であると考えられるだけである。
その値が、類型の異なる建物の期待利回りにどうして変換するのか。
土地の4.5%の利回りが、期間を考えることによって値が変わるのは、4.5%の利率の期間に対応する利息分が上乗せされるだけで、土地の利回りであることには変わりは無い。
それが類型の異なる建物の期待利回りになるという論理など、成り立たない。
もし建物の期待利回りに変換するというならば、その土地の類型がどの様な論理で建物の類型に変換するのか、論理的に説明する必要があろう。
その不動産鑑定書には、その変換する論理の説明は全く無い。
4.5%が6.77%になり、その差の2.27%が建物の類型に変換する値であるという説明がなされるかもしれないが、2.27%は利息であり、建物の類型要因によるものでは無い。
土地の利回りの利息が加算されると建物の期待利回りになるという論理は、理論として通用するであろうか。私には理解し難いことである。
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