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鑑定コラム1901)で、後日著書に保証金について記述しているから、それを転載すると記した。
著書『改訂増補 賃料<地代・家賃>評価の実際』(プログレス 2017年2月)のP28で、保証金について記述している。
その内容を下記に転載する。
****
3 保証金
保証金とは、不動産の賃貸借契約に際して、賃借人から賃貸人に差入れされる一時金の一つである。
その性質は、家賃の滞納や賃借人の責で補修する必要がある場合に、その金額を担保するものである。
目的とするものは、敷金と同じであるが、授受する金額が敷金とは比べものにならないくらい多額である。
保証金の性質として敷金の性質を上げたが、判決例で見ると、次の3つがあげられる。
@ 敷金としての性質(東京地判昭和54年5月30日)
A 金銭消費貸借の性質と敷金の性質のもの(大阪高判昭和58年2月25日、東京地判昭和63年10月26日、東京 地判平成2年5月17日)
B 金銭消費貸借の性質(最判昭和51年3月4日)
@は、授受されているのは保証金のみで、その金額が一般的な敷金の金額の範囲にあれば、その場合は敷金の性質と考えてよい。
しかし、保証金の外に敷金名目の一時金が授受されている場合には、保証金の説明がつかない。ダブルの敷金であるとは云えなかろう。
敷金と保証金が併存して授受される場合があるのかと問われれば、賃料の鑑定評価においては、良く遭遇する。
Aは、保証金の金額が月額支払賃料の50ヶ月の場合、20ヶ月分が敷金、30ヶ月分が保証金と判断するごとくである。
Bは、保証金の授受は、賃貸借契約によるものでなく建設協力金の場合は、金銭消費貸借契約によるものという考え方である。
保証金を解釈したとしても、それは賃貸借に伴って授受されるものであって、別途金銭消費貸借契約が行われるものでは無い。賃貸借契約が無ければ、建設協力金の性質の保証金の発生は無い。
建物を新しく建てる時は、建設協力金を出すのは建物完成後に入居を条件とした賃借人であるが、建物が完成し、20年程の時間が経って、当初の賃借人が退去し、その後に入居する賃借人に対しても建設協力金名目の保証金を賃貸人は要求出来るであろうか。
建物建築後20年経ち、新しく入る賃借人との間で、月額支払い賃料の100ヶ月の保証金が授受された場合、それを建設協力金の保証金と解釈することは困難では無かろうか。別の性質がその保証金にはあると考えた方がよいでは無かろうか。
建設協力金は金銭消費貸借契約のものであるから、貸主が倒産した場合は、保証金は貸主に返却する必要がないということになる。
これが昭和51年3月4日の最高裁の判断である。
この考えが、現在も引き継がれている。
賃借人の知らないところで、貸主が不良債権をこしらえて倒産したら、貸主所有のビルに入っている賃借人の支払賃料の100ヶ月分等の保証金は、返済されなくなるというのである。
随分と身勝手な法理論である。
私はこの法理論には、断固として反対する。
最高裁の誤った悪い判例の一つと私は思っている。
保証金はそのビルの賃貸借に伴って授受されているものであって、賃借人がそのビルを借りている間は、その保証金は無くなるものではない。
例え競売によって所有者が変わろうとも、その保証金は競売落札者に引き継がれて賃借人に返却されるべきものである。
上記@ABは、保証金の性質をいずれも正しく説明仕切れていない。
私は上記3つの性質とは異なった別の性質が、保証金にはあると考えている。
4つ目の性質である。
それはどういうものか。
それは、「場所的利用の価値の対価」の性質と考える。
敷金を未払賃料を担保するものと考えれば、月額支払賃料の100ヶ月の賃料の未払を想定することは現実的でないことから、100ヶ月分の保証金は著しく高く、敷金とは認められない。敷金として認められるのは、最大でも6〜10ヶ月程度の金銭であると言うことになる。
一方、授受される保証金が建設協力金と考えれば、その金額は建物の建設費が限度である。
建物建設費がu当り30万円とすれば、その金額の授受が保証金としての限界である。
しかるに、建物面積で換算してu当り100万円(支払賃料をu1万円と、u当り100万円は、支払賃料の100ヶ月分となる。)の金銭が保証金として授受されている場合、それは建設協力金としての保証金と言えるものであろうか。
建物建設費をオーバーしていることから、それは建設協力金とは云えないであろう。
その授受されている保証金は建設協力金ではなく、何か別の要因が保証金を形成していると考えざるを得ない。
それは何か。
それは、当該場所を独占的・排他的に利用出来て営業収益を得ることが出来る権利によって発生する「場所的利用の価値の対価」が、保証金の大きな形成要因ではなかろうかと私は考える。
渋谷・銀座の一等地で、月額支払賃料の100ヶ月分の保証金の授受が行われるのは、その場所の場所的利用の価値は、それだけの金額を支払(貸し主に預ける)ってでも価値があるからでは無かろうか。
場所的利用の価値が渋谷・銀座の一等地より低い所は、支払賃料の30ヶ月とか40ヶ月の保証金の金額となる。
全く場所的利用価値の低い所は、敷金の本来の未払賃料を担保するためとして、6〜10ヶ月の保証金の金額になろう。
支払賃料の100ヶ月分等の多額な保証金の授受には、預けられる賃貸人は大きな利益を得る。それの反作用として、預け入れる賃借人には、強い借家権価額が発生する。多額な保証金の授受に伴う借家権価額の発生については、後記で別途述べる。
強い借家権価額が、競売によってゼロになるような、不公平な権利侵害も甚だしい身勝手な法理論には私は同意しかねる。
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