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1918)製造業の工場価格を売上高に対する土地建物回転率で求める方法

1.先の鑑定コラム1915)「トヨタ自動車売上高30兆円 土地建物価格は売上高の20.0%」の記事で、トヨタ自動車の2019年3月期の売上高は30兆円余と記した。

 そして、その売上高に対して土地建物の価格は、6兆円余であり、その割合は0.205であると記した。

 加えて下記のごとく述べた。

 2001年6月に共著で発行した『民事再生法と資産価格』P219(清文社) の「輸送用機器製造全体」の売上高に対する土地建物の価格割合は、0.20である。中小企業のデータによる分析割合より求められている『民事再生法と資産価格』(田原ほか共著)の分析割合と、30兆円の売上高のトヨタ自動車の分析割合とほぼ一致することは偶然かと述べた。

 『民事再生法と資産価格』(以下「前書」と呼ぶ) は、製造業の売上高と土地建物の回転率の関係を分析し、土地建物の回転率と売上高から製造業工場の土地建物価格の求め方を述べている。

 その求め方について、前書の転載を交えて述べる。

2.売上高に対する土地建物回転率による土地建物価格の有効性

 売上高に対する土地建物の回転率から土地建物価格を求める有効性については、前書P215で、ホテルの価格を例にして記している。その内容を下記に転載する。

****


 ホテルの売買などにおいては、年間売上高を物差しにして売買価格が決められる場合がある。

 年間売上高が1億円であったホテルの場合、1.2億円で売買価格が決められる類のごとく、当該物件でどれ程の売上高が実績としてあるのか、その実績売上高に特定の倍率を乗じて価格を決めるのである。上記ホテルの場合、売上高の1.2倍が価格として決められたのである。

    売上高×倍率=不動産価格

の式による求め方である。

 ホテルの価格を売上高の1.2倍と把握する方法は、あながち根拠の無いものではない。

 『中小企業の経営指標』12年版(中小企業庁編 中小企業診断協会発行 同友館発売)690頁のホテルの固定資産回転率は、平均1.0(標準偏差0.7)である。

 地域別では、
       観光地帯          1.3
       その他地帯  20室以下   1.6
                   20室以上   0.9
である。

 売上高の1.2倍のホテル価格ということは、ホテルの回転率は

       1/1.2=0.83

ということである。

              χ−μ
          z=───                                                 
        δ

より
               0.83−1.0
          z=───────                                         
         0.7

           z=-0.242
 z値が0.242の確率は0.405で約40%である。

 即ち、ホテルの売物件が10件あったとすると、4件は売上高の1.2倍の価格の物件があるといえる。

 このことから考えて、売上高の1.2倍というホテル価格の把握は、決して的はずれの価格の求め方ではない。

****


3.土地建物回転率

 固定資産は必ずしも土地・建物のみというわけでは無い。機械装置などの償却資産も含まれる。
 償却資産を除いて、土地・建物と売上高の関係を分析する。

       売上高
         ─────────                                         
          土地+建物価格

の算式によって求められる割合を「土地建物回転率」と呼ぶこととする。

4.工場の土地建物回転率

 前書P217で、工場の土地建物回転率について、次のごとく記している。転載する。

****


 ホテルの売買にあっては、前記したごとく売上高に倍率を乗じて価格を決める方法があることを前記した。

 同じ考え方を工場の売上高、土地・建物価格に当てはめることも可能である。この方法による場合の倍率の数値を分析する。

   売上高      18.76億円
   土地建物価格      4億円

の工場があったとする。

 土地建物の回転率は

  18.76 
    ─── = 4.69                                                  
      4

である。

 売上高と土地建物価格の割合の関係を

   
    土地建物価額
   ─────── = 割合                                           
       売上高

とすると、この式は

            1
   ──────── = 割合                                         
      土地建物回転率

に同じということになる。

        4
   ──── = 0.2132                                               
   18.76


1 ──── = 0.2132 4.69

 上記分析より売上高に土地建物回転率の逆数を乗ずれば、その土地建物の価額が求められるといえる。

        売上高    回転数の逆数

1     18.76億円×───   4.69
   =18.76億円×0.2132
=3.9996億円≒4億円(土地建物価額)

****


5.平均値

 前記した『中小企業の経営指標』12年版のデータを使用して、工場の土地建物回転率とその逆数の数値を求めた結果の平均は、下記であると前書はP218で述べる。回転率の逆数とは、売上高に対する土地建物価格の割合である。

 「業種別工場の平均値は次の通りである。

   土地建物回転率    5.4回転
   回転率の逆数          0.23

 工場の土地建物の価額は、概観的には売上高に0.23を乗じれば、おおよその価額を把握することが出来ることになる。

   売上高×0.23=工場土地建物の
          おおよその額

 この金額は、あくまでも1つの物差しであり、積算価格、収益価格で工場の価格を決定すべきである。」

6.業種別一覧

 業種別製造業の土地建物回転率、売上高に占める土地建物価格割合の一覧表を下記に記す。前書P219〜222の転載である。データ分析に使用したデータは、『中小企業の経営指標』12年版(中小企業庁編 中小企業診断協会発行 同友館発売)掲載のデータである。


業種   売上高  千円 土地建物価格千円   土地建物回転率 回転率の  逆数の割合
             
食料品製造全体   1876424 400379   4.7 0.21
飲料・飼料等製造全般   1669350 342577   4.9 0.21
繊維工業全体   1319419 288775   4.6 0.22
衣服・繊維製品全体   952275 232546   4.1 0.24
木材・木製品全体   730085 155745   4.7 0.21
家具・装備品全体   692763 158442   4.4 0.23
パルプ・紙加工全体   2316487 525513   4.4 0.23
出版・印刷全体   1238600 260418   4.8 0.21
化学工業全体   2787459 789974   3.5 0.28
ゴム製品製造全体   3445841 749686   4.6 0.22
革・毛皮製造全体   1707014 194870   8.8 0.11
窯業・土石製品全体   1438172 362714   4.0 0.25
鉄鋼業全体   2638615 644636   4.1 0.24
非鉄金属製造全体   2863516 741334   3.9 0.26
金属製品全体   1142443 283016   4.0 0.25
機械器具全体   1435449 344636   4.2 0.24
電気機械器具全体   2344293 460986   5.1 0.20
輸送用機器製造全体   3152826 615620   5.1 0.20
精密機器製造全体   1429200 329040   4.3 0.23
プラスチック製品全体   1949579 416895   4.7 0.21
             
             
缶詰製造   4986253 673570   7.4 0.14
野菜漬物   1874858 434534   4.3 0.23
味噌製造   783824 132914   5.9 0.17
醤油アミノ酸   1136947 336383   3.4 0.30
水産練製品   1024867 219300   4.7 0.21
冷凍水産物   1653678 82179   20.1 0.05
ソース製造   853783 272989   3.1 0.32
精穀・製粉   2463168 568650   4.3 0.23
パン・菓子製造   1214695 421408   2.9 0.35
麺類製造   1256712 264562   4.8 0.21
清涼飲料製造   2823540 472975   6.0 0.17
酒類製造   1348253 325692   4.1 0.24
製茶   1310381 273115   4.8 0.21
飼料・有機肥料   3956714 467851   8.5 0.12
既製服製造   947903 204608   4.6 0.22
寝具(毛布)製造   1303409 519718   2.5 0.40
タオル製造   1060473 104655   10.1 0.10
布帛製品製造   644114 54630   11.8 0.08
一般製材業   911691 231364   3.9 0.25
合板製造   946304 98309   9.6 0.10
木製家具製造   1036376 256255   4.0 0.25
金属製家具製造   856280 138384   6.2 0.16
建具製造   360076 74840   4.8 0.21
紙製造   3908795 1443003   2.7 0.37
段ボール製造   2314695 1318913   1.8 0.57
紙製品製造   5096216 1121280   4.5 0.22
段ボール箱製造   1729798 385003   4.5 0.22
紙器製造   1913078 214022   8.9 0.11
紙製衛生材料   2044544 310383   6.6 0.15
印刷業   1400284 270975   5.2 0.19
写真製版業   858105 457695   1.9 0.53
製本業   719431 180862   4.0 0.25
工業薬品製造   1984564 283208   7.0 0.14
合成染料・顔料   4143109 923988   4.5 0.22
石鹸・合成洗剤   1803006 510702   3.5 0.28
塗料製造   2519519 497428   5.1 0.20
医薬品製造   3755786 918117   4.1 0.24
ゼラチン・接着剤   1849399 518180   3.6 0.28
革製履物製造   1815385 185478   9.8 0.10
ガラス・同製品製造   1529650 362539   4.2 0.24
セメント・同製品製造   2397054 584475   4.1 0.24
煉瓦・タイル製造   675635 225092   3.0 0.33
飲食陶磁器製造   182375 58898   3.1 0.32
工業セラミック製品   304382 120508   2.5 0.40
採石製造   615288 242902   2.5 0.39
磨棒鋼製造   5241810 936410   5.6 0.18
銑鉄鋳物製造   1713970 459466   3.7 0.27
鍛工品製造   2683210 582742   4.6 0.22
鋳鉄管製造   2671235 800047   3.3 0.30
アルミ2次精錬   2902154 511833   5.7 0.18
電線・ケーブル製造   3579833 1040248   3.4 0.29
アルミダイカスト製造   1116130 258771   4.3 0.23
ブリキ缶製造   1463410 286648   5.1 0.20
洋食器製造   2524731 288133   8.8 0.11
建築金物製造   1182978 204119   5.8 0.17
鉄骨鉄板加工   1592489 358985   4.4 0.23
鋼製建具製造   1211131 249371   4.9 0.21
アルミプレス製品   901091 133002   6.8 0.15
金属プレス製品   1166406 336944   3.5 0.29
電気溶融メッキ   1233144 397723   3.1 0.32
金属熱処理   436673 153853   2.8 0.35
アルマイト加工   1351166 518774   2.6 0.38
ボルト・ねじ製造   840840 105248   8.0 0.13
金属製スプリング   801267 129612   6.2 0.16
内燃機関製造   2754993 763668   3.6 0.28
農業機械製造   2059957 878585   2.3 0.43
建設機械製造   2004798 318145   6.3 0.16
金属工作機械製造   1529946 364711   4.2 0.24
金属加工機械製造   710938 167688   4.2 0.24
繊維機械製造   1836296 489234   3.8 0.27
食料品加工機械製造   1775745 448798   4.0 0.25
木工機械製造   2450525 597055   4.1 0.24
印刷・紙工機械製造   2112773 502705   4.2 0.24
化学機械製造   1744728 243606   7.2 0.14
ポンプ・圧縮機械製造   2174463 382898   5.7 0.18
荷役運搬機械製造   591444 156353   3.8 0.26
歯車装置製造   641065 286882   2.2 0.45
縫製機械製造   2105863 306752   6.9 0.15
金属用金型製造   1157289 290016   4.0 0.25
発電器・モーター製造   1680092 169377   9.9 0.10
電力制御装置製造   1680092 327539   5.1 0.19
配線器具製造   1173540 889592   1.3 0.76
電気照明器具製造   1360294 172311   7.9 0.13
無線通信機器製造   4216060 182412   23.1 0.04
電気音響機器製造   5318031 356958   14.9 0.07
電子応用装置製造   3693553 657936   5.6 0.18
コンデンサー製造   1686131 361580   4.7 0.21
プリント回路製造   2977776 667985   4.5 0.22
自動車部品製造   2623008 604670   4.3 0.23
鉄道車輌部品製造   566903 108714   5.2 0.19
自転車製造   4084644 590053   6.9 0.14
船舶製造   6061831 937341   6.5 0.15
計量測定器製造   1383485 200402   6.9 0.14
ガス・水道メーター・秤   1396061 262959   5.3 0.19
圧力流量計製造   2505930 235141   10.7 0.09
精密測定器製造   364315 89700   4.1 0.25
試験分析機器製造   741020 200402   3.7 0.27
医療用機器製造   2371970 763263   3.1 0.32
光学機器・レンズ製造   793209 239604   3.3 0.30
射出成形プラスチック   2250301 456528   4.9 0.20
プラスチックフイルム・シート   3813562 1077888   3.5 0.28
圧縮射出成形製造   1920761 329078   5.8 0.17
発泡プラスチック製品   1859553 426756   4.4 0.23
楽器製造   223137 61515   3.6 0.28
娯楽・玩具製造   3610649 290946   12.4 0.08
運動用具製造   1329011 282738   4.7 0.21
畳製造   114152 21577   5.3 0.19
マッチ製造   1935056 560883   3.5 0.29
             
平均(業種別)         5.4 0.23



7.民事再生法の資産価格

 民事再生法の工場の土地建物の価格を求めるには、上記の土地建物回転率の逆数を、当該工場の売上高に乗じ、それに早期売却要因修正率0.67を乗じて求める。

 前書発売当初、前書を読んだ銀行の融資部或いは債権回収担当の人から、役に立ったとか、利用させてもらったという声を良く聞いた。

 共著は少し役にたったようである。

 勿論この手法のみでなく、積算価格、企業収益からのDCF法によって求めた収益価格を求めて、民事再生法の資産価格を求めなければならないことは云うまでも無かろう。

 但し、企業収益からの収益価格を求める場合、最大のネックは経営に属する配分利益をどの様にして求めるのかの問題にぶち当たる。この問題を論理的に解決する必要がある。根拠なく20%だ、30%だとする訳には行かない。

 前書には、土地建物回転率より求める方法の他に、売上高より土地建物に帰属する収益を求め、その収益からDCF法で収益還元法を求める求め方も記述してある。そのDCF法は、借入金を考えたDCF法である。

 製造工場を建てる企業は、全て自己資金で工場を建てると云うことは、先ず無い。

 銀行からの借入金によって事業展開を考えている。

 であるから、DCF法は借入金を考えて求めなければ、求められる収益価格は現実から遊離した価格となってしまう。

 借入金が利息と元金を返済期間内に返済し終わるという収益価格でなければ、何の役にも立たない。


  鑑定コラム1915)
「トヨタ自動車売上高30兆円 土地建物価格は売上高の20.0%」

  鑑定コラム1916)「『民事再生法と資産価格』のはしがきと目次」

  鑑定コラム1919)「2冊消え1冊入る民事再本」

  鑑定コラム1920)「1冊消え2冊入る民事再本」


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