1.はじめに
不動産鑑定士の方から、工場の鑑定評価についての相談を受けた。
相談の概略内容は、以下のごとくであった。
「工場の鑑定評価は、土地建物の積算価格だけの分析の鑑定評価のみで良いのであろうか。
売上高が分かっているので、その売上高に基づいて、工場の土地建物の価格を求めるべきでは無いのか。
田原不動産鑑定士が、以前話されていたことを思いだして、相談するのですが、売上高からの求め方は、どの様にしたら良いのか。」
工場の鑑定評価において、土地建物の価格を加算する原価法の1手法の鑑定評価によるだけでなく、併せて、当該工場の製品出荷高(売上高)より土地建物の価格を求めることを行った方がよい。
立派な工場建物を建て、高額な設備を据え付けたとしても、その工場の価値は製品出荷高(売上高)で決まるわけである。売上高の低い工場は、それに応じた価値しか無い。
工場の売上高から土地建物の価格を求めるには、純収益の配分の分析手法が確立していなく、実務の不動産鑑定評価ではあまり行われていない。
それは、企業利益は、労働・資本・経営・不動産の4つの項目に配分されるが、その中の経営に属する配分が分からないといって分析は行われていない。
しかし、いつまでも売上高からの価格分析を行わないことは、不動産鑑定評価の進歩・前進につながらない。
私は、2001年6月に他の不動産鑑定士と共著で『民事再生法と資産評価』(清文社)という本を共著で出した。
その共著の本の中で、工場の売上高からの分析による土地建物の価格の求め方を発表した。新しい求め方であり、経営に属する利益割合を導き出した。
工場の売上高から土地建物の価格の求める分析に使用したデータ数値は、中小企業庁が調査発表している『中小企業の原価指標』平成12年版(中小企業診断協会、株式会社同友館、平成12年3月)による。
その著書で、工場の売上高からの分析による土地建物の価格の2つの類似的な求め方を論述した。
著書で論述した内容を、余分な個所を省いて、下記に転載補強する。
2.条件
食料品製造工場の土地建物を求めるとする。売上高等は、下記とする。
売上高 1,876,424千円 総原価 1,584,483千円
1,876,424千円−1,584,483千円 =291,941千円
291,941千円×0.5=145,971千円
291,941千円×0.13=37,952千円
291,941千円×0.051=14,888千円
不動産への配分利益 =純利益−(法人税等+労働利益+資本利益+経営利益) =291,941千円−(145,971千円+0円+37,952千円+14,888千円) =93,130千円
93,130千円×0.729=67,891千円
67,891千円÷0.17=399,358千円
399,358千円と求める。