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2081)食料品製造工場の土地建物の価格分析例(その2)

1.はじめに

 鑑定コラム2075)で、食料品製造工場の土地建物の価格分析例(その1)を記した。

 (その1)の求め方は、企業収益の純収益より、税金、労働、資本、経営に属する利益を控除して、不動産に属する利益を求めて、土地建物の価格を求る手法であった。

 (その1)の求め方は、純収益より経営等に属する各利益を控除する求め方であるから、その各利益割合が分からないと分析出来ない。

 もう1つの求め方(「その2」と呼ぶ)は、それらの各利益配分割合を分析せずに求める手法である。

 (その2)の求め方を説明する。

 (その1)と同じ食料品製造工場とする。売上高等は同じである。

2.売上高

 売上高は、1,876,424千円である。

3.家賃割合
 
 食料品製造工場である。

 製品売上高に対する家賃割合は、共著『民事再生法と資産評価』(清文社)のP97の「製品売上高に対する家賃割合」によれば3.6%である。この割合を採用する。

4.工場の家賃

 製品売上高に家賃割合を乗ずる。

   1,876,424千円×0.036=67,551千円

 工場の家賃は
     年額   67,551千円
である。

5.還元利回り(粗還元利回り)

 不動産への配分利益を還元利回りで除せば、工場の価格が求められる。還元利回り(粗還元利回り)は、前掲共著のP199の「工場の利回り」で分析されている割合を参考に17%とする。

6.収益価格

 工場の年間賃料は67,551千円であり、粗還元利回りは17%である。

   67,551千円÷0.17=397,359千円

 工場の収益価格を
       397,359千円
と求める。

 上記によって、売上高 1,876,424千円の食料品製造工場の土地建物の価格を求めることが出来た。この求め方は(その2)である。

7.まとめ

 工場の売上高より純収益をもとめ、その純利益のうち不動産に配分される利益より土地建物の価格を求める手法が、(その1)の求め方で、求められた土地建物の価格は、399,358千円であった。

 もう1つの(その2)の求め方は、工場の売上高より、その売上高に相応しい標準的な家賃割合を乗じて家賃を求める。その家賃を経費込みの標準的な粗利回りで除して土地建物価格を求める手法である。(その2)の求め方で求められた土地建物の価格は、397,359千円である。

 例題は、製品売上高1,876,424千円の食料品製造工場である。この例題の売上高は、中小企業庁編の『中小企業の原価指標』(平成12年発行 同友館)P43の平均売上高を採用している。

 そして同じ中小企業庁編の『中小企業の経営指標』(平成12年発行 同友館)P330の食料品製造業の健全企業224社の土地建物価格は、400,379千円である。

 例題の食料品製造工場の積算価格は、400,379千円ということである。

 求められた(その1)、(その2)の価格は、積算価格との開きは殆ど無い。

  (その1)、(その2)の価格は十分説得力がある客観的な適正な価格と云える。

 そのことは、(その1)、(その2)の価格の求め方に従えば、適正な価格を求めることが出来るということになる。加えて積算価格の妥当性を証明する価格となる。

   売上高に対する(その1)、(その2)、積算価格の価格の割合は、

 (その1)
  
               399,358千円
          ────────    =  0.213                             
             1,876,424千円

 (その2)
  
               397,359千円
          ────────    =  0.212                             
             1,876,424千円

 (積算価格)
  
               400,379千円
          ────────    =  0.213                             
             1,876,424千円

 売上高に0.213を乗じれば、土地建物の価格が求められるということである。

 上記割合は、
              土地建物価格
          ─────────                                        
                売上高
の算式である。

 上記算式の逆数の算式、
                売上高
          ─────────                                        
              土地建物価格
は、土地建物を固定資産と考えれば、固定資産回転率と云うことになる。

 例題の場合、
                   1
             ─────= 4.70                                      
                 0.213
固定資産回転率4.7倍と云うことになる。

 共著『民事再生法と資産価格』のP218に、業種別工場の平均土地建物固定資産回転率は5.4倍と求められている。回転率の逆数は0.23と求められている。

 上記求められた(その1)、(その2)の価格は、業種別工場の平均回転率の逆数から検討して、十分妥当性のある価格といえよう。

 売上高に占める固定資産の割合より、土地建物の価格を把握する方法は、中小企業の工場の場合に当てはまる経験則理論であるかもしれないが、大企業の工場の価格には当てはまらないであろううという反論が当然予測されるが、鑑定コラム1915)で、その反論は否定される。

 その鑑定コラムで、世界の企業の中で売上高上位6番目のトヨタ自動車の2019年3月の決算書から、論証されている。

 その鑑定コラムの記事の概略を記せば、下記である。

 2019年3月期のトヨタ自動車の売上高は、30兆2256億円である。

 有形固定資産の土地建物の価格は、

          土地   1,386,308百万円
          建物   4,802,175百万円
          計        6,188,483百万円

である。

 売上高に占める土地建物の価格割合は、

                 6兆1884億円
            ─────────   = 0.205                           
                30兆2256億円

0.205である。売上高18億円余の食料品製造工場の0.21とほぼ同じ割合である。

 大企業の工場の土地建物の価格を求める場合にも、固定資産回転率の逆数を使用して土地価格を把握することは十分出来る。その求め方は、他の手法で求められた価格の妥当性の検証にも使用出来る。


  鑑定コラム2075)
「食料品製造工場の土地建物の価格分析例(その1)」

  鑑定コラム1915)「トヨタ自動車売上高30兆円 土地建物価格は売上高の20.0%」

  鑑定コラム1918)「製造業の工場価格を売上高に対する土地建物回転率で求める方法」

  鑑定コラム1916)「『民事再生法と資産価格』のはしがきと目次」

 (著書書評)
 『民事再生法と資産評価』

  鑑定コラム2089)「レナウンが倒産し民事再生手続に入った」


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