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1.前回の還元利回りの求め方の講義
前回の講義で、個別不動産の還元利回りの求め方については、下記のごとく話した。
@ 還元利回りを求める算式
還元利回りを求める算式は下記である。
還元利回り=標準粗利回り×(1−必要諸経費率) ・・・・@式
A 標準粗利回り
上記標準粗利回りをどの様にして求めるのかと云うと、下記の算式で求める。
イ,標準粗利回り
年間賃料収入を、その収入を生み出す土地・建物の不動産の価格で除した利回りを粗利回りと呼ぶ。必要諸経費を含んだ賃料を土地・建物の価格で除した利回りである。土地に建つ建物が、その土地に許容される容積の建築面積を持つ建物の場合の利回りを「標準粗利回り」と呼ぶこととする。
賃料総収入
───────── = 粗利回り(標準粗利回り)・・・・A式
土地建物の価格
ロ,標準粗利回りの求め方の算式
標準粗利回りは、上記A式を変型すると、下記式となる。
標準粗利回り=
(u当り賃料×12×共益費修正率×運用償却額修正率×空室率修正 ×経年賃料修正率×容積率×賃貸面積率)÷(土地単価+建物工事費単価×容積率×償却修正率)・・・・B式
このA式からB式への変型への説明は、前回の講義で説明した。
2.決算書に記されているデータ
上記標準粗利回りの算式と必要諸経費率によって、当該賃貸建物の還元利回りは求められ、又、知ることが出来る。
その求められた単体ビルの還元利回りが、一般的な賃貸ビルの還元利回りと整合性がとれているか知る必要性もある。
一般的な賃貸ビルの還元利回りは、どれ程か。それを、どうすれば知ることが出来るか。それを知る1つの方法を述べる。
株式上場している企業が所有する賃貸不動産については、時価評価することが義務付けられている。
その時価評価の結果の価格等は、有価証券報告書・決算書に記されている。
この記載データより賃貸不動産の還元利回りを知ることが出来る。
日本の不動産業界の雄の1つである三菱地所の決算書より、三菱地所の賃貸不動産の還元利回りを知る方法について述べる。
純収益
─────── = 還元利回り
土地建物価格
である。
2019年3月期の三菱地所の決算書短信によれば、賃貸不動産に関するデータは、下記である。○印の中の番号は、添付決算書短信(添付省略)の中のデータの引用番号数字である。単位百万円。
期末簿価 6,953,534 @(決算短信P20 以下同じ)
賃貸収入 448,676 A
賃貸費用 283,816 B
差額 164,860 C
@の期末簿価が時価であることは、決算書短信P20の(注)2(1)書きで、「国内不動産については、主に、「不動産鑑定評価基準」に基づいて自社で算定した金額であります。」、(注)2(2)書きで、「海外の不動産については、主に現地の鑑定人による鑑定評価額であります。」と記されている。
Bの賃貸費用には、決算書短信P20の(注)書きで「なお、当該不動産に係る費用(減価償却費、建物管理費用、租税公課等)については、賃貸費用に含まれております。」と記されている。
差額のCは、純収益である。
3.償却後還元利回り
三菱地所の2019年3月期の所有する賃貸不動産の還元利回りは、
164,860百万円
────────── = 0.0237≒0.028
6,953,534百万円
2.8%である。この還元利回りは、注書きにあるごとく減価償却費は賃貸費用に含まれており、純収益には含まれていないことから、償却後還元利回りである。
4.償却前還元利回り
上記で求められたのは償却後還元利回りである。償却前還元利回りを求める。 ビル事業の減価償却費は、決算書短信P22のD(添付省略)より50,283百万円である。
164,860+50,283 215,143
────────── =───────=0.0309≒0.031
6,956,534 6,953,534
償却前還元利回りは、3.1%である。
(2019年6月6日、桐蔭横浜大学法学部での不動産鑑定評価の講義録に一部加筆して)
鑑定コラム1936)「丸ビルの償却後総合還元利回りは1.93%変わらず(2019年3月)」
鑑定コラム19)「還元利回りの求め方」
鑑定コラム405)「ある大学の不動産鑑定の1つのレポート課題」
鑑定コラム733)「還元利回りを求めるある大学の期末試験課題」
鑑定コラム459)「ある大学の不動産鑑定のDCF法のレポート課題」
鑑定コラム1940)「還元利回り=標準粗利回り×(1−必要諸経費率)の証明」
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