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かって小売業売上高日本一を極めたダイエーが、倒産した新潟鉄工所のごとくズタズタに切り裂かれるのを見るのは忍びがたい。食品を中心にしたスーパーマーケット事業のみを残し、その他事業は売却処分する方法がとられている。これがダイエー唯一の生き残り策なのか。
そうしたダイエーが、関連会社のレストラン「フォルクス」を売却した。(2005年2月23日 ダイエーHPプレスリリース)
売却したのは、ダイエーグループが保有する株式会社フォルクスの株式で、保有する株式25.25%のうち22.15%の 株式である。
この株式譲渡によって、フォルクスの大株主で筆頭株主の座をダイエーは降りた。
株式を購入したのは、「株式会社どん」という会社である。
株式会社どんは、埼玉県鶴ヶ島に本社を置き、関東一円で80店舗の「ステーキのどん」、「しゃぶしゃぶどん亭」という名前の飲食店舗経営を行っている。
売買価格は約23億円という。
フォルクスの売上高は170.46億円(2004年2月期)である。
取得株式割合での売上高は、
170.46億円×0.2215=37.75億円≒38億円
である。
売買価格は売上高に対して、
23億円÷38億円≒0.61
である。
売上高は売買価格の、
38億円÷23億円≒1.65倍
である。
売上高が取得価格の1.65倍しか無いのに、購入して大丈夫なのだろうかと少し気になる。
フォルクスは大阪を中心にして、茨城から鹿児島まで126店舗を持っている。
126店舗×0.2215≒28店舗
2,300,000,000円÷28店舗≒8200万円
投下資本に対する1店舗当りの価格は8200万円である。
1店舗当りの売上高は、
170.46億円÷126店舗≒1.35億円
である。
株式会社どんの売上高は121.7億円(2005年3月見込み)である。
1店舗当りの売上高は、
121.7億円÷80店舗=1.52億円
である。
1店舗当りの売上高は、「フォルクス」よりも「ステーキどん 」の方が12%程度多い。同じ業種のステーキ料理店ということもあって、株式会社どんの経営者はフォルクスを23億円で購入しても、投下資本の回収は出来ると判断したものと思われる。
しかし、フォルクスの営業利益はマイナスである。営業損失である。
株式会社どんの経営者のみがプロではない。フォルクスの経営者だってプロであった。そのプロが経営してもフォルクスは赤字であった。
フォルクスの2004年2月期の決算書を見ると、売上高に対する金額・割合は次の通りである。
売上高 17,046,198,000円 (100.0%)
原価 5,731,655,000円 ( 33.6%)
販売管理費 11,920,721,000円 (69.9%)
営業損失 602,157,000円 (△3.5%)
である。
販売管理費のうち、売上高に対して、
人件費 28.9%
地代家賃 17.8%
の割合を占める。
フォルクスの店舗は、所有権のものはほとんど無く、賃借建物が殆どである。
それ故、決算書の地代家賃は実質的には家賃である。
年間支払家賃は2004年2月期の決算書に依れば、2,928,861,000円である。
賃借面積は41,596.98平方メートルである。
2,928,861,000円÷41,596.98平方メートル÷12ヶ月=5,867円
賃料は平方メートル当り5,867円(坪当り19,400円)である。
支払賃料が高すぎる。
飲食店で売上高の17.8%もの家賃を支払っていたら、経営は行き詰まってしまう。
これら数値を見ると、フォルクスを購入した株式会社どんは、相当な荒療治をしなければならない。
投下資本の5年間での回収が、飲食店の目標とすべきものである。
BSEで牛肉料理店が痛手を被っているのは分かる。しかし、資本投下した以上はそんなことを言ってはいられない。
5年間の投下資本の回収は無理としても、7年間での回収は絶対行わなければ、資本投下の意味がない。
1÷7=0.142≒0.15
15%の営業利益の確保である。
15%の営業利益を確保するには、仕入れ原価を安くし、販売管理費の大幅カットが必要である。
仕入れ原価は現在の33.6%を30%にする。
販売管理費は、
100%−30%−15%=55%
55%にしなければならない。
現在の販売管理費は69.9%であるから、
69.9%−55%≒15%
15%のカットである。
現在人件費と地代家賃で46.7%(28.9%+17.8%=46.7%)を占めている。
他の販売管理費のウェイトは小さいことから、この2つの項目を大幅カットする。
カットは例えば、人件費9%のカット、地代家賃6%のカットを行えば、営業利益15%を確保出来る。
人件費 28.9%−9%=19.9%≒20%
地代家賃 17.8%−6%=11.8%≒12%
その他経費 23%
計 55%
となる。
即ちまとめれば、
売上高 100%
原価 30%
人件費 20%
地代家賃 12%
その他経費 23%
営業利益 15%
である。
家賃の平方メートル当り5,867円、売上高の17.8%の水準はあまりにも高すぎる。
ここに大なたを振るわないと、フォルクスの再建は難しいのでは無かろうか。
家賃の売上高に対する割合を12%の割合まで落とす必要性は絶対ある。
株式会社どんが、フォルクスを購入するために投下する23億円という金額は、株式会社どんの売上高に対して、
23億円÷121.7億円≒0.189
18.9%である。
これを企業の設備投資と考えれば、設備投資の額は売上高の20%以下であることが、健全経営する上の鉄則である。
設備投資額の限界は売上高の20%である。
それを超えた設備投資は過剰設備投資になり、以後経営を圧迫する原因となると、多くの先人の企業が身をもって示している。
恐らく、フォルクスを購入した株式会社どんの経営者は、その辺りのことは充分熟知しており、経営に素人の私が考える程度以上の、もっと優れたすごい経営再建計画を持っていて、フォルクスを高い利益を生み出す飲食店に変えるのでは無かろうかと思う。そうで無ければ23億円もの大金を出してフォルクスを買わないであろう。
飲食店の売買・家賃に関する鑑定コラムに次のものがあります。
鑑定コラム 35)
「ファミリーレストランの売買価格」
鑑定コラム 59)
「和食レストランの売買価格」
鑑定コラム 77)
「ダイエーの子会社売却」
鑑定コラム 18)
「店舗売上高と家賃割合」
鑑定コラム 25)
「牛どん吉野家の家賃6%」
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