○鑑定コラム


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

田原都市鑑定の最新の鑑定コラムへはトップページへ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ

2086)現在はどういう時期なのか(地価と国内総生産)

1.国内総生産の推移

@ 国内総生産とは

 国内総生産(Gross Domestic Product、略称:GDP)とは、国内で産み出された付加価値の総額を云う。

 生産側、支出側、分配側の3つの国内総生産があるが、理論上は3つの国内総生産は一致すると云われているが、現実は一致していない。

 その他に、名目国内総生産と実質国内総生産がある。

 名目国内総生産は、その時の市場価値で計算された国内総生産である。

 実質国内総生産は、インフレによって価格が変動してしまう。この価格変動の影響を排除した国内総生産を実質国内総生産という。

A 付加価値とは

 付加価値とは、労働を加えて新たに得られた価値を云う。

 例えばある商品を作って売る場合、原材料を仕入れてくる。その原材料に加工を加えて商品に仕上て、商品売却収入を得る。この加工を加えて得た収入から原材料費を差し引いた金額が付加価値である。

 付加価値を構成する項目は、下記である。

     付加価値額=人件費+支払利息等+動産・不動産賃借料+租税公課+営業純益

B 国内総生産の推移額(名目・支出側)

 内閣府が発表しいてる名目国内総生産(支出側)の各年の金額は、下記のとおりである。各年1月〜12月迄の年間合計金額を翌年1月1日の金額とみなす。これは、1月1日時点で発表されている地価公示の土地価格との関係分析するためである。

 例えば、2019年1月〜12月の1年間の国内総生産の金額を2020年1月1日時点の金額とすると云うことである。


元号 西暦 1月1日 国内総生産(支出側)兆円
昭和55年 1980年 1月1日  
昭和56年 1981年 1月1日 250.6
昭和57年 1982年 1月1日 268.8
昭和58年 1983年 1月1日 282.5
昭和59年 1984年 1月1日 295.3
昭和60年 1985年 1月1日 313.1
昭和61年 1986年 1月1日 333.6
昭和62年 1987年 1月1日 350.3
昭和63年 1988年 1月1日 366.3
平成元年 1989年 1月1日 393.6
平成2年 1990年 1月1日 421.4
平成3年 1991年 1月1日 453.6
平成4年 1992年 1月1日 482.8
平成5年 1993年 1月1日 495
平成6年 1994年 1月1日 495.2
平成7年 1995年 1月1日 501.5
平成8年 1996年 1月1日 512.5
平成9年 1997年 1月1日 525.8
平成10年 1998年 1月1日 534.1
平成11年 1999年 1月1日 527.8
平成12年 2000年 1月1日 519.6
平成13年 2001年 1月1日 526.7
平成14年 2002年 1月1日 523
平成15年 2003年 1月1日 515.9
平成16年 2004年 1月1日 515.4
平成17年 2005年 1月1日 520.9
平成18年 2006年 1月1日 524.1
平成19年 2007年 1月1日 526.8
平成20年 2008年 1月1日 531.6
平成21年 2009年 1月1日 520.7
平成22年 2010年 1月1日 489.5
平成23年 2011年 1月1日 500.3
平成24年 2012年 1月1日 491.4
平成25年 2013年 1月1日 494.9
平成26年 2014年 1月1日 503.1
平成27年 2015年 1月1日 513.8
平成28年 2016年 1月1日 531.3
平成29年 2017年 1月1日 535.5
平成30年 2018年 1月1日 545.8
平成31年 2019年 1月1日 547.1
令和2年 2020年 1月1日 554.4
      前年末の金額を翌年1月1日の金額とする。


C 名目国内総生産(支出側)の推移の推移グラフ

 上記データを縦軸に名目国内総生産(支出側)、横軸に年としてグラフに図示したのが、下図である。



2019年GDP



2.最高地価と名目国内総生産(支出側)の重ねグラフ

 左縦軸に最高地価(万円/u)、右縦軸に名目国内総生産(支出側)をとって、2つのグラフを重ねると、下記である。



2020年地価とGDP


 名目国内総生産と土地価格とは、1991年までは相関関係にあった。国内総生産が伸びると共に土地価格は上昇して来た。

 1991年より、アメリカに投資していた大量の資金が日本に戻り、土地購入資金は過剰流動となり、地価高騰の状況を引き起こした。平成バブルである。

 平成バブルが弾けると、それまで上昇していた国内総生産の伸びは止まり、横ばい状態になる。不動産バブル崩壊が国内総生産の伸長の足を引っ張った。

 2009年の不動産ファンドバブル崩壊で、国内総生産は再度低迷する。

 順調に伸びてきた日本経済を大きくぶっ壊したのは、平成バブルである。

 もし平成バブルが無ければ、あるいは過剰金融のコントロールがしっかりとなされていたのであれば、今頃は国内総生産は、例えリーマンブラザーズの倒産の不動産ファンドバブルの崩壊があったとしても、800兆円近くになっているであろうと云われている。

3.覚えておくこと

 一国の国内総生産は、その国の経済力を示す。国内総生産額によって世界各国の経済力、富裕力等の比較の尺度とされる。

 2018年の世界の名目国内総生産は、下記のとおりである。

 IMF2019年10月発表による。 単位10億ドル。

   1位  アメリカ    20,580(10億ドル)
      2位  中国      13,368
      3位  日本       4,971
      4位  ドイツ      3,951 
      5位  イギリス     2,828     
      6位  フランス     2,780
      7位  インド      2,718
      8位  イタリア     2,075
      9位  ブラジル     1,867 
     10位  韓国       1,720

 日本の名目国内総生産は、世界3位であり、金額は4兆9710億ドルである。

 アメリカは日本の約4倍、中国は日本の約2.7倍である。

 1ドル=110円の為替レートとすると、
              4.9710×110円=546兆8100億円≒547兆円
547兆円である。

 前記の2019年(1年遅らしてあるからこの値が2018年の国内総生産額)の総生産額は、547.1兆円であるから、金額の大きな違いはない。

 2020年、学生諸君が大学生活を送っている時期の日本の国内総生産は、554兆円であったと、一生覚えて居て欲しい。10年後、20年、30年後の生きている時の国内総生産を知って、554兆円の2020年と状態を比較して考えるのである。554兆円を比較尺度とするのである。

 私が大学生の時の日本の国民総生産(GNP、その頃は国内総生産の数値は無かった)は、30兆円であった。道路は舗装されていない。下水道はない。井戸水である。

 学食の素うどん一杯20円である。大学生の初任給は1万6000円である。

 桐蔭横浜大学の学食のかけうどん一杯の値段は今どれ程だろうか。大卒の初任給はどれ程か。

 30兆円と554兆円の差は、GDP金額で比較すれば、社会、経済、所得水準がどういう状態であるかがすぐ分かることになる。

    (2020年5月 桐蔭横浜大学での不動産鑑定の講義のレジュメの一部より)


  鑑定コラム2079)「東京の最高地価(平成29年〜令和2年の追加)」

  鑑定コラム2076)「まさか遠隔講義をすることになるとは」

  鑑定コラム2061)「ある大学の不動産鑑定の還元利回りのレポート課題」


フレーム表示されていない場合はこちらへ トップページ

前のページへ
次のページへ
鑑定コラム全目次へ