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令和2年(2020年)7月1日時点の基準地価格が、国土交通省から発表された事から、リニア中央新幹線が通る相模原、甲府、飯田、中津川のリニア中央新幹線駅予定地近くの、公示地、基準地の価格はどれ程になったのだろうかと思い、発表価格を調べて見た。
この行為は、リニア中央新幹線建設が発表されてから続けている行為である。リニア中央新幹線建設という行為が、工事進捗に伴い、地域の地価にどの様に伝播していくのか分析知るためである。
リニア中央新幹線駅予定地近くにある地価公示地・基準地のうち、甲府市のみは地価公示地であり、他の駅予定地は、基準地である。
(神奈川県)
相模原緑2 相模原市緑区西橋本2-601-11
平成27年7月1日 u当り 201,000円(+3.1%)
平成28年7月1日 u当り 212,000円(+5.5%)
平成29年7月1日 u当り 225,000円(+6.1%)
平成30年7月1日 u当り 243,000円(+8.0%)
令和元年7月1日 u当り 263,000円(+8.2%)
令和2年7月1日 u当り 273,000円(+3.8%)
基準地価格であるが、3.8%の地価上昇が見られた。上昇率は前年の半分以下の上昇率であるが、リニア中央新幹線建設の地価の影響が、駅予定地周辺の地価に確実に伝播している。
(山梨県)
甲府9-1 甲府市大津町1566-9
平成30年1月1日 u当り 18,000円(0%)
平成31年1月1日 u当り 18,000円(0%)
令和02年1月1日 u当り 18,500円(+2.8%)
地価公示地であるが、甲府駅予定地周辺の地価に、やっと、リニア中央新幹線建設の影響が現れてきた。+2.8%の上昇である。
(長野県)
飯田4 飯田市座光寺2011-46
平成27年7月1日 u当り 22,100円(▲1.3%)
平成28年7月1日 u当り 21,900円(▲0.9%)
平成29年7月1日 u当り 21,700円(▲0.9%)
平成30年7月1日 u当り 21,500円(▲0.9%)
令和元年7月1日 u当り 21,300円(▲0.9%)
令和02年7月1日 u当り 21,100円(▲0.9%)
基準地価格であるが、▲0.9%の地価下落である。リニア中央新幹線建設の地価の影響が、駅予定地周辺の地価に伝播していない。地価は僅かであるが下がり続けている。
(岐阜県)
中津川市の基準地の設定地が又変わっている。
どうして、こう度々地点が変わるのか。どういう考えで基準地を設定しているのか。岐阜県の担当者、そして、評価を行っている不動産鑑定士及び岐阜県不動産鑑定士協会に尋ねたい。
過去のリニア中央新幹線中津川駅予定地付近の基準地の価格と変更、及び私が変更に伴い感じたこと記すと下記である。この事については昨年の鑑定コラム1988)に記している。重複する部分があるが、それはお許し願いたい。
@ 中津川4 中津川市千旦林1522-28
平成27年7月1日 u当り 15,200円(0%)
平成28年7月1日 u当り 15,200円(0%)
平成29年7月1日 u当り 15,200円(0%)
平成30年7月1日 無い
今迄発表されていた中津川市千旦林1522-28の地点が無くなってしまった。
どうして無くなったのか分からない。何か廃止しなければならない事情が発生したようである。
A 仕方なく、代替として中央線美濃坂本駅より約190メートルにある基準地中津川14(中津川市千旦林字坂本1401番6)の平成29年基準地価格と30年基準価格で変動率を見て見ようと思った。
中津川14 中津川市千旦林字坂本1401番6
平成27年7月1日 u当り 21,500円(0%)
平成28年7月1日 u当り 21,500円(0%)
平成29年7月1日 u当り 21,500円(0%)
平成30年7月1日 無い
中央線美濃坂本駅より約190メートルにある基準地中津川14(中津川市千旦林字坂本1401番6)は、平成30年7月に無くなっていた。
これでは、リニア新幹線中津川駅予定地周辺の土地価格の平成29年7月〜平成30年7月の間の地価変動が分からなくなってしまった。
こうしたことを行ってはいけない。
B その中津川14の30年7月の基準地は、坂本駅より約60メートルの中津川市千旦林字坂本1386番43の地点に変わって、価格発表されていた。
中津川14 中津川市千旦林字坂本1386番43
平成27年7月1日 無い
平成28年7月1日 無い
平成29年7月1日 無い
平成30年7月1日 u当り 28,500円
令和元年7月1日 u当り 29,300円(+2.8%)
基準地価格であるが、2.8%の地価上昇である。リニア中央新幹線駅建設の影響が、地価に具体的に現れてきた。
C 平成30年7月に選定された基準地である中津川市千旦林字坂本1386番43は、令和2年に無くなり、設定地は同じ字の字坂本1386番113に変更されている。その価格は下記である。
中津川14 中津川市千旦林字坂本1386番113
令和02年7月1日 u当り 28,400円(-)
同じ字で地番も枝番が違うだけである。何故1386番43から1386番113に変更したのか。
岐阜県は、リニア中央新幹線中津川駅予定地周辺の基準地を、今迄に4回も変更している。
基準地価格の法律である国土利用計画法施行令第9条は、次のごとく規定する。
「第九条 都道府県知事は、自然的及び社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域(法第十二条第一項の規定により指定された規制区域を除く。)において、土地の利用状況、環境等が通常と認められる画地を選定し、その選定された画地について、毎年一回、一人以上の不動産鑑定士の鑑定評価を求め、その結果を審査し、必要な調整を行つて、国土交通省令で定める一定の基準日における当該画地の単位面積当たりの標準価格を判定するものとする。」
施行令は、自然的及び社会的条件からみて類似の利用価値を有すると認められる地域において、土地の利用状況、環境等が通常と認められる画地を選定し、その選定地(標準地)の価格を毎年1回不動産鑑定士が評価すると規定する。
そして基準地の選定基準は、「国土利用計画法に基づく土地取引の規制において土地価格の審査の際に規準とされるものであるため」、地価公示地の標準地と同じく次の4つの要因によって選定される事になっている。
(1) 標準地の代表性
標準地は、市町村(都の特別区及び政令指定都市の区を含む。)の区域内において、適切に分布し、当該区域全体の地価水準をできる限り代表しうるものであること。
(2) 標準地の中庸性
標準地は、当該標準地設定区域内において土地の利用状況、環境、地積、形状等が中庸のものであること。
(3) 標準地の安定性
標準地は、標準地設定区域内における安定した土地の利用状況に配慮したものであること。また、土地の利用状況が移行している地域内にある場合にあっては、そのような変化に十分に配慮したものであること。
(4) 標準地の確定性
標準地は、明確に他の土地と区別され、範囲が特定できるものであること。また、選定する標準地の特性を踏まえ、範囲の特定する方法を広く考慮することで、範囲の特定が容易な地点に偏ることがないように配慮すること。
(https://www.mlit.go.jp/common/001208844.pdf)
この4つの選定基準は、代表性の原則、中庸性の原則、安定性の原則、確定性の原則と呼ばれている。
岐阜県及び岐阜県不動産鑑定士協会は、リニア中央新幹線中津川駅予定地周辺の基準地を4回変えたと云うことは、その基準地の地域の土地の利用状況、環境等が4回も変わったということになるが、その様な変動は本当にあったのか。私には4回も地域が大きく変わる事が生じると云うことはあり得ないと思うが。
4回も基準地を変えると云うことは、そもそも基準地選定の原則を全く無視して基準地を決めているのでは無かろうかという基本的なことの方が疑われる。
こうした行為を行っていると云うことは、岐阜県発表の基準地価格そのものの信頼を失わせることになる。
基準地価格が土地固定資産税に直接影響を与え、公共事業の用地買収価格に影響を与えていることから、それらへの不信につながることにもなる。
岐阜県及び岐阜県不動産鑑定士協会は何をやっているのか私には理解し難い。
4駅予定地の土地価格動向をまとめると、下記である。
相模原 値上がり +3.8%
甲府 値上り始めた +2.8%
飯田 値下がり ▲0.9%
中津川 昨年+2.8%、今年変動率不明
地価下落が続いているのは、飯田市のみである。中津川市は地価変動が分からなくなった。
鑑定コラム1719)「まだ飯田の地価は下げ止まらない 29年7月」
鑑定コラム1776)「甲府9-1の地価公示地が変わった どうして」
鑑定コラム1907)「リニア駅予定地近くの土地価格の変動状況 平成31年1月」
鑑定コラム861)「リニア新幹線関連で地価の監視始まる」
鑑定コラム1988)「リニア中津川駅予定地近くの地価2.8%アップ」
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