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2243)吉野家HD2021年2月決算 家賃割合9.7%

 牛丼の吉野家を主店舗営業として飲食店を経営する株式会社吉野家ホールディングス(以下「吉野家HD」とする。)が、2021年4月13日に、2021年2月期の決算を発表した。

 その2021年2月期の決算書によれば、売上高は、

              2021年2月期  1703億4800万円  
              2020年2月期  2162億0800万円
であった。

 2021年2月期の売上高は、前年同期比▲21.2%減である。

 営業損益は、
              2021年2月期  ▲53億3500万円  
              2020年2月期    39億2600万円
であった。

 前期39億円の黒字から一転▲53億円の赤字である。

 株式会社ハイディ日高の決算について、前の鑑定コラムで書いたが、ハイディ日高よりも営業規模が遙かに大きい吉野家HDも大巾な売上高減と黒字経営から大幅赤字経営に転落してしまった。

 2020年の1年間の新型コロナウイルス感染の飲食業に与えた被害は甚大である。

 私から云えば、政治家の口先だけの新型コロナウイルス感染対策の政策の犠牲と云えるが、その事については。後日まとめて述べたい。

 不動産鑑定に関係する事のみ記述する。

 売上高に占める家賃割合及び水道光熱費の割合を記す。

 売上高に占める家賃の割合は、下記である。
          売上高a           家賃b          割合b/a

2020年    216,201百万円 20,277百万円 0.094 2021年    170,348百万円 16,568百万円 0.097

 売上高は▲21.2%と前期に比し大幅に減少したが、売上高に占める家賃の割合は、0.094%→0.097に増えただけで、変動は小さい。

 昔、牛丼の吉野家単独の店舗の場合、家賃は売上高の6%であった。その割合は吉野家だけの特異な経営による家賃割合と私は見ていた。

 焼肉店、うどん店や寿司店等をM&Aしたことにより、店舗賃料は、飲食業の平均的家賃割合の10%に近づいた。

 同じごとく、光熱費から見た家賃は、吉野家単独の店舗の場合、光熱費の1.2倍であったが、現在は1.2倍どころではない。2020年は2.5倍、2021年は2.8倍であり、倍率関係は大幅に上がっている。

 M&Aの店舗が、立地の良い場所に店を構えていたことにより家賃の負担が大きくなり、今まで吉野家単体の場合には維持していた光熱費の1.2倍の家賃を維持する事は困難になったのであろう。つまり吉野家の経営が大きく変わってきていたということである。

 売上高に占める水道光熱費の割合は、下記である。
          売上高a          水道光熱費b       割合b/a

2020年    216,201百万円 8,162百万円 0.038 2021年    170,348百万円 6,126百万円 0.036

 売上高に占める水道光熱費の割合は、飲食店の場合4%前後であり、吉野家HDも3.8%、3.6%で妥当である。

 飲食店の水道光熱費を売上高の4%が標準とし、家賃は売上高の10%が標準とすれば、家賃と光熱費の関係は、10:4となる。家賃は光熱費の
                    10÷4=2.5
2.5倍が標準的と云えよう。

 M&Aで経営内容が変質した吉野家HDの経営指標であるが、2020年、2021年の吉野家HDの家賃と光熱費の関係は飲食店として概ね標準的で、妥当な状態にあると判断できる。

 吉野家HDの大幅な赤字は、売上高減が最大の要因であるが、家賃負担は202億円から165億円に減少していることから、ハイディ日高のごとく家賃負担が第2の原因ではなさそうである。別の大きな原因がありそうである。

 吉野家HDの部門別売上高(百万円)を見ると下記である。
                     2020年2月期          2021年2月期

吉野家   110,690   104,650 はなまる 30,615 20,175 京樽 28,375 18,795 海外 21,945 19,534 アークミール 19,826 その他 4,748 7,191 不整合 2 3 合計 216,201 170,348

 アークミールは、「ステーキのどん」、「フォルクス」の店名の焼き肉料理店を経営している部門であったが、2020年2月に安楽亭に売却された。

 この事から2021年2月期の売上高と比較する場合の2020年2月期の売上高は、
                216,201百万円 −19,826百万円=196,375百万円
と云うことになる。

 実質的な売上高減は、
               170,348百万円−196,375百万円=▲26,027百万円
▲260.27億円である。率にすると▲13.3%である。

 吉野家単体の売上高減は▲60億円である事から、赤字の多くは、はなまる、京樽によるものと判断出来る。はなまる、京樽の前期と今期の上記売上高を見ればそれが推定できる。

 期間中の店舗閉鎖は、吉野家単体が50店舗、はなまるが50店舗、京樽が61店舗である。

 京樽は、2021年4月1日に、回転寿司大手の「スシロー」を経営するFOOD&LIFE COMPANIESに売却された。

 吉野家HD経営者は、新型コロナウイルス感染による営業被害を最小限に食い止めようとして、懸命に取り組んでいるようである。


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