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2652) 牛丼の吉野家 コロナ禍乗り切り売上高増 家賃割合8.3%に下がる

1.家賃割合 8.3%

 東京を地盤として牛丼店の「吉野家」を営業展開している株式会社吉野家ホールディングスの2023年2月期の有価証券報告書を見た。

 2023年2月期の売上高は、168,099百万円である。

 前期は、153,601百万円であった。前期比9.4%増である。

 新型コロナウイルス感染の拡大により、2020年4月に緊急事態宣言が出され、一時感染が下火になって宣言解除されたが、2021年にも繰り返し緊急事態宣言が出され、2021年9月に解除された。

 この数度の政府による新型コロナウイルス感染の緊急事態宣言により、外食産業は致命的に近い位の多大な営業損失を被った。

 株式会社吉野家ホールディングスも、大巾な売上高減に伴う巨額な赤字決算に陥ると云う事態になった。

 新型コロナウイルス感染の影響が殆ど無かった2019年2月期の売上高から各決算期の売上高を記すと、下記である。

        2019年2月期      2023億8500万円
    2020年2月期      2162億0100万円      売上高増6.8%
        2021年2月期      1703億4800万円      売上高減▲21.2%
        2022年2月期      1536億0100万円      売上高減▲9.8%
        2023年2月期      1680億9900万円      売上高増9.4%


 経常利益の推移は、下記である。
        2019年2月期        3億4900万円
    2020年2月期       33億6900万円
        2021年2月期      ▲19億6400万円
        2022年2月期      156億4200万円
        2023年2月期        87億4100万円

 株式会社吉野家ホールディングスは、新型コロナウイルス禍を乗り切ったと判断出来る。

 2023年2月期の家賃は、14,028百万円であった。

 売上高に占める家賃割合は、
       14,028百万円
          ────────  = 0.083                               
             168,099百万円
8.3%迄下がってきた。

 過去の株式会社吉野家ホールディングスの売上高に占める家賃割合は、下記である。
      2020年2月期        9.4%
      2021年2月期    9.7%
            2022年2月期        8.8%

 かっての、吉野家の「家賃は売上高の6%が限度」(鑑定コラム25)という吉野家独自の経営格言割合には遠く及ばないが、2023年2月期の売上高の家賃割合8.3%は妥当な家賃割合の水準である。

 売上高と家賃割合については、経済経験則としてある範囲の割合が形成されている。

 日本でも飲食店などでは「普通は10〜12%、理想的には8〜10%」(赤土亮二『飲食店の儲けの出し方成功教科書』p39旭屋出版 平成2年)と言われているごとくである。

 その経済経験則で云われている割合を、データ数値に基づいた論理的な数値分析によって実証出来ないものかと私は思い、今から23年前の2000年に、不動産鑑定評価の理論雑誌である『Evaluation』創刊号p42(清文社)に、「売上高に対する家賃割合」(田原)の論文名で店舗売上高に対する家賃割合を分析し発表した。

 今迄に売上高に対する家賃割合を、数値で論理的に導き出すこと、指標数値の分析求めることを不動産鑑定業界は行っていなかったことから、この論文は業界にかなりの衝撃を与えた。

 その分析によれば飲食店は、
       レストラン      11.1%
       中華料理        10.4%
       そばうどん      13.0%
       鮨              10.7%
である。

 その割合については、鑑定コラム18)と鑑定コラム1012)で述べられている。

2.新規出店費用と客席データ

 2023年2月期の有価証券報告書によれば、株式会社吉野家ホールディングスは決算期間中に、下記店舗の新規出店工事を行っていた。


地域吉野家 地域 店舗数 投資額百万円 竣工時期 増加席数
吉野家 埼玉県越谷他 26 817 2024年2月 780
西日本吉野家 福岡市中央区他 7 268 2023年10月 210
北日本吉野家 群馬権太田市他 2 106 2023年10月 60
中日本吉野家 名古屋市中川区他 3 105 2023年10月 90
関西吉野家 京都市南区他 8 249 2024年2月 240
  46 1545   1380


3.1店当りの出店費用と客席数

@ 1店当りの店舗出店費用

 1出店当りの出店費用は、
          投資額百万円÷店舗数
の算式で求める。
    
      1,545百万円÷46店舗=3357万円

 1店当りの店舗出店費用は、3357万円である。

A 1客席当りの店舗出店費用

 1客席当りの出店費用は、
          投資額百万円÷客席数
の算式で求める。
    
           154,500万円÷1,380席=111.95万円≒112万円
 1客席当りの店舗出店費用は、112万円である。

3.1店舗当りの客席

 上記の出店データから、46店舗の席数は、1380席である。

 1店舗当りの席数は、
            1380÷46=30
30席である。

4.吉野家1店舗当りの売上高

 株式会社吉野家ホールディングスの2023年2月期の有価証券報告書によれば、期末の吉野家等の売上高と店舗数は下記である。
                   売上高             店舗数
      吉野家  1137億67百万円    1197店舗
      はなまる   253億26百万円         445店舗
      海外       253億62百万円         963店舗

 吉野家1店舗当りの売上高は、
             1137億67百万円÷1197=9504万円
9504万円である。

 月額売上高は、
             9504万円÷12=792万円
792万円である。

 1ヶ月を30日とすると、1日当りの売上高は、
             7,920,000円÷30=264千円
264千円である。

5.客席回転率

@ 客席回転率とは

 一つの営業席を、一日にどれ程の客が座って飲食するか。その席利用数を客席回転率という。

A 客単価

 客単価とは、入店客一人が消費する金額をいう。

 客単価がどれ程かを知ることは難しいが、下記の方法に拠って求める。但しこの求められた客単価が、吉野家店舗利用者の客単価の実額であるというのでは無いことをご了承していただきたい。

 『MACARONIランキング』というホームページが、「吉野家人気メニューランキング」( https://ranking.macaro-ni.jp/ranking/739)で、ベスト10を発表している。

 それによると、トップ10の料理とその金額は、下記である。

    1位 牛丼              448円
       2位  チーズ牛丼                588円
       3位  ねぎ半玉牛丼            599円
       4位 ねぎだく牛丼             588円
       5位 肉だく牛丼               632円
       6位 ねぎ玉牛丼                588円
       7位 キムチ牛丼                588円       
       8位  キムチ牛サラダ           657円
       9位  ねぎラー油牛丼       588円
      10位  チーズ牛サラダ         657円

 人気商品の1位に10点、10位に1点の評点を付け、1評点1円として、客単価を推定する。

 基本評点の合計は55評点である。55評点とは、55人食べたと考える。順位評点の合計は31568である。1人当りの価格は、下記となる。
       31568÷55=573.96≒574(円)

 計算一覧は下記である。


単価 評点 評点計
1 448 10 4480
2 588 9 5292
3 599 8 4792
4 588 7 4116
5 632 6 3792
6 588 5 2940
7 588 4 2352
8 657 3 1971
9 588 2 1176
10 657 1 657
合計 5933 55 31568
       
平均点     573.9636364
      574


 客単価を574円と求める。

B 客席回転率

 吉野家の1日当りの平均売上高は、前記より264,000円と求められている。

 1店舗の客席を30席とする。最近の出店の状態が、最も店の有効利用の状態を反映していると考えれば、1店舗30席に合理性は充分ある。

 1席の一日の売上高は、
            264,000円÷30=8,800円
8,800円である。

 客単価は574円と求められている。

 客席回転率は、1席の1日の売上高を客単価で除せば求められる。
       8,800円÷574円=15.3回転

 吉野家の平均客席回転率は15.3回転と求められる。

 但し、上記の平均客席回転率は、私が推定したものであり、吉野家の実際の客席回転率であるという訳では無いことをご了承していただきたい。


  鑑定コラム25)
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